自作小説「ヨーソロ、三笠」 第7章 衣蓑と断髪

平和運動家の青年が、戦艦三笠に乗り込み、真の平和主義に目覚める。筆者の実体験に基づく奇想天外な物語。もちろん、フィクション。

まずは第1章から第6章までお読み下さい。

 まずは渡されたのは衣嚢と呼ばれる蓑虫のような形をしたバッグである。細長く格闘技訓練に使うサンドバッグのような形をしていて上に紐がついていて、紐を引っ張ると上口が締まるようになっている。衣嚢の中にいろいろなものが詰め込まれている。何でも佐世保に寄港中、町で怪我をしてしまい乗船できなくなった兵員がいたため、その者の分を使うことにしたのだという。




 衣類だ。セーラー服の夏用、冬用、作業用の服、靴下、下着などだ。下着は襦袢という着物の下に着るようなものと褌だ。まさにこんな時代に来たのだ。軍服は洋服でも、下着は和服のまま。
「あ、それから艦内では地下足袋だぞ」
と多神。衣嚢の中から黒い地下足袋らしきものを取り出した。源太はそれを祭りで身につけている人を見たことがある。それから建築現場のとび職人なんかが履いているのを。見たことはあるが、自分が履くのは全くの初めてだ。靴を脱いで、それに履き替えた。サイズは少し小さい感じがしたが、靴と違い布ものなので留め金を一部緩め紐の縛り具合でうまく調整が出来た。なるほど、地下足袋というだけあって履いた感触はまるで裸足のようなピッタリ感だ。
 とりあえず、地下足袋に履き替えた以外は元のままだ。下着は替える必要はまだない。
「おい、それから、水兵になったのだから、その頭どうにかしないとな」
と多神。その言葉の意味が源太には即座に分かった。毛を刈れということか。他の水兵たちが皆、そんな髪型だから当然だろう。坊主頭は初体験ではない。実をいうと、何度かしたことがある。高校時代のことだ。試合で負けたら坊主になると公言して勝利を願掛けしたものの負けてしまい、約束通り、坊主頭にした。恥ずかしかったが、してみると実にすがすがしい気分になってむしろテニスも学科も成績が上がり、高校を卒業するまで坊主頭のままにしたことがある。
 バリカンとハサミで散髪係の兵員がさっと髪の毛を刈ってくれた。実にすきっとした気分だ。
「さあ、これから一通り艦内を案内するぞ」
と多神。機関砲の備えられている上甲板、中甲板、下にいくと兵員の集合部屋、炊事場、便所、洗面室、浴室など。これは元の世界で見た光景がそのままだ。だが、展示物ではなく実際に使用されている光景を目にしている。

 次に中甲板より下の方へ、ここは展示さていなかったところだ。まずは大砲や銃などのある弾薬庫。そして、その下は一番地下で石炭がぎっしりとつまり、大きな釜があり中がとても熱い機関室である。この戦艦は石炭を焚いた蒸気によって動く蒸気機関船なのだ。
 博物館としての展示物ではない本物の戦艦三笠の姿。あの東堂長官と同様に、信じたくても信じられない体験をしている。だけど、今はここに適応しなければと思った。
 ラッパの鳴る音がした。時報のようだ。
「さあ、さっそくお前も水兵として、作業開始だ」
 それは甲板の拭き掃除だった。水兵一同足袋を脱ぎ裸足となり、作業着に着替え、しゃがんで膝までズボンをまくし上げ甲板バケを両手に持ち、ひたすら掃くのだ。
 甲板に石鹸を撒き、バケで床を拭く作業は一時間ほど続いた。真冬の寒風が吹く中だが終わった頃には真夏のように汗びっしょりとなった。
 作業着を脱ぎ、一同着替えることになったが、源太は困ったことに直面した。下着として着ていたTシャツとトランクスが汗で濡れている。これも着替えたいが、着替えの下着が馴染みのない襦袢と褌だ。襦袢は構わないのだが、褌はどうしたらいいものか。というか、身につけ方が分からない。長い布の片方の両端に紐がついているのだが、それをどう結べばいいのか。他の水兵たちが着替えるのを見てみようとしたが、あまりにもすばやく着替えをしたので見逃してしまった。何よりも、こんなものを下着として身につけること自体、なんとなくおっくうだ。
「おい、何をしている? 早く着替えねえか」
と多神。トランクス一枚の姿の源太にむかって言う。源太は困った表情をする。
「ほう、イギリスではこんな下着を身につけるんだな。そうなると褌はつけられねえか」
「ええ」
と源太は言った。
「しゃあないな。教えてやるべ」
と多神。突然、源太のトランクスを降ろし、すっぽんぽんにさせた。驚いたものの、多神に任せるつもりだ。
「よし、まずはこの紐を前で結ぶ」
と源太の股の性器の上で紐を結び固く締めた。尻から長い布がぶら下がった状態だ。
 そして、ぶら下がった布を股の間から上にまくし上げ結び目と源太の体の間を通し、布をさらに上の方へ引っ張る。性器を布が包み込むような形だ。しかし、上の方へ引っ張るので性器に圧力がかかった。
「いて」
と言うと、突然、多神が源太の布で包まれた性器をぐいっと手でつかむ。
「何をするんですか」
と源太は怒って言った。
「立派な金玉持っているじゃねえの」
と面白い表情で源太を見つめる。何だ、この人は変な趣味の持ち主だ、と思った。そういえば、この多神という兵曹長、元の世界で出会った多神というのと顔と背格好がそっくりだ。だが、違う人物である。しかし、何か関わり合いがあるはずだ。多神が布を手から放すと褌は、前垂れの形となった。
b0017892_3143311.jpg

 褌の上からズボンを着る。ズボンの中で布がくるまりかさばる。褌とは和服のためにあるような下着だ。どうも不便な感じがしたが、これが明治の人々の洋服の着方なのだろう、と思った。
「おい、食事まで少し時間がある。どうや、一緒に一服でもせんか」
と多神が誘う。源太は煙草は吸わないたちだが、誘われれば吸っても平気な方だ。それに明治時代の煙草かと思うと試してみたくなった。
「ええ、是非とも」

第8章につづく

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by masagata2004 | 2013-01-01 03:19 | 自作小説 | Trackback | Comments(0)
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