環境教訓小説 「原発ターミネーター」 第1章 阻止行動

日の丸に死す」に続くライトノベル第5弾。
原発建設阻止の活動家の前に未来人現れる。その正体と目的とは?

ここは、山口県は神関の寿島沿海、カヤッカーたちが大きなクレーンを積んだ工事作業船と対決している。カヤッカー、そして、そのカヤッカーの背後には漁船が数隻、作業船を睨んでいる。カヤッカーたちは山口県の環境活動家たち、主に20代か30代の青年。背後の漁船に乗る漁師たちは、60代以上のじっちゃんやばあちゃん。寿島に長年暮らす漁師や農民たちだ。

なんとしても、目前で施工されている工事を阻止せねば。この瀬戸内海の西側に原子力発電所の建設計画が提案されたのは20年以上も前。島民をあげ反対運動を行い、工事はずっと延期されてきたが、ついに山口県が建設許可を出し、工事が着工された。その第1段階として発電所を建てる土地をつくるため島から3キロ対岸の田浦半島岸の海上を埋め立てる工事が行われている。ハヤブサ、ウミスズメ、スナメリなどの希少な生物の住処が犯される。島民の生活の糧である漁業や農業への影響が計り知れない。発電所が放出する温排水は、周辺海域の生態系に悪影響を及ぼす。もし、放射能漏れの事故を起こしたら、それだけで命が危険にさらされる。

原発なんて、もういらねえ。そもそも、電力需要は現状で十分満たされている。政官業の利権のための公共工事の一貫でしかない。県知事や県議会議員は電力会社から多額の献金を貰っている。日本中でいつも行われているパターンだ。おまけに電力会社は周辺の漁協組合に補償金をばらまき、建設計画の賛同を得た。しかし、島民は最後まで反対している。

そんなことのために、貴重な自然と生活環境が破壊される。許せない。島民はもとより、その事実を知った県の若い環境保護活動家が立ち上がった。こうなったら、直接阻止行動しかない。工事区域に立ち入り、工事の邪魔をするのだ。これで工事が、どんどん延期される。クレーンでハンマーが海中に下ろされるが、そこにカヌーが来る。そして、カヤッカーがハンマーを吊り下げているクレーンにぶら下がる。クレーンは、元の作業船にクレーンを戻す。一緒にカヤッカーも釣り上げられトローリ船に乗り込む。作業員から罵声を浴びせられるが、こんなことの繰り返しだ。


だが、活動は海上だけではない。陸上では、活動家が、施工主の瀬戸内電力を相手取って工事中止の訴訟を行っている。放射能の脅威、建設計画により生息が危ぶまれる希少生物の生存権など様々な大義名分で工事差し止めを求め裁判所で戦っている。

そして、直接行動も。



活動家たちは瀬戸内電力社長の自宅へ向かった。山口市内の閑静な住宅地の社長邸の前で待ち伏せした。プラカードと請願書を手に社長が来るのを今か今かと待っている。
黒塗りの車がやってきた。
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活動家たちは一斉に叫んだ。
「原発建設反対」「島の自然を壊すな。スンナメリ、ハヤブサを殺すな」
黒塗りの車から、60歳ぐらいの老人が現れた。瀬戸内電力社長の田辺吾郎だ。2人ほど部下が伴っている。部下が老人を守ろうとする。
活動家のリーダー、洋二は請願書を社長に手渡そうとする。部下の男が、前に塞がり阻止しようとする。
「何の騒ぎ?」
と邸宅から若い女性が現れた。若くて美しいだけでなく妊婦だ。腹がかなり大きく膨れあがり出産間近というところか。これは社長の令嬢の小夜子だ。何度か見たことがあり知っている。昨年、結婚をして初出産を控えているらしい。
「お前は家に入っていなさい」
と社長。彼女は、この状況をよく理解していないようだ。典型的なお嬢様というところか。

「頼みます。社長」と洋二。
「こんなもの受けとらんし、受け取っても工事は続行する。皆の生活と産業の発展がかかっているんじゃ。自然を守りたいなどの感傷論を聞いているいとまはない」
と社長。
「待ってください。あなただって原発なんて要らないことは分かっているはずだ。所詮は利権をむさぼりたいため。これは工事のための工事だ。そんなことのために島民や漁民、ひいては原発のあるこの山口県の県民の生活に不要な脅威を与えているに過ぎない」
「失礼だぞ、いいかげんなことをいいやがって」
と社長の部下が洋二に怒鳴りつける。
「あ、いや、痛い」と妊婦がその場で立ちくらみをして地面に倒れた。突然、一大事だ。
「小夜子様」と部下。「小夜子」と社長。
「医者を呼べ」と叫ぶ部下。
これは、まずいと洋二たちは退散することにした。

翌日、海上での阻止行動を続けることにした。カヤックに乗る活動家たち。洋二も、そこにいた。また、クレーンが下ろされる。ようし、海に杭を打ち込むためのハンマーの真下に行ってやる。

クレーンを真上に見る洋二だが、突然、パーンという音がして、真上のクレーンが空中を浮遊する情景が目に入った。何事かと思った途端。大きな鋼鉄のクレーンが洋二のカヤックの真横の海面に落ちた。突如、大きな水しぶきが上がり、洋二はクレーンごと跳ね上がり、気が付くと真っ逆さまに海面に打ち付けられ、上半身は海中に。洋二は転覆したカヤックから身を外し、起きあがって海面に顔を出した。
 
見えたのは、クレーンの鉄塔が上半分切断され、吊り下げたハンマーと共に海上に落下してしまった光景だ。作業船には半分に切断されたクレーンの下半分だけが残っている。切断面はぐちゃぐちゃにえぐられた模様だ。
何か攻撃を受けたのか。だが、それにしては不思議だ。武器を使った攻撃なら、大きな爆音がしてもいいはずだが全く聞こえなかった。突然、無音で大きな力が体当たりして、切断されたという感覚を受ける。

何てこった。一体誰だ。自分の真横に落としやがって、一つ間違えれば自分の命が危なかった。殺されかねなかった。しかし、それよりも心配だ。こんなことをした奴は、自分と同じようにこの工事に反対の連中に違いない。クレーンを半分に切断するほどの武器を持っている。テロリストか。そんな奴らが加わると面倒になる。自分たちは直接行動だといっても、こんなことまではしないし、できる能力がない。

ああ、困った! いったい何者だ!

第2章へつづく。

この小説はフィクションです。実在の人物や団体とは無関係です。

by masagata2004 | 2010-02-09 19:23 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)
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