原発問題を考える小説 記憶 最終章 かの時代の記憶

原発に関する深刻な問題を問いかける。軽小説スタイルで。

まずは第1章からお読みください。


白い布は衣類のようだ。それも頭から足先までをすっぽり覆う服のようだ。なので、宇宙服にみえるのだろう。こんな古い時代から今まで白い布は色褪せてなく、形も整っていて丈夫な繊維でつくられていたのがうかがえる。そこからも失われた文明の高度さがみてとれる。

「なぜ、宇宙服と言い切れるんだ」とリヒャルトは突っ込んだ。リヒャルトにはそう思えなかった。
「壁の絵に星マークと共に宇宙服を着た人間が描かれていただろう。まさに、この宇宙服を着て宇宙へ旅立ったものがいたということさ。もしかして、ここはロケットの発射台だったのかもな」
「しかし、ならばなぜ、こんな地中深くにあるんだ」
「そ、そうか、それもそうだな。だけど、ここで、宇宙まで行けたことを証明する文明の遺物を、ここに保存したかったからだろう」
「何も、こんな地中深くまで持って行かなくてもよかったんでは」
「何を言っているんだ! エジプトのツタンカーメンの墓や、他の王の墓でもそうだろう。地中深くに埋めておかなければ、盗賊などに大事な財宝を奪われてしまう。それを防ぐためにも、地下の保管場所というのは必要なんだ」とインディは悠々しく語る。
「地下の保管場所」という言葉にリヒャルトは、びびっときた。まさか?
「おい、また、扉があったぞ。大きく頑丈そうな扉だ」とクルーが、そこに照明を当てる。頑丈な金属製の扉があり、扉の上に、絵が描かれている。これは、最初にみた壁画と同じく怖い顔をした道化師が、同じく手招きをしているジェスチャー。
「ウエルカムされている。やっと財宝のありかにありついたねと」とインディ、自信ありげに言う。
リヒャルトは、床を見下ろした。白い布の衣類以外に、何か落ちていないかを探った。すると、ある錆び付いた機械を見つけ拾い上げた。片手で持てる大きさと重さだ。よく見ると、計器のようだ。ぼやけているが、針と目盛りのようなものが入っている。何だろうと思いながら、はっと、思いついた。自分の持ってきた計器類の中に類似品があるからだ。
「インディ、本当に、この先は財宝があるのか」と不安げな表情のリヒャルト。
「ああ、間違いない」と対称的に明るく爽快な表情のインディ。
扉は頑丈で、どうやら厚みも大きい。そして、素材が鉛に近い金属であることが判明した。扉の施錠が幾重に打ち付けられており、その厳重さがうかがい知れる。
「変じゃないか。それほど、厳重に警護されているところに、まるで僕たちを誘い込むなんて。盗賊に大事な財宝を奪われたくないとしたら、こんなにたくさんの痕跡を周囲に残していること自体、変だ」とリヒャルト。
「何言ってやがる。見ろ。このピエロは、俺たちを手招きしているじゃないか。ここまでこれておめでとうと言っているんだ」
「でも、彼の表情は怒っているようだ。なんだか矛盾しないか」
「罠にはめてやるってことか」と冗談っぽく言うインディ。
「罠にはめるなら、ここまで到達する前に、とっくにはめて、近付けなくさせていると思う。むしろ、これは、ある種の警告を促しているのではないか」
「警告? では、なぜ手招きをしている?」
「手招きとは限らないだろう? これは逆に来るなと制止しているサインかもしれない」
「制止?」
「数年前、僕たちが中東に行ったことを覚えているだろう。そこでは、僕たちのジェスチャーがことごとく、相手には違った解釈をされた。来い、来いとジェスチャーをしたつもりが、相手には来るな、来るなと捉えられて、慌てて引き戻したことがあったよな。古代の人間も、俺たちとは違うジェスチャーを使っていたとすると、制止のサインとみる解釈もあり得る」
「考え過ぎだよ」
「何が考えすぎだ。君が考古学者なら、むしろ常識と考えるべきじゃないのか。そもそも、壁画の文字も解読できなかった。僕たちの知っている歴史にはない人々の持つ文明だ。君は、さっきから自分に都合のいい解釈をし過ぎているんじゃないか。写真のようなレリーフが、火山爆発だとか、奇形児の剥製が、単なる墓だとか。そして、散乱している白い服が宇宙服だとか。どう考えても、府に落ちないだろう。何か別の意味があるんだよ」
「じゃあ、どういう意味があるというんだ? ここは何だというんだ? おまえは、ここが何の施設かと分かっているのか」
「ほんの数日前までいた場所を思い起こさせる。何となく似ている」




「え、それはどこだ? ロケット基地か? 古墳か? そうではないとさっきから力説しているけど」
「とても恐ろしい場所だ。もし、その通りだったとしたら、こんなところ、一刻も早く抜け出したいと思えるところだ」と強張った表情でリヒャルトは言う。
「何を言っている? みろ、ピエロの周りにたくさん星マークがあるじゃないか。これは、かの時代のラッキーマークじゃないのか。そんな財宝が保管されているところだから、見つけたら、有頂天になり、宇宙まで舞い上がってしまうぞと、壁画で描かれていたんだ」とインディ。
星マークは、今の時代では、宇宙の星、また、ひらめきなど、ポジティブな意味合いがああるが、かの時代ではどうだったのだろう。数日前までいた施設では、黄色と黒色で描かれた、危険なものの存在を知らせるシンボルマークをところどころで見た。それには、できるだけ近付かないように。近付く時は、全身を覆う白い服を着ること。「防護服」と呼ばれていたものだ。

その危険なものは、高度な文明の証として、本来称賛されるべきものだといえる。それは、ある鉱物資源の原子核を分裂させ、それによって発せられるエネルギーにより、人々の生活を豊かすると信じられているものだからだ。だが、困ったことに、そのエネルギーはあまりにも膨大で、時に人間のコントロールがきかず、暴走して、多くの人々の命や正常な生活を奪う結果を招くことも分かってきた。

事故を起こさなくとも難題はある。エネルギーが使われた後、そのものは、廃棄物になってしまう。いわば「核のゴミ」となる。それは、当然、どこかに捨てなければならないのだが。他のゴミと同じ様に捨てることは出来ない。

そのゴミは、常に危険なものを含む。それは、かなりの長きに渡って有害なままなので、容器で閉じこめ、地中深くの施設で保管しなければならない。無害になるまで10万年もの時間を要するので、その間、誰も、そこに近付けさせないようにしなければならない。容器は劣化するため1000年もすれば、その危険な物質は外に漏れることになる。

その後は、施設そのものが危険なものを閉じこめる役割を担うことになる。その後、10万年近くもの長きに渡ってだ。その間に、子々孫々と、その危険なものの存在を伝え続けなければならない。果たして、そんなことが可能だろうか。
ならば、地中深くにある、そんな施設の存在を知らせないという手もある。記憶の彼方に忘れ去られてしまえば安全だ。だけど、誰かが、間違って発見してしまってはどうか。未来の野心的な考古学者なんかに。
いくら「入るべからず」とサインを出しても、未来の人間が、その警告を理解してくれるとは限らない。文字も記号も、ジェスチャーも考え方も違う未来人相手に、現代のサインなど理解不能だ。

そして、鉛の壁で頑強に閉じこめられている施設の扉が開かれると、その危険なものが放出され、そのものの放つみえない光を浴びると、誰もが数分で命を絶たれるという。

その光の危険度を測る機械をリヒャルトは持ち合わせていた。それを取りだした。似たようなものが床に落ちているのを見て、もしかしてと思い、取り出したのだ。まさか、ここで使うことになるとは思わなかった。それは「ガイガーカウンター」と呼ばれる代物だ。物質の放射線量を量る計器だ。

同じように針と目盛りがある。その針が、大きく振れると、致死量に達するレベルであることが分かる。それほど、針が振れたのを見たことがない。
「おい、やったぞ、やっと最後の錠が外せたぞ。これで宝の山を拝めるぞ」とインディの嬉しさ一杯の声が耳に入った。
待ってくれ、とリヒャルトは心の中で叫んだ。インディに言っても無駄だが。

ギイイという音が響き、大きな鉛製の扉が開いた。
リヒャルトは、ガイガーカウンターのボタンを押した。
そのとたん、ビビっという警音が鳴り響いた。針が大きく振れた。これ以上、振り切れないところまで振れた。
「あ、しまった」と叫んだ。

思った通りだ。ここに保管されているのは財宝ではなかったのだ。

終わり

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by masagata2004 | 2012-04-22 16:19 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)
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