人生教訓小説2 能あるさくらは葉を隠す 第1章 アイドル誕生

2008年、最後の日。今年もいろいろとありました。

振り返るといろいろですが、それよりも来年はどうなるかを予想しましょう。来年は、アメリカに続いて日本も政権交代が起こるでしょう。民主党政権、小沢一郎総理かな。

まあ、そんなところで、政権交代を前に、政治をテーマにした人生教訓小説を書きたいなと思いました。政治とメディアの関係ともいえますかね。そして、政治とメディアと一般庶民の私たち。

そういうのを考察したいなと思い、携帯小説風の短編をこれから連載します。すでに終わった「夢は叶わない」に続く、人生教訓小説、お楽しみ下さい。実在の人物とかけ合わせたところもあり、おもろいかと。

能あるさくらは葉を隠す

上原サユリは、表参道を歩いていた。

身長175センチの長身、体重は60キロ、顔はというと、本人も周りも、ブスではないが、とりいって美人でもないという評価。何せ、近眼のためいつも黒縁の眼鏡をかけているから、実際、美人であっても顔ははっきりとしない。本人も、美人であるということを心懸けているわけではない。顔を含め容姿に自信があるというわけではないが、コンプレックスがあるわけではない。

だが、頭脳は抜群だ。彼女は東大生で、近々、卒業の予定、そして、卒業後の就職先も決まっている。何と、就職先は財務省。キャリアの官僚になる予定だ。それなりお国のためになる奉公をしたいと考えて志望した就職先だ。

冬が深まり、寒々とした中、卒業後の自分に希望を膨らませていた。そんな彼女に一人の男が声をかけた。
「やあ、そこのお嬢さん、なかなかいかすね。実をいうといい仕事を紹介したいんだが、僕についてきてくれる。君なら、何億円って稼げるよ」
なんだ、よくあるスカウトか。だいたい、この手の誘いに乗って行き着く先は風俗と相場が決まっている。下らない。無視して通り過ぎよう。
すると、男は、彼女のバッグの外ポケットに名刺をつっこんだ。
「じゃあな、真剣に見込んでいるんだよ。気が向いたら、電話して。俺の名は団十郎。田母神プロダクションのマネージャーやっているんだ」

彼女は聞こえないふりをして通り過ぎた。しばらくして、忌まわしい名刺をどこかのゴミ箱に捨てようかと立ち止まり、バッグの外ポケットから名刺を取り出そうとしたが、突然、バッグの中の携帯電話が鳴り出した。携帯を取って「もしもし」と反応する。
「サユリ、大変よ。ケンジが突然、病院に運ばれて危篤状態よ」
と神戸にいる母から電話だ。ケンジは、サユリの弟で、今は高校1年生だ。小さい頃から心臓が弱い。何度か入院することはあったが、母の声の調子から、今度はかなり深刻らしい。

サユリは、神戸に帰ることにした。駅に着いたと同時に病院に直行。弟は集中治療室に入れられていた。主治医は、サユリと母のゆかり、父の泰三にこう伝えた。
「今度ばかりはかなり厳しいです。これから先、もっても半年でしょう」
「そんな、治療する方法はないのですか?」と母がいうと。
「何度も申している通り、ケンジ君の病気は先天的な心臓の欠陥によるもので、これまで何度も対症療法をほどこしてきましたが、体も成長し、限界です。根本的な手術をしなければいけないのですが、日本では、そこまでのことをする医療技術はありません」
「外国に行けば可能なのですか?」とサユリ。
「はい、アメリカのフロリダに、その手術をするための技術を持った病院があります。心臓の構造を変える手術ができます。ただ、保険は適用されませんし、費用は渡航費を含めかなりかかります」
「どのくらい?」と泰三。
「5千万円ほど」
「え、そんなに」と驚愕するゆかり。
どだい無理な話だ。というのも、上原家は、輸入美術品を取り扱っている店だが、昨今の不況で売上が伸び悩み、赤字続きで倒産の可能性さえあるほどだ。貯金や資産はろくにない。
このまま弟を死なせなければいけないのか。一家は悩んだ。

サユリは、病院の待合室で一息ついた。コーヒーを飲みながらテレビをぼんやりと見ていた。すると、芸能ニュースの番組。数々のスーパーアイドルをスカウトした名プロダクションが特集として紹介されている。
「さて、田母神プロダクションですが、スカウトの達人でもある団十郎マネージャーと社長の田母神さんとお話をしてきました」
とインタビュー映像に変わる。
団十郎というマネージャーが登場。年は30代前半ぐらいで、見覚えのある顔だ。
「アイドルを見つけるこつとはどんなものですか」
「意外に普通ぽく見える人こそ、ダイヤの原石だったりする。一目で分かるんだ。歩いている物腰とかで。服装や化粧が地味であっても、中身の輝きはすぐに見分けられる」
と団十郎。あの時の声と話し方だ。
社長の田母神が現れた。小柄な50を過ぎたぐらいの中年男だ。
「社長、またもや、スーパーアイドルは現れますかね」
「今、探しているところなんだ。だが、団十郎、最近、すごい娘を見つけたんだって」
「本当に?」とリポーターが興味津々にきく。
「はい、ついさっき、表参道でね。声をかけただけで、彼女ならアイドルになれると確信したんだけど、でも、どこの誰だかは分からないままです。しかし、見つけたら、必ずデビューさせます。即金で何千万でも払ってもいい」
「そんなに確信があるのですか」というリポーターに社長が
「団十郎は今まで、外したことはない。確信を持って言おう。その娘がわしのところでデビューする気なら、即金で何千万円でも払おう」
自信ありげに言う。

サユリは、バッグから名刺を取り出した。名刺には、田母神プロダクション マネージャー 中村団十郎 とあり、携帯電話の番号も書かれている。

サユリは、携帯電話にその番号を打ち込みかけた。
「もしもし、団十郎です」と聞き覚えのある声。
「表参道の女よ」
「待ってました。反応があるのではないかと思って、テレビに出たんだ。どう、今すぐ、表参道の私のプロダクションに来てくれるかな」

サユリは、新幹線の駅に向かった。東京へ引き返すのだ。

表参道の田母神プロダクション

サユリは、二人の男にじろじろ見られている。こんなに男から激しい視線を受けたのは生まれて初めてで恥ずかしい感じがした。

数分後、田母神が言った。
「よし、決まりだ。すぐにでも、私のところで働いてくれないかね」
サユリは、言った。
「実をいいますと、私がここに来たのには特別な理由があって・・」
と自分が財務省の就職が決まっている東大生で、弟の心臓病治療の金欲しさに来たことを告げた。
「つまりすぐにでも金が欲しいということか」と社長。
「ええ、そうですけど、まさか冗談でしょう。即金で5千万円だなんて」とサユリ、つっかかるように言った。そもそも話しが上手すぎて詐欺ではないかと疑っている。
「まあ、東大にいくような才女なら、怪しいと思うのが当然だろう。だが、真面目な話しだ。うちはこれまで、こんなやり方でアイドルを生み出してきた」
「私に何が出来るというのです。東大出のアイドルだなんて。歌も歌えないし、俳優のような演技もできない。それに、そんなに美人でもないと思いますけど」
「いやあ、君がするのは、主にCMモデルだったり、司会の付き添いのようなことだ。見かけは、何とでも調整できる。これからが楽しみだ」
「整形でもしろと」
「いやあ、見たところ、元がいい。眼鏡を外した君の顔は100カラットダイヤの原石のようだ。君も気付いていないようだが。後はちょっと磨くだけ。それから、スタイルは背が高い上に、足も長いようで、抜群だ」
サユリは田母神を見下ろしていた。この男はかなり小さい。
「ダイエットを少しして、もっと細身になれば完璧。そのくらいならできるだろう」

なるほど、単なるモデルか番組司会の付き添いか。でも、そんなので5千万円を即金で。プロダクションとしてはその何倍も、見返りを求めるはずだが、それを返せるほど自分が稼げるかが心配だ。それにアイドルなんて。

サユリは言った。
「私には自信がありませんし、それにアイドルなんて仕事、向かないと思います。はっきりいって恥ずかしいです」
「だよな、東大のエリートさんには。でも、金をどかっと稼ぎたいんだろう。周囲の目が心配なら、芸名で、身元は分からないようにしてあげる。それにこれから変身したら、今までの君を知っている者は見分けがつかないだろう」と団十郎。
でも、サユリは嫌だ。何だか、キツネか狸に騙されているようで納得がいかない。
「5千万円を即金で払えば納得がいくというのかい。まずは5千万円を払おう。それからは、歩合制だ。おそらく、君は5千万を差し引いても、1億は下らないほどの報酬が手にはいると思うよ」

サユリは、5千万円を父の会社に高級家具を購入する形で払った。丁度、輸入美術品のオークションをやっていて、数点の高級家具を最低価格に5千万円を上乗せする代金を払うという形だ。最低価格の合計は1千万円ほど、それが会社の仕入れ値と輸送などの経費を合わせた代金。6千万円を匿名のクライアントを装い払う。1千万円分は、別ルートで売却し戻す。実質上、父の会社に5千万円を払ったことになり、それがまるまる儲けとなる。

弟のフロリダ行きが決まった。

さて、芸名が必要になる。団十郎がつけてくれた。
「上野さくら」。サユリからさくらのイメージに変身するためだ。

数ヶ月後のデビューを控え、眼鏡をコンタクトに変え、ダイエットに励んだ。

上野さくら、公式発表では年齢は22歳から19歳となり、学歴は東大卒から高卒に。体重は50キロ。髪の毛は、短髪のストレートから、肩まで伸びるカールの入った茶髪のつけ毛。リボンにアクセサリ。手には花柄のつけ爪。顔は自然な美しさを演出しているように見せる厚化粧。ピンクとシルバーを基調とする衣装。いつも、ピンヒールにミニスカート、それがトレーとマークとなった。

話し方は、落ち着いた低めの声から、子供っぽく高めで舌知らずの口調。

テレビ初デビューの第一声は、「みんな、うえの・さくらです。よろしくーね」

さくらは、全てを計算し尽くていた。

第2章へつづく

この小説の著作権は、このブログの管理者マサガタこと「海形将志」にあります。
by masagata2004 | 2008-12-31 18:10 | 時事トピック | Trackback | Comments(0)
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