もう、ただ被害者ぶるのはやめよう!

今日は、人類で初めて核兵器が落とされた日から60年目だ。

いつものようにワンパターンな特集がメディア上に繰り広げられる。被害者は日本国民で、8月6日と9日に原爆を落とされ、戦争が終わったことが中心だ。不思議なことに戦争が終わったことばかり語られており、なぜ戦争が始まったのかについては、ほとんど語られない。まるで、自然災害が襲ってきたかのような感じだ。

原爆を落としたアメリカとは、戦後まるで子分になったかのように仲良しだ。広島、長崎の原爆投下は、一般市民を巻きこんだ当時の国際法では禁じられた人類に類をみない蛮行という人々がいる。

全くその通りだろう。当時の戦況をみても、原爆投下がなくとも日本は降伏しただろうという観測がある。むしろ、戦後世界で核がどのような影響をもたらすかを試す人体実験であったのではないかともいわれる。ところが、戦争を自ら起こし、負けてしまった立場の国には、それを胸を張って主張する資格が与えられなかったため、非常に内向きにならざる得ない。ただ、もう一つ、日本が広島・長崎、また東京大空襲を含む一般市民を巻き込んだ都市爆撃に対し、被害者のふりを堂々と出来ない隠された理由がある。

東京国際大学の講師であり、「戦略爆撃の思想」の著者である前田哲男氏によると、広島、長崎、東京大空襲は、日本にとってブーメランのようなものだと語る。そもそも、広島・長崎の原爆投下や東京大空襲は、それまでの戦争になかった「戦略爆撃」という、敵の抗戦意欲を削ぐことだけが目的の爆撃であったのだ。それ以前までの空爆というのは、陸上戦の前哨戦として、敵の軍事基地などを攻撃し、来る陸上戦を有利に運ぶ補助的な役割があった。それが、ある事件を契機に変わった。

日中戦争の真っ只中、中国の国民党政府は、大虐殺をともなう攻撃を受けた南京が日本軍の手に落ちると、首都を重慶に移した。重慶は地形的な性質上、陸軍も海軍も派遣できない場所であった。そのため、日本の軍部は航空部隊を使い、上空から無差別に攻撃するという作戦に出た。その後、3年以上も無差別の爆撃にさらされ、多くの一般市民が犠牲になった。そして、ここであの「焼夷弾」が使われた。当時、重慶には中国人だけでなく、世界各国のジャーナリスト達がいた。重慶の爆撃を目撃した彼らは、それを世界に発信した。その結果、当時のアメリカの軍部も、この戦略爆撃というものを知ることとなり、それが広島・長崎・東京大空襲に応用されるのだ。

考えてみれば、重慶に日本軍が空爆をしたことを知っている日本人は、非常に少なく、昨年の7月に重慶で開かれたサッカーのアジア・カップでの大騒動の要因として話題になったくらいだ。

日本人は、戦後60年、ひたすら平和を祈りながら被害者を演じてきたように思う。だが、それは国内で通じても、国際社会では、まだ加害者としての印象が拭えてない。国連にも「敵国条項」は残っており、日本は敵国とまだ名指しされているくらいだ。そして、小泉首相の靖国神社参拝に端を発した中国での反日運動で象徴されるように、被害国民の憤りは、世代を通じて語られ、60年経っても癒えてない。

広島・長崎の原爆投下や東京大空襲の悲惨さを世界に訴えるのは、とても大事なことだ。だが、その前に日本には、やり残したことが多過ぎる。戦争がどうやって終わったかということよりも、なぜ始まったかということを知らなければいけないのだ。

今年もあの憂鬱な8月15日が来る。しんみりとしながら、何か消化できない感情がこみ上がる。歴史から教訓を学ぼうとしない悲しい民族は、平和を祈りながら思考停止状態で生きていかなければいけないのか。その結果、何ら明るい未来を築けない宿命を背負わされる。こんな生き方こそ、自虐的ではないのか。


*上記の記事は、市民メディア、JANJANで掲載されました。記事の名は「敗戦60周年 忘れてはならない重慶爆撃」です。編集者により、一部書き換えられていますが、ここにはない詳しい情報も読めます。
by masagata2004 | 2005-08-06 17:37 | 時事トピック | Trackback(4) | Comments(0)
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