遠藤周作作「沈黙」 クリスマスに考えるべきこと

クリスマスが近いということで、たまたまブックオフで105円で売られていたこの本を買った。なんでも、ハリウッドでの映画化も予定されているとか聞いた。

ストーリーは、キリスト教に禁制の令が出て、キリシタン狩りが猛威を振るう江戸時代の日本が舞台。師として尊敬するある司祭が拷問され棄教したという報告を受けたポルトガル人の司祭二人が密航船に乗り込み、長崎の地に入る。そこで隠れキリシタンたちに対し信仰を施す。だが、彼らの存在が権力側に明らかとなり過酷な運命にさらされることに。

実に巧妙に書き込まれているのが驚き。遠藤周作はキリスト教をテーマにした作品が多いというから、まさにその集大成ともいえる内容であった。この作品は実在の人物がモデルだというのだからさらに驚き。

キリシタン狩りといえば踏み絵だが、踏み絵だけではごまかされると唾を吐くことまでされる場面を読み、当時の幕府がいかにキリスト教を排除しようとしていたかが刻銘に表されている。

江戸幕府のキリスト教弾圧は、鎖国と同様に西洋帝国支配から逃れるためであったとされる。植民地支配は宣教師を使い、現地人を洗脳させ、抵抗意欲を失わせるのが方策だ。それを当時の幕府は恐れていたのである。

題名の「沈黙」とは、過酷な運命にさらされている人々にどんなに祈りを捧げても、何の救いもないことから言い表された言葉。

さて、ネタバレをすると、





司祭たちは囚われの身となり、信者たちが次々と処刑される姿を目にする。二人のうち一人は信者とともに死んでしまう。生き残った一人は、かつて尊敬の念を抱いていたが、すでに棄教した司祭と再会。だが、その人は全くの別人となっていた。

元司祭に促され、囚われの身の司祭は棄教をする。それは彼のためではなく、拷問を受けている信者を救うためであった。そして元司祭と同様に日本人の名を名乗り、所帯を持ち、日本の地で骨をうずめることに。

あっけない結論であったが、この小説の醍醐味は、司祭の心の変化である。主、イエスを信じ、過酷な試練を乗り越えようとも、最終的には現実に妥協せざる得なくなる。主の救いもなくむなしい中、どうして生きていけばいいのか思い悩む。十字架にかけられたイエス様を思い起こしながらも、主はいつも沈黙を守っている。だが、棄教することこそ、主の御心のように思えてくる。それが現実。

また、彼に棄教を進める幕府の役人の言葉がぐっとくる。夢を見させて、救っているようで、かえって人々に苦痛を与えているのではないか。キリスト教は、日本には根を下ろさない。普遍的なものではないということだ。

その通り、現実に日本のキリスト教徒の割合は信教の自由が保障された現代でも人口の1%にも満たない。これだけ盛大なクリスマスイベントをするのに、所詮は商業主義のお祭りでしかない。

でも、こんなお祭りができるのも、キリスト教のおかげというべきか。だけど、お祭り騒ぎだけで終わらず、少しは、こんな歴史があったことを考える日にしたい。それこそがこの小説のテーマだったように思える。

アーメン

by masagata2004 | 2013-12-23 20:44 | 書籍評論 | Trackback | Comments(0)
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