映画「ニュルンベルグ裁判」 戦争の総括とは

映画は1961年のアメリカ映画「ニュルンベルグ裁判」です。敗戦後のドイツ、ニュルンベルグでの戦犯裁判所をテーマとした物語です。実話をある程度もとにしています。

物語はアメリカの地方判事が、元裁判官で法務長官のヤニングという人を裁く話しです。彼はナチスに屈していながら、実を言うとナチスに抵抗していた面があるとして、他の被告とは別格に扱われるべきだと考えられていました。

ヤニング氏は、民主的なワイマール憲法の考案者でもありました。なぜ、ヤニング氏がナチスの独裁になってからも、判事を辞めなかったかというと、彼は自分がやめたら、もっとひどい奴が自分の地位についてもっと事態を悪化させると。味方になる振りをしながら、最悪の事態に歯止めをかけようとする現実的な選択をしたのです。事実、彼はユダヤ人の医師を自分の主治医にして守りました。しかしながら、彼は有罪となり終身刑を言い渡されます。

映画はアメリカ映画ながら、ドイツ人からの視点がたっぷり盛り込まれています。ヤニングを弁護するドイツ人弁護士がする弁論には驚くばかりです。つまりは、この裁判は、勝者からの一方的な思い込みによって運営されていると。そして、裁判は一つ一つの事例について精査しながら為されるべきだと。そういうメッセージが込められています。

ニュルンベルグ裁判は、東京裁判とよく比べられ、東京裁判は批判が強いですが、ニュルンベルグはそうでもないといわれます。ニュルンベルグでは被告側のドイツの関与がそれなりに強かったからです。ですが、どちらも敗戦国だけに戦争の責任を押しつけた復讐的な要素が非常に強いことには変わりありません。

印象的だったのは、ドイツ人弁護士が被告と話しながら「アメリカも広島や長崎でひどいことをしたじゃないですか」と叫ぶところです。考えてみれば、東京裁判のアメリカ人弁護士も、同じことを言っていました。それが法の精神というものなのでしょう。

ただドイツは、このニュルンベルグ裁判を真摯に受け止め今年は60周年の式典を開き、意義あるものだったと認めています。対照的に日本では総理となる人が「事後立法だから認めない」と切り捨ててしまう始末。アメリカに感謝したらいいのに、自分のご祖父は、あの裁判で起訴されずにすんだのだから。現在の国際刑事裁判所の設立にも、この戦犯法廷の歴史はかなり寄与したんだから。国家としては、意義あるものだと認めるが勝ちだと思うんですけど。

俳優の話で言うと、二人の人物が印象に残りますね。一人は、主人公のアメリカ人判事役のスペンサー・トレーシーです。彼は67年の「招かれざる客」で主演を務めました。黒人の婚約者を連れてきた娘の父親役です。いわばリベラルな60年代を象徴する映画がはまっているのかなと感じます。

もう一人は何と言っても、ドイツ人の軍人未亡人の役として出演したマルレーネ・ディートリッヒです。ナチス政権下にアメリカに亡命したドイツ人女優でした。彼女の祖国への愛国心がにじみ出る演技でした。

ヤニング元判事を演じたバート・ランカスターもすばらしかったです。ヤニング判事が、ヒットラー誕生からドイツが狂っていった様子を説明し、悲しむ場面は日本人の我々にもぐさっと来ます。罪を認め、その上で乗り越えるしかないと。最初から最後まで一貫して悲しそうな顔をできたのはすごい名演でした。

解放された収容所の様子を収めたフィルムが出てきますが、こんなことを国家が組織的に行ってしまったとは恐ろしいことです。だからこそ、ドイツは憲法より優先してでもネオナチの取締りを行い、ホロコーストを公然と否定する者を刑務所へ送りこむのだなと理解できます。

日本では、堂々と「南京虐殺はない」と言って本まで出版する輩がいるくらいですから。そういえば東中野という学者が、そのことで名誉毀損で訴えられ賠償命令が出されましたよね。

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by masagata2004 | 2006-09-22 21:29 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)
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