翻訳者小説「風と共に去らないでくれ」 最終章 明日という日

映画で国家の危機を救えるか。

まずは第1章から第5章までお読み下さい。

政府と軍部のお偉方を集めた上映会は、キャンセルされた。

12月8日の朝、ラジオをつけて、侯爵からの連絡を待つまでもなく上映は中止となることが分かった。

「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。大本営陸海軍部、十二月八日午前六時発表。帝国陸海軍は今八日未明 西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり」
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ラジオ放送は上映会場となる銀座の映画館で聞いた。ぎりぎりに出来上がった完成フィルムの最終チェックをして、映写機のセッティング、受付、解説書配布などの準備のため徹夜していたところ、まさに眠気覚ましで聞いたのが、この放送だった。

とうとう来るべき時が来たのか。勝てるはずもない戦争に突入した。結果は、どうなるのかは、この映画の南部の運命をみれば分かる。手当たり次第に焼き尽くされ、荒廃し、土地や財産を奪われまくるのだ。

もう誰も聞く耳を持たない。このまま戦争モードに突入してしまい、勝てると信じ込んでいる。自分たちには勇気あるサムライだからと。完全なる精神主義だ。

そして、このまま、日本は風と共に去ってしまうのか。そうならないように必死で行動したのだが。

映画館の空っぽの座席で達朗が一人、ポツンと座っているところに男が入ってきて声をかけてきた。
「残念だな、私もこの映画が上映されることを楽しみにしていたんだよ」
小野田だ。



「あー、だけど、もう映画ではなく、現実の話しになってしまっている」
「どうだ、折角だから、一緒に映画を観ないか。折角作ったんだろう、字幕版を観てみたい」
と小野田、何とも意外なことを言い出す。それに表情が潤んでいる。

映写機室に入り、映写技師に、上映をするように頼んだ。上映は中止と聞いていたので、徹夜で眠られなかった分を寝ようとソファで寝込んでいた技師を叩き起こした。技師は、分かったとさっそく、フィルムを回転し始めた。

けたたましい音楽と一緒に映画が始まる。古き良き、それは白人にとってだが、そんな時代の南部が再現された光景が銀幕に映し出される。

そして、ストーリーが始まる。物語は、スカーレット・オハラという女性を中心にして展開していく。

南北戦争が始まり、平和で優雅な時代は終わり、緊迫した戦争の時代へ突入。
当初、南軍は快進撃だったが、北軍が一気に巻き返し、南部の都市は砲撃を受け、火の海に。

敗北した南部に北部の侵略者たちが入っていく。スカーレットは気分を切り替え、北部人と手を組み南部の復興事業により富を築く。

だが、傍若無人な性格のスカーレットは、最後には不幸が襲う。どんな苦境にもめげない彼女も、娘に死なれ、最愛の夫からは別れを告げられ、これまでにもない絶望を味わう。

これ以上、立ち上がれないかと思えた時、彼女は、故郷に戻り、新しい人生を切り開くことを考えようと決意する。

そこで、こういう。After all, tomorrow is another day.

最後の映像は、故郷、タラを眺めながら彼女が一人立った姿のシルエットを映すもの。
そして、THE END.

フィルムは巻き上がり、真っ暗に。そして、電灯が部屋に灯る。

4時間近くの時間が経った。一部、ラブシーンはカットしたが、素晴らしい映画だった。
小野田が拍手した。「お見事だ。字幕も読みやすかったよ。これをお偉方、そして、日本国民の多くにみせられなくなったのが残念だ。早く見せていれば、こんなにひどいことは起こらなかっただろうに」

だが、達朗は、突然、座席から立ち上がり言った。今、この映画を観て分かったことだ。
「分かりました。今、分かりました。この映画が訴えたかったこと。我々は絶望に瀕してはいけないということです。どんな絶望の底に追いやられようと、必ず這い上がるべきだということです」
「どういうことだ?」
「これから、戦争が始まります。だからといって、ただ手をこまねいてばかりではいけません。これから、できるだけ早く終わらせるのです。できるだけ損失や犠牲を減らすためにも。そのためには、どんなことでもしましょう。でも、それでも続くようであれば、そして、敗北して、国土が荒廃することになったとしても、必ず再建のため立ち上がりましょう。その時に、改めてこの映画を上映して見せましょう。スカーレットが最後に言ったように、明日はまた違った日になるはずです。絶対に、あきらめません。人生にも、この国にも、必ず新たなる展開が待っているのです。絶望なんてあり得ません。前進する勇気を持ちましょう」

THE END

この小説の著作権は、ブログの管理者マサガタこと、海形将志に帰属します。

次回、軽小説は「日本男児をやめられない」、もしくは「ふれあい商店街」です。

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by masagata2004 | 2010-08-01 00:10 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)
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