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平和教訓小説「平和という名の付く船」 第2章 9条教大会

平和をモットーに世界一周航海をする船が、自衛隊の護衛を受けることに。次々と迫り来るハプニング。その時、乗客たちは!? 携帯小説スタイルのライトノベル

まずは第1章をお読み下さい。

ワールド・ピース号は、コロンボに寄港した。乗客は、たった一日だが、観光を楽しもうと大半が船の外に出ていた。

タツミは、一緒に観光など出ていられなかった。船内に残り、インド洋航行中のイベントなどの打ち合わせ、そして何よりも海上自衛隊の隊員と警備についての打ち合わせをしなければならない。

乗客がまばらになった船に、一人の男が乗り込んできた。服装は、白い制服で、航海士と見間違いそうだが、バッジなどをよく見ると、海上自衛隊員であることがよく分かる。年齢は、タツミより5,6歳上といったところだろうか。男は敬礼をして、名乗った。
「海上自衛隊一等海曹 田之上寿朗と申します。これより、貴船の船長及び警備責任者、そして、このツアーの主催責任者と今後の打ち合わせをしたく参りました」
タツミも、とりあえず、一礼して自己紹介をした。
船長、航海士、警備担当者、そして、タツミは、そろって田之上の説明に聞き入った。船長は中東系の男で、日本語は分からない。航海士、警備担当者、タツミは英語が理解できるので、船長に合わせ田之上は、英語を話した。

その後、田之上は、タツミと二人だけで話しをしたいと申し出た。
「さて、あなたはツアーの主催者として、乗客たちに、今後の護衛艦による警護についてお話ししていただかなければいけません。船内にも、自衛官が乗り込むことになります。乗客たちにも、危険海域に入るという覚悟をして貰わないといけない。代表として、しっかり説明を。特に、この分野については若干なりとも経験をお持ちであるあなたなら」
と田之上が、やや意地悪そうな口調になる。
「ははあ、あなた調べたんですね。そうですよね、当然、あなたたちにとっては僕は敵のような存在ですから」
とタツミ。特に驚かなかった。どうせ調べ上げているだろうと、自衛隊とはそういう組織なんだ。
「じゃあ、話は早い。護衛艦が、この平和をモットーとする船につくというすばらしいニュースを乗客たちにしっかりとお知らせ下さい」
皮肉たっぷりだ。タツミは思った。畜生、弱みを握ってやがる。

船はコロンボを出航した。
インド洋では、洋上9条大会が開かれた。タツミは、司会進行役として、冒頭挨拶と平和のスピーチをするはずだったが、この大会の後に護衛艦による警護の知らせをしなければいけないことを踏まえ、簡単に挨拶を済ませた後は、司会進行を副代表のヨシコに任せることにした。大会が始まった。



ワールド・ピースのスタッフ、ボランティア、乗客による平和宣言。
「我々は憲法9条を守ります」「9条は世界の宝です」「9条を世界に輸出しましょう」「平和のメッセージを世界の恵まれない人々に届けましょう」
「戦争はどんなことがあってもしてはいけないこと」「武器を花に変えましょう」
それぞれが思い思いの言葉を述べ、詩を朗読したり、歌を歌う者もいた。
乗客の中に、ミクという19歳の女の子がいた。ゴスロリファッションでみんなの注目を浴びている。船内で最も豪華な一等室に滞在する、資産家の令嬢だが、大学で問題を起こし、中退、気を紛らわすためこのツアーに参加したらしい。平和への情熱を込めて、歌を歌う。学校では声楽が専攻だったらしく、世界の戦争で犠牲になった人々を弔うため「アヴェ・マリア」を歌った。どんなものかと思ったが、

ゴスロリ姿にはあまりにも不釣り合いな歌唱力。一同、美声に酔いしれ聞き入った。歌い終わった後、ミクは「みんなで手を結んで世界平和を実現するのよ!」と金切り声を上げて、場が一転、わっと盛り上がった。

次に、軟派な感じのする50代のおっさんが登場。名はゴンゾウ。ボランティアスタッフで、フォークシンガーとして出演。狭い雑居の船員室に滞在し、ボランティアとして船内イベントで歌う代わりに船賃をタダ同然にしてもらう典型的なさすらい貧乏旅行者だ。安く旅行がしたいだけという目的で参加する輩の典型だ。「さっきのアヴェ・マリアの後じゃあ、おいらの歌はかすんじゃうかもしれないけど、今度は追悼から、平和への願いを込めて歌い上げます。みんなが知っている歌、よかったら、一緒にどうぞ」
歌うのは「戦争を知らない子供たち」

「戦争が終わって僕らは生まれた。戦争を知らずに僕らは育った。大人になって歩き始める・・」
フォークソングの歌いぷりは見事だ。一同がつられて歌う。会場は、明るく盛り上がった。

この様子を、タツミと並んで田之上は隅っこの席で眺めていた。
「全くいい気なもんだな」と田之上。
「どういうことなんです?」
「平和を祈ったり、願ったり、歌い上げたりすれば、この世界に戦争も暴力もなくなると信じ切ってやがる。ノー天気というか、偽善者というか」
「あなたには関係ないでしょう」とタツミはむっとして言う。
「お前には関係あるはずさ。お前のような奴が、そもそもどうしてこんな船に、というか、こんな団体の代表やっているんだか。過去から逃れたいがためか」と田之上、つめよる。
「よしてくれ。過去は過去だ。今の自分とは関係ない」タツミは痛いところをつかれ悔しかった。

第3章へつづく。

この小説はフィクションです。実在の人物や団体とは無関係です。挿入動画も勝手にはっつけたもので、ストーリーとは無関係です。小説の著作権は、著者にあり、このブログの管理者であるマサガタこと海形将志にあります。
by masagata2004 | 2009-08-29 00:40 | 旅行 | Trackback | Comments(0)


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