「スキーに連れてって」のバブル時代と今との違いを考えた
JANJAN記事より転載、修正、加筆
高校生のころの映画「私をスキーに連れてって」を買い、20年前、日本中がバブルに浮かれた時代と今とを比べてみた。今の世代は、考え、意見を持ち、主張するようになった。映画やテレビが提供するライフスタイルに翻弄された時代は終わった。自らがテーマに取り組むようになった点で、20年前より心安らかになったのではないか。
桜満開の4月になったが、筆者は、長野県志賀高原でスキー滑りをしていた。たまたまDVDで1987年の映画「私をスキーに連れてって」を買ったからである。この映画を初めて見たのは筆者が高校の頃で、とても感動した記憶がある。それでスキーに憧れを抱くようになり、大学時代、アメリカのコロラド州やスイスでスキーを楽しんだ。
今年、映画の舞台となった長野県は志賀高原に来て、改めて感慨にふけった。シーズンオフということもあり、スキーヤーは少なく、空いている中、思う存分楽しめた。何よりも高台からの眺めが素晴らしかった。
長野県志賀高原(筆者撮影)
映画は、三上博史演じる若いサラリーマンの男がスキー場で出会った原田知世演じるOLと恋仲になるというもの。スキーシーンだけではなく、当時の世相や風俗も色濃く反映されており、そのことが懐かしさを感じさせてくれる。そういえば、田母神前空幕長は問題となった論文の中で「日本国民は20年前と今では、どちらが心安らかに暮らしているのだろうか」と問いかけていた。
さて、映画で20年前と今を比べてみると、さしあたり次のような違いがあるのに気付く。
・当時のスキー場では、スキーが専ら。(今)スノーボードが珍しくない。また、スキー板も短く丸みをおびた形のカービングスキーというものが主流だ。
・オフィスのシーンに、パソコンが数台しか見当たらない。数台あるパソコンもブラウン管で、電算用の文字が浮き出す、見にくい黒い画面。(今)各机に1台ずつあるのが当たり前。
・サラリーマンが社内で堂々と煙草を吸っている。(今)どこの車も全館禁煙か、吸えても戸外か、社屋の片隅にある喫煙室ぐらい。
・携帯電話を持っている人がいない。無線通信はトランシーバーを使う。女性から聞いた電話番号をメモ書きしたら、うその番号だったというシーンがある。(今)手持ちの携帯に直接番号を打ち込むか、片一方が片一方にかけさせ、着信記録を保存するというやり方が普通。なので嘘の番号を貰うことなどあり得ない。
さて、20年前といえば、まさに日本中がバブルという好景気に浮かれた時代であった。そのことも映画に反映されている。
休日となったら、若いサラリーマンが自分の車でスキー場へドライブ。ゲレンデのロッジで仲間とパーティー。仲間はカップルでいるのに主人公の男性は未だ独り身。仲間が紹介した女性をあてがわれるが気乗りしない。そんな中、理想の女性に偶然出会う。その女性に自慢のスキーの腕を見せつけ、惹きつけようとする。
当時は、若者が気ままにレジャーや恋愛を楽しめる時代で、それだけの余裕があった。男性は女性をデートに誘うなら車を持つことが当然とされた。今では、給料のいい企業の正社員は減り、給与も待遇も悪い非正規雇用が増えた。若者はワーキングプアとなり、デートなどする余裕はない。恋愛も結婚もまともにできず、未婚の男性の割合も増えた。「非モテ系」という言葉が流行だ。
そんな今の時代をどう捉えるかは見方によって違う。確かにデートのために車を持つことはなくなった。そんな余裕がなくなったせいもあるが、最近は若者の間で環境志向が強く、車を持つことをステータスと思わなくなった。買ってもハイブリッド車などのエコカーがステータスだ。メディアがもてはやす消費に踊らされるほど、うぶではもうない。
バブルがはじけ、就職難に陥った若者は、いわゆる「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれ、前の世代とのギャップに悩むことが多い。そんな世代を象徴するのが「プレカリアートのマリア」と呼ばれる雨宮処凛と「希望は戦争」で有名な赤木智弘である。
彼らは「私をスキーに連れてって」の世界とはあまりにも不釣り合いだが、不思議と輝いている。
今の世代は前の世代と違い、考え、意見をはっきり持ち、主張するようになったと思う。つらい立場にあるからこそ考える。新メディアのインターネットにより、各個人の求める情報にアクセスし、自らの意見を世間に発信できるようになった。
映画やテレビが提供する型どおりのライフスタイルに翻弄されていた時代は終わった。それぞれが自らのテーマにじっくりと取り組むようになったという意味では、20年前に比べ、心安らかになった面もあるのではないか。
バブルの時代もよかったのだろう。だが、「連れてって」と言いたくなるほど、心安らかな時代ではなかったかな、と思いを馳せながら、白銀の上を滑った。
高校生のころの映画「私をスキーに連れてって」を買い、20年前、日本中がバブルに浮かれた時代と今とを比べてみた。今の世代は、考え、意見を持ち、主張するようになった。映画やテレビが提供するライフスタイルに翻弄された時代は終わった。自らがテーマに取り組むようになった点で、20年前より心安らかになったのではないか。
桜満開の4月になったが、筆者は、長野県志賀高原でスキー滑りをしていた。たまたまDVDで1987年の映画「私をスキーに連れてって」を買ったからである。この映画を初めて見たのは筆者が高校の頃で、とても感動した記憶がある。それでスキーに憧れを抱くようになり、大学時代、アメリカのコロラド州やスイスでスキーを楽しんだ。
今年、映画の舞台となった長野県は志賀高原に来て、改めて感慨にふけった。シーズンオフということもあり、スキーヤーは少なく、空いている中、思う存分楽しめた。何よりも高台からの眺めが素晴らしかった。
長野県志賀高原(筆者撮影)
映画は、三上博史演じる若いサラリーマンの男がスキー場で出会った原田知世演じるOLと恋仲になるというもの。スキーシーンだけではなく、当時の世相や風俗も色濃く反映されており、そのことが懐かしさを感じさせてくれる。そういえば、田母神前空幕長は問題となった論文の中で「日本国民は20年前と今では、どちらが心安らかに暮らしているのだろうか」と問いかけていた。
さて、映画で20年前と今を比べてみると、さしあたり次のような違いがあるのに気付く。
・当時のスキー場では、スキーが専ら。(今)スノーボードが珍しくない。また、スキー板も短く丸みをおびた形のカービングスキーというものが主流だ。
・オフィスのシーンに、パソコンが数台しか見当たらない。数台あるパソコンもブラウン管で、電算用の文字が浮き出す、見にくい黒い画面。(今)各机に1台ずつあるのが当たり前。
・サラリーマンが社内で堂々と煙草を吸っている。(今)どこの車も全館禁煙か、吸えても戸外か、社屋の片隅にある喫煙室ぐらい。
・携帯電話を持っている人がいない。無線通信はトランシーバーを使う。女性から聞いた電話番号をメモ書きしたら、うその番号だったというシーンがある。(今)手持ちの携帯に直接番号を打ち込むか、片一方が片一方にかけさせ、着信記録を保存するというやり方が普通。なので嘘の番号を貰うことなどあり得ない。
さて、20年前といえば、まさに日本中がバブルという好景気に浮かれた時代であった。そのことも映画に反映されている。
休日となったら、若いサラリーマンが自分の車でスキー場へドライブ。ゲレンデのロッジで仲間とパーティー。仲間はカップルでいるのに主人公の男性は未だ独り身。仲間が紹介した女性をあてがわれるが気乗りしない。そんな中、理想の女性に偶然出会う。その女性に自慢のスキーの腕を見せつけ、惹きつけようとする。
当時は、若者が気ままにレジャーや恋愛を楽しめる時代で、それだけの余裕があった。男性は女性をデートに誘うなら車を持つことが当然とされた。今では、給料のいい企業の正社員は減り、給与も待遇も悪い非正規雇用が増えた。若者はワーキングプアとなり、デートなどする余裕はない。恋愛も結婚もまともにできず、未婚の男性の割合も増えた。「非モテ系」という言葉が流行だ。
そんな今の時代をどう捉えるかは見方によって違う。確かにデートのために車を持つことはなくなった。そんな余裕がなくなったせいもあるが、最近は若者の間で環境志向が強く、車を持つことをステータスと思わなくなった。買ってもハイブリッド車などのエコカーがステータスだ。メディアがもてはやす消費に踊らされるほど、うぶではもうない。
バブルがはじけ、就職難に陥った若者は、いわゆる「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれ、前の世代とのギャップに悩むことが多い。そんな世代を象徴するのが「プレカリアートのマリア」と呼ばれる雨宮処凛と「希望は戦争」で有名な赤木智弘である。
彼らは「私をスキーに連れてって」の世界とはあまりにも不釣り合いだが、不思議と輝いている。
今の世代は前の世代と違い、考え、意見をはっきり持ち、主張するようになったと思う。つらい立場にあるからこそ考える。新メディアのインターネットにより、各個人の求める情報にアクセスし、自らの意見を世間に発信できるようになった。
映画やテレビが提供する型どおりのライフスタイルに翻弄されていた時代は終わった。それぞれが自らのテーマにじっくりと取り組むようになったという意味では、20年前に比べ、心安らかになった面もあるのではないか。
バブルの時代もよかったのだろう。だが、「連れてって」と言いたくなるほど、心安らかな時代ではなかったかな、と思いを馳せながら、白銀の上を滑った。
by masagata2004
| 2009-04-08 23:59
| スキー
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