21世紀はメディアにとって公共性の危機

以前の同シリーズ記事で、21世紀にどんなメディアが生き残れるかを書きました。

結果としてメディアは、インターネットという新システムにより、独占的な立場にあった既存の新聞やテレビは淘汰されていくと述べました。

だが、それがいいことなのかというと、必ずしもそうではありません。資本の力やチャンネル数制限により、寡占状態で選択肢が限られていた時代は、それがゆえに為政者により、言論や情報発信が統制を受けやすく、恣意的な情報発信により、人々が騙されるということがありました。

また、商業主義なため大衆迎合な情報ばかりに偏り、為政者がコントロールするまでもなく、真実を見誤らせることも起きていました。いい例が、我が国における戦前のメディアです。これに関しては、この記事と、私の自作小説が参考になります。

ですが、そういう問題が、インターネットを中心とした新メディア体制で解消され良くなっていくのかというと、それは疑問です。

資本やインフラの差が関係ないとか、権力の統制を受けにくいとかいう点は既存のメディアと比べれば、そうだとは言えますが、ただ、インターネットでいいサイトを探そうとすると誰でもGoogleやYahooのような検索エンジンを通して探します。その検索エンジンがコントロールされたらどうでしょう。Googleが、中国政府の検閲に応じたことが問題となりましたよね。「天安門」と検索しても、流血の惨事については中国内で検索しても出てこないようになっています。大事な入り口のところで、塞がれてしまうのでは、これまでと同じことかもしれません。

どんなに素晴らしいサイトをオープンしたからといっても、誰も見てくれないのでは、結局同じです。

また、選択肢が増えるからといって、皆が皆、ためになるようなものを見るとは限りません。

誰もが自分の好きな情報、聞いてて気持ちのいい情報ばかりにアクセスするようになるので、偏った情報ばかりを誰もが採り入れるようになります。

これまでは、テレビや新聞などの限られた大メディアにより、大多数の人がほぼ同じ情報を共有せざる得なかったメディア構造だったのですが、細分化されると同じ好みの人が特定のサイトに集まり、そこから発信される情報以外に耳を傾けないという驚異的な出来事が起こるのです。互いに情報を共有できなくなる事態となるのです。朝日新聞を読む人は、産経新聞を読まず、その逆もしかりですよね。

この現象はネットに限らずCATVが普及し多チャンネル化したアメリカで、すでに起こっています。それは、保守的なFOXニュースが、ブッシュ政権とイラク戦争を後押ししたことが、その象徴でFOXの視聴者は、イラクが911をやったものであるとか、大量破壊兵器を隠していると思い込んでいるのです。そして、彼らは共和党の協力な支持者となりました。

FOXが洗脳したというよりも、FOXが元からいた保守的な人々を囲い込んだと言った方がいいでしょう。つまりは以前から、そういう層の人は多くいたのですが、そう言う人達が好む番組を提供するチャンネルがなかったということなのです。

多チャンネル化は、ある意味ジャーナリズムの理想でもありました。少ないメディアの限られた情報だけで真実が隠蔽され多様な意見が聞こえなくなるという欠点を解消するものだと。ですが、現実はその逆になりそうです。

例えば、こういう会話が交わされるかも知れません。

A 「イラク戦争は間違っていた。大量破壊兵器もないし、911との関わり合いもないと米国政府さえ認めている」

B 「何言ってるんだ。イラクが911をやったんだ。俺のいつも見ているニュースサイトでは、そう言っていたぞ。お前の見ているのは、誤報だ。偏っているんだ」

A 「お前こそ!」

C 「ところで、お二人何を騒いでるんだ? イラク戦争って何?」

A&B 「え、イラク戦争を知らないのか」

C 「いやさ、おいらは、ニュースサイトなんて見ないから。芸能ネタや漫画ばかりで」

賛否の意見だけでなく、事実認識さえ共有できなくなるという脅威です。
システムではなく、結局は個人の問題ですよね。だから、最近はメディア・リテラシーなんてものが注目されるようになりましたよね。

考えてみれば、少数の支配的なメディアに踊らされていたのは20世紀だけの現象だったのかもしれません。19世紀までは、地域地域でかなりの情報格差や志向の違いが歴然とあったのでしょう。

21世紀は、20世紀のバックラッシュとして、分散化が進みますが、これは、19世紀とは違い、地域という物理的な枠を超えた分散化でもあります。

同じ町に住んで、または、同じ家に住んでいながら、意見や事実認識が全く異なり、意見交換をするのは距離を超えたバーチャルなネット社会を通じた者のみという分散化が起こるのです。ネット社会の者同士であれば、考え方が同じだから争うこともなく安心です。

顔を合わせて接する者同士では、表面的な付き合いしかできない。ネットの中でのみ、本物の自分を出せる。

まるでマトリックスです。

いい記事だと思ったらクリックしてください。ランキングへ
by masagata2004 | 2006-09-07 21:15 | メディア問題


人生は常に進歩していかなければならない


by マサガタ

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

カテゴリ

全体
プロフィール
自作小説
映画ドラマ評論
環境問題を考える
時事トピック
音楽
スポーツ
ライフ・スタイル
米留学体験談
イベント告知板
メディア問題
旅行
中国
風景写真&動画集
書籍評論
演劇評論
アート
マサガタな日々
JANJAN
スキー
沖縄

タグ

最新のトラックバック

映画「終戦のエンペラー」..
from soramove
【映画】バーダー・マイン..
from しづのをだまき
インサイダー
from 映鍵(ei_ken)

フォロー中のブログ

高遠菜穂子のイラク・ホー...
ジャーナリスト・志葉玲の...
増山麗奈の革命鍋!
*華の宴* ~ Life...
poziomkaとポーラ...
広島瀬戸内新聞ニュース(...
楽なログ
美ら海・沖縄に基地はいらない!

その他のお薦めリンク

ノーモア南京の会
Peaceful Tomorrows
Our Planet
環境エネルギー政策研究所


私へのメールは、
masagata1029アットマークy8.dion.ne.jp まで。

当ブログへのリンクはフリーです。

検索

その他のジャンル

ブログパーツ

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

東京
旅行家・冒険家

画像一覧