書籍「終戦のエンペラー 陛下をお救いなさいまし」 天皇は象徴でしかなかった

現在公開の映画「終戦のエンペラー」を観た後、この本を買ってみた。というのは、映画はこの本を原作としてつくられたフィクションを織り交ぜた歴史サスペンスものであった。

本に書かれているのは、占領軍司令長官マッカサーの右腕であった陸軍准将ボナー・フェラーズと、フェラーズと親睦の深かった日本人女性、河合道の交流と最終的に天皇を訴追しない決定が下されるまでの経緯である。河合道は、当時、恵泉女学園の校長をしていた。

フェラーズと河合は、戦前から知り合い、フェラーズは日本に興味を持ち、ラッカディオ・ハーンの書籍を全て読んだという日本通であったという。

河合はクリスチャンであったが、天皇には強い敬愛を持ち、もし天皇が裁判にかけられ処刑されることがあれば、自分は死ぬつもりで、日本国民も同様の想いを持っており、それにより日本の国内には米軍に対する反乱が頻発して占領政策を難しくさせるだろうとフェラーズに述べ、フェラーズもかねてからの日本研究により、そういう結論を持ち、それをマッカサーに報告。それにより天皇は戦争責任に関する訴追から逃れるようになったという。



映画では、河合道に当たる人物は出てこない。だが、フェラーズが恋をする美しき日本人女性が登場。アメリカの大学で留学生だった彼女と知り合い、ダンスパーティに誘い、戦後も彼女への想いが断ちきれず、任務とは別に彼女を捜す、といかにもハリウッド映画らしい。実際のフェラーズと合致しない設定になっている。現にフェラーズは、戦前に結婚をして娘もいたぐらいだし、河合や河合の愛弟子でありフェラーズと大学で同時期を過ごした女性、渡辺ゆりと知り合ったのも、映画の設定よりずっと前である。

この大雑把な脚色がいかにも、ハリウッドらしいというもの。だが、映画全体としては日本人が観ても違和感を感じるところはなく、硬派な歴史ドラマとして楽しめるものだった。

ちなみに本ではフェラーズより河合道の人物像が中心に描かれており、それが実に感銘を受けるものだった。男尊女卑の時代、女子の自立を目的とした学園を立ち上げ、自らクリスチャンであったため、戦時中は戦争反対、また天皇皇后の写真を学校で掲げることを拒否して、憲兵から厳しい取締りを受けた経験を持つ。

だが、そんな当時の基準からはかけ離れた女性でありながら、天皇の訴追には真っ向から反対の意見を述べたことで、いかに天皇の存在が日本を治める上で重要であるかを占領軍の人々に分からせたということなのだろう。

書籍にある河合道の言葉でいくつか印象を受けるものがあった。
「10点満点でテストで、7点しか取れない人が努力して8点を取る方が、10点を取れる人が怠けて9点を取るよりも、神様の基準からすると立派なことです」
「できるのにできないというのは謙遜ではなく、失敗して恥をかくことを恐れているのに過ぎず、それは傲慢であるとみるべき」

なるほどね。

映画では、最後に天皇がマッカサーに「国民には責任がない。私が責任を負う」と述べ、マッカサーが感動する場面が映し出されていたが、本では、それについては否定的な見解が述べられている。天皇は実際にそんなことを言ったのかはかなり疑わしいと。占領軍が訴追しなかったのは、あくまで占領政策を順調に進めるためだったというのが真相だと思われる。

天皇の戦争責任については、映画でも本でも述べられているように、天皇の役割は、あくまで形式的なことばかり、立憲君主制に立脚している立場から、閣議で決められたことには一切拒否できない立場であり、専制君主ではなかったのだから政治的な責任はないといわれている。

道義的にはあったのかもしれない。その意味でいえば、昭和天皇は占領の終わりに目途がついた時点で退位すべきだったのではと思われる。

天皇制は、過去からこれまでずっと象徴制として機能してきた。今後もそうだろう。だけど、未来永劫に天皇制を続けていくのは、どうかと思うのが私の意見だ。かつてのように、神格化して統合の象徴としてみるようなことには、どこか無理がある。まあ、未来の世代が決めるようなことだが。
by masagata2004 | 2013-08-04 15:00 | 書籍評論


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