映画「硫黄島からの手紙」 ぞっとする日本軍と日本の姿

先週の土曜日にクリント・イーストウッドが監督をしたというハリウッド製の日本映画「硫黄島からの手紙」を観に行った。この映画を観たいと思ったそもそものきっかけは、映画の中で重要な登場人物として描かれている西竹一中佐ことバロン西に関心があったからだ。

かつて乗馬に夢中になっていた頃、1932年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルを獲ったバロン西の話しを乗馬仲間から聞いた。日本で唯一、馬術競技でメダルを獲った人だと。イタリアで買ったウラヌス号との出会い、血統では劣っていたのにもかかわらず番狂わせの優勝をしてアメリカで大絶賛を受けたこと。

その後、硫黄島の戦いで玉砕したとか。米軍は、金メダリストの西中佐を失いたくないあまり必死で投降を呼びかけたとか。しかし、投降呼びかけの話しは創作であったらしい。映画にも全く出てこなかった。

この映画での西中佐は、伊原剛志が演じていたがちょっとミスキャストだった。貴族軍人という感じがしなかった。乗馬のシーンは当然吹き替えだし。それに残念だったのは、その西中佐がアメリカで金メダルを獲った時の回想場面が出てこなかったことだ。栗林中将のアメリカ滞在の回想シーンは何度か出て、それが硫黄島との場面としていい対比になっていたが、バロン西のそれも是非ともハリウッドらしく作って欲しかった。

映画では、バロン西と栗林中将は重要な登場人物として出てくるが、主人公ではなかった。主人公は二宮和也が演ずる徴兵されて嫌々ながら従軍する若い兵士。戦時体制によりパン屋の職を失い、身重の妻を残し硫黄島での従軍生活。意外にこれって当時の日本国民の本音だったと思う。「靖国」「お国のために」「愛国」が、映画のなかで随所に出てきて、当時の日本のいびつな状況を色濃く出している。
また、主人公と知り合う元憲兵の兵士の回想シーンも恐ろしく印象的で現代の右傾化する日本を彷彿とさせた。憲兵隊が、日の丸を掲げていない家を「非国民の家だ」と注意するシーン、まさに最近の情勢を彷彿とさせる。

こんなものをクリント・イーストウッドが?と思うと驚嘆ものだ。それほど日本のことに造詣が深いのだろうか。

どうやって監督をしたのだろうか。言葉の抑揚の違いをどう見分けたのだろうかと疑問に思うが、ハリウッドの凄さを身にしみて味あわされたように思う。栗原中将役の渡辺謙が出演した「SAYURI」でも同じようなものを感じた。その点はこの記事を。

日本人以上に日本を外国人の方が知っているのではと思えてきてしまう。ジャーナリストの安田純平さんは、そういうところを素直に認めていないが、そんな彼でも「硫黄島からの手紙」を観れば、納得するだろう。江戸時代の日本にお歯黒、橙色の灯り、男色があったことを表現できるのは日本人以外の客観的な視点でものを見られる人々ではないのか。

是非ともハリウッドに私の自作小説「白虹、日を貫けり」を映画化して貰いたいものだ。SAYURIのように全編英語版でも構わないので。時代やテーマも、硫黄島やSAYURIとマッチングする。その上、ハリウッドなら日本ならではのタブーを気にせず遠慮なく描ける。

ちなみにこの映画は、大反戦映画だ。日本映画では無理だろう。どうも遠慮がちになって、我が軍を美化してしまう。映画では日本軍のおぞましさを兵士に玉砕を強要するシーンで見事に表している。栗原中将は玉砕に反対で生きて最後まで戦うよう指令を出していたが、その指揮官の指令を無視してまで兵士は玉砕を選ばされる。怒りを最も覚えたシーンだった。

映画のメッセージは、「自ら死を選ぶのは美徳ではない。卑怯者になっても生き延びろ」ということだった。まさにその通りだと思う。特に自殺を安易に選択する日本人の思想は西洋人からすると納得のいかないものなのだろう。ある意味、日本人の精神のもろさを象徴するものだともいえる。そういう視点もあるのだなと納得がいった。


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by masagata2004 | 2006-12-18 23:27 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)
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