ソースを示せ! 信頼できるね (米留学体験記)

米大学留学時代の体験について語るシリーズ。

アメリカの大学で論文を書いたり、プレゼンをしたりする時に必ず講師から注意される事柄として、提供するSource(情報源)を示すことが求められます。そして、情報源は各ページの脚注や最後にまとめて参考文献として明示する方法があります。これは、必ずしなければならず、しないものは論文として認められません。まあ、このことはアメリカに限らず、日本でも世界の他のどこの国でも同じことだと思います。

情報源といっても、何でも認められるわけではありません。絶対認められないのは、どこかで聞いたといかいう事柄です。英語では、hearsayなどと言いますね。それから、活字体の情報源といえども、認められない場合が数多くあります。覚えているのは、新聞記事や雑誌の記事を論文のソースにしようとすると「あまり信用できるものじゃないから駄目だ」と言われたことです。アメリカでは、新聞などのマスコミって、日本ほど信頼されてないという感じを受けます。

日本ではどうでしょう。もちろん、こんなこと常識だと思っている方は多いのでしょうが、ただ、情報ソースを明確にするとかその信頼性を検証するとかいう感覚は、非常に疎い感じを受けます。日本人で同じ大学を卒業した人が、帰国してから言っていたのは、彼は日本に帰っても日本の書籍はあまり読まず洋書をよく買って読むというのです。それは、日本の書籍はソースを明示してないものが多く、信頼しにくいからだそうです。

確かに、いわゆる専門書といわれるものでもそんなことが多いですね。ある意味、日本のアカデミズムや出版業界の体質を表している感じもします。

だからこそ、日本では専門家でもない人の事実誤認がまかり通ったりすることがしばしばあります。特に歴史問題はいい例といえましょう。象徴的なのは「南京大虐殺事件の捏造説」です。

南京虐殺に関しては、以前私が書いた記事「南京大虐殺の史跡を訪ねて」を読んで貰えれば分かりやすいのですが、歴史的既成事実として揺るぎないものであるにも関わらず、なぜこうも捏造説が流布されるのか。いろいろと要因は考えられますが、やはり、それは情報をろくに検証もせず鵜呑みにしてしまう性格が影響しているのだと思います。

ところで、何度か南京虐殺に関してこのブログと市民ネットメディアのJANJANで記事にしてきた私が、なぜ南京虐殺事件が捏造でないと言い切れるのか、アホ臭いながらも説明しますと、まず、私はこの手の歴史に関する専門家でもなければ、研究者でもありません。従って、私が独自に調べたとか研究した成果からそう言いきっているのではありません。

実に簡単なことです。信頼できる情報源から、そのことを聞いてきたからです。中学校の時に歴史の授業で習いましたし、教科書にも書いていることです。この教科書は権威ある文部省の検定を受けているものです。最近の検定をパスした教科書にも南京虐殺に関する記述はあります。あの「つくる会の教科書」でさえ、結局のところ否定はしてなく「議論がある」と言うところでとどめています。東京書籍や日本書籍には、一般市民を含めた虐殺があったことをそれなりに明記しています。

それから、最近の司法でも当然のことながら、南京虐殺の存在は事実認定を受けています。南京虐殺の被害者であった中国人女性の李秀名さんを嘘つき呼ばわりした亜細亜大学の学者は名誉毀損で起訴され東京地裁と高裁で有罪となっています。その他の裁判でも、南京虐殺については、事実認定を受けていますし、外務省の中国課に問い合わせても、虐殺の事実はあると認めています。

あったなかったということと同様、争点となっているのは規模が中国側が発表する 30万人であったかということですが、これは戦後の東京裁判と南京裁判で出された推定値に基づく数値だとのことですが、この数値に関しては最近、民間の学者による3カ国の歴史共同研究によって出版された「未来を開く歴史教科書」にも、この推定値がそのまま表記されています。

私が関わった南京虐殺のことを語り継ぐ市民団体「ノーモア南京の会」の方々や、会の活動に関係する研究者の方も同様に「30万人説」ということにさしたる疑問はないと見ています。ただ、もちろん推定値ですから、幅はあり、十万単位の間違いがあるということから数十万といった方が妥当と言えば妥当かも知れません。

ちなみに、ホロコーストによるユダヤ人の虐殺数600万人とか、日本の戦災者数 200万とかいうのも推定値です。実際、正確な実数値を出せというとかなり幅が出るものと思われます。最近のイラク戦争の民間人死者数も1万人から10万人以上とかなり幅があります。戦争の混乱期ということもあり、犠牲者数を正確に計測することは非常に困難な作業だからでしょう。

ただ南京虐殺に関して言えば、中国側の事情があって研究が不十分なままになっていたという事実もあります。というのも、南京戦というのは南京が当時国民党の首都であったということもあり、その後、共産党が支配するようになった中国では国民党に関わる歴史研究というのは敵視政策もあり、あまり進まなかったという事情からです。むしろ最近になって、生存者の聞き取り調査を幅広くするようになってきたと聞きます。

ちなみに南京虐殺に関して私にとって大きな情報源となった「ノーモア南京の会」の人は、強制連行の賠償問題などの裁判にも関わってきた人です。それだけ研究や実地調査をやってきた方々です。きちんとした歴史学の専門家の方々と連携を取っています。匿名でなく責任を持って発言をしている方達です。

もちろん、上記に挙げたものが必ずしも、100%の信頼性を保証するとはいいきれません。司法であれ間違った判断をすることは多々あります。イデオロギーがないといえば嘘になるでしょう。ですが、小林よしのりの漫画やイデオロギー丸出しで「自国中心の歴史観の何が悪い」という風にわざわざ主観的であることをアピールしている学者の言説よりは、客観的で公正中立とみえるため、信頼に足るものといえます。

まあ、南京虐殺の否定論をよく読むと、ほとんどが「・・とは考えられない」とか、「嘘をついていることもありうる」とか憶測で言いたい放題、揚げ足取り、詭弁ばっかりですよね。出してくる情報も、ソースは明確でなく、信頼性には疑問視すべき点が多く、また断片的だったりします。

彼らの論法を使えば、広島・長崎の原爆投下、東京大空襲、日清日露戦争、関ヶ原の戦い、そういうのも捏造だということになりますよ。ついでにもっていえば、地球は実をいうと丸くなく、平らなんじゃないかという説も成り立ってしまいます。

そういえば、最近、ポルトガルのイラン大使が「ホロコーストはあり得ない600万人もの人をそんなに短期間に虐殺出来るはずがない」と発言したとか、これってムハンマド風刺画に対する当てつけか、イスラエルに対する反感からか。イデオロギーは別として、しっかりとした情報源による歴史認識を持って欲しいものです。
by masagata2004 | 2006-03-06 23:37 | 米留学体験談 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://masagata.exblog.jp/tb/4232090
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


人生は常に進歩していかなければならない


by マサガタ

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

カテゴリ

全体
プロフィール
自作小説
映画ドラマ評論
環境問題を考える
時事トピック
音楽
スポーツ
ライフ・スタイル
米留学体験談
イベント告知板
メディア問題
旅行
中国
風景写真&動画集
書籍評論
演劇評論
アート
マサガタな日々
JANJAN
スキー
沖縄

タグ

最新のトラックバック

映画「終戦のエンペラー」..
from soramove
【映画】バーダー・マイン..
from しづのをだまき
インサイダー
from 映鍵(ei_ken)

フォロー中のブログ

高遠菜穂子のイラク・ホー...
ジャーナリスト・志葉玲の...
増山麗奈の革命鍋!
*華の宴* ~ Life...
poziomkaとポーラ...
広島瀬戸内新聞ニュース(...
楽なログ
美ら海・沖縄に基地はいらない!

その他のお薦めリンク

ノーモア南京の会
Peaceful Tomorrows
Our Planet
環境エネルギー政策研究所


私へのメールは、
masagata1029アットマークy8.dion.ne.jp まで。

当ブログへのリンクはフリーです。

検索

ブログパーツ

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

東京
旅行家・冒険家

画像一覧