小説で地球環境問題を考える Part 3

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1Part 2を読んでください。

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 次の日の朝、由美子は英明と共にクアランコク行きの旅客機の中にいた。成田発のスワレシア航空ファーストクラスの中である。
 成田からスワレシアまで五時間の飛行時間を要する。今は三時間経ったところだ。由美子は機内映画に見入っていたが、英明は隣の席で書類を読んでいる。
 由美子は、搭乗してからずっと気になっていることがあった。それは、この同じ飛行機のどこかに健次がいるに違いないということだ。
 この日、成田からクアランコクへ午前中発つ便はこの便の他には、ないのだ。空港のチェックインカウンターできいて調べたことだ。つまり、健次とクアランコクに着く前に会えるのである。飛行機の中で声をかけて驚かしてやろうと思った。
 映画が終わった。あまり面白くないアメリカ映画だったが、英明と話さずにすむ口実にはなった。映画が、終わったのを見計ってか、英明が話しかけた。
「由美子さん、さっそく、書類に目を通してください。今度のダム建設は、明智物産にとって会社創設以来、最大のプロジェクトになるのですから」
 さっと、由美子のテーブルに分厚い書類の束を置く。
 由美子は、立ち上がった。さっと、通路に出た。
「どこへ行くんです?」
 英明がきく。
「トイレよ。そんなこといちいちきかないで」
 由美子は、英明を尻目にさっさと通路を歩いていく。背後から英明のしつこい視線を感じる。由美子は、ファーストクラスから出た。
 由美子は、思った。健次は、エグゼクティブかエコノミーにいるはずだ。
 由美子は、さっとエグゼクティブの客席を眺めた。ぐっすりと寝ている者、本を読んでいる者、ほけっとしている者、様々だが、どの顔も見覚えのある健次の顔ではなかった。となると、エコノミーの席だ。
 エコノミーに入って、客席に座っている人々を眺める。エコノミーの列は、エグゼクティブやファーストクラスよりも長く、席が多くすし詰め状態だ。由美子は、この状態に驚嘆してしまった。生まれてこのかた、エコノミーといわれる客席に座ったことがなかったからだ。全くこの窮屈さは想像以上だ。こんなところに自分の愛する人は五時間も座らせられているのか! 全く、どういうところで健次は働いてるのかと由美子は怒りを覚えた。
 しばらく通路を歩くと、あ、と見覚えのある顔を見付けた。由美子は、大感激だった。
 由美子は、駆け足をしてその席へ急いだ。
 健次は、通路側の席で雑誌を読んでいた。
「ねえ、その本おもしろい?」
 由美子がそう話しかけると、健次がはっとして由美子を見た。健次は、手に持っていた科学雑誌をぼとっと膝に落とすと言った。
「おい、おまえどうして、こんなところに?」
 おろおろする健次を見て、由美子は得意気に言った。
「あなたと同じ、仕事よ」
「仕事、おまえが?」
「あら悪い。あなたの邪魔をしにきたと思ったの?」
「由美子、おまえって奴は、全くどういう女なんだ。今度の仕事は、研究所にとって歴史に名を残すほどのことかも知れないんだぞ!」
「わたしより仕事のほうが大事だって言うの、健次」
 健次は、どうもその言葉に弱い。
「いや、そう言うわけじゃないんだが・・」
と健次が困っていると、隣に座っている男が、健次の肩を叩き言った。
「うー、いいね、彼女がスワレシアまでついてきてくれるなんて。健次、羨ましいぞ」
「おい、堀田、こんなところでからかうなよ」
 堀田は、健次の同僚であり親友だ。由美子もハワイで会ったことがあり、堀田をよく知っていた。由美子は、堀田に微笑んだ。
「ねえ、クアランコクに着いたら、どこに泊まるの。ホテルの名前教えて」
「駄目だ。教えたら、押しかけるつもりだろう」
「あ、僕達、クアランコク・パレス・ホテルに泊まります」
と堀田が言った。
「おい、堀田、何言いやがるんだ!」
 健次は、困った顔をしたが、堀田は笑っている。
「まあ、素敵、わたしと同じホテルよ。また会いに行けるわね、健次」
「おい、おい!」
 由美子は健次の困り果てた姿を尻目に、その場を笑いながら立ち去っていった。由美子は思った。クアランコクの滞在は、これまでになく刺激的なものになるだろう。

 飛行機は、クアランコク国際空港に着陸した。時差は日本より一時間遅いだけとたいして変わりがない。成田を発ったのが、朝早くで、五時間経った今、現地は真っ昼間だ。
 出口を出、タラップを下りると、そこから強い日差しに真夏の日本に匹敵する暑さと湿気が、体全体を覆った。ここは東南アジア特有の熱帯雨林気候なのである。
 由実子は、こんな気候にはハワイにいたときから慣れ切っていた。ここの方が湿気が強いのだが、また、ハワイに戻ってきたような気分になり心地良かった。
 英明は、飛行機の出口を出たと同時にサングラスをかけ、強い日差しを避けるかのように下を向いて歩いた。ハワイにいたときと同じ行動だ。
 到着ロビーを出ると、黒いリムジンが出迎えに来た。
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肌の浅黒い現地の運転手が、由美子と英明の荷物をトランクに入れ、ドアを開けた。
 由美子と英明は、乗り込んだ。
 リムジンが発車した。由美子は、走りながら窓の外を眺めた。
 古く黒いしみ塗れたビルがあると思うと、そのビルとビルの間にトタン屋根で作った掘っ立て小屋がある。まさにスラムだ。通りには、ぼろぼろの服を着た子供や年老いた女性が物乞いをしている。由美子は、東南アジアの小国スワレシアについて知っているだけのことを思い出した。
 スワレシアは、発展目覚ましいアジアの新興工業国として最近世界中の注目を浴びているが、まだまだ第三世界と呼ばれる貧しい発展途上の国々の一つである。
 この国は、かつてイギリスの植民地であった。第二次世界大戦中は、日本の占領下におかれ、戦争が終わったあとに再びイギリス領に戻るが、戦後の植民地独立運動のうねりを受け、一九六○年代一つの主権国家として独立した。
 現在は、大統領マラティール・モハメド氏の元、経済開発が振興され、かつての日本のような高度成長を続けている。
 人口は、日本のほぼ半分の六千万人、国土は日本とほぼ同じ大きさだ。しかし、GNP(国民総生産)は、日本の二十分の一にも満たない。国民の平均賃金は、日本の十五分の一と安く、そのため日本や欧米の企業がその安い労働力を求め生産工場をたくさん進出させている。スワレシア政府は大歓迎である。進出する外国企業には、数々の優遇措置をとっており、その一つに、先進国では厳しい環境保全基準がここでは緩いということがあげられる。        
 工業化にともない都市の人口は急増している。このスワレシアの首都クアランコクは、人口五百万の大都市だ。だが、その半数近くの住民はスラム街に住んでいるのが現状だ。。
 農業が衰退していき、多くの人々があぶれ都市に職を求めて来るのだが、そんなに多く職があるわけではない。職の見つからない者達は、スラム街に住むことを余義なくされる。
 リムジンは、クアランコクの中心街に来た。ここでは、空港近くのスラム街とは、うって変わり、近代的な高層や超高層ビルが立ち並ぶ姿が眺められる。
 この辺りの光景は、日本と全く変わらないといっていい。東京の丸ノ内か新宿に戻ったような気分だ。ここは、発展するスワレシア経済を象徴する風景といえる。
 あ、と驚く建物が目に映った。このビルは、超高層ビル群の中でも、ひときわ高くそびえ立っている。それも二つのビルが同じ高さで並ぶツインである。頂上の部分が、二つ揃ってとんがった円錐形になっている。ビル全体が、まるで二本のボールペンを立てたような形になっているのだ。
「明智物産が建てたのですよ。クアランコクタワーと言います。地上百階、高さは五百二十メートル、完成したばかりです。これは、高さでは世界一の超高層ビルです」
 英明が、すぐ側で耳打つように言った。
「何ですって、こんな大きいビルを!」
「今さら何を驚いているんですか。スワレシアは、高度経済成長の真っ只中にいる国です。二十一世紀中には、先進国の仲間入りするといわれています。そして、我が明智物産はスワレシアの経済に多大な貢献をしているのです。明後日にマラティール大統領を招いてオープニングセレモニーが開かれます。私達も出席するんですよ、由美子さん」
 由美子は、衝撃を覚えていた。もうスワレシアという国では、日本やアメリカをしのぐ超高層ビルが建造されている。それも、自分の父親の会社が建てたのだ。東南アジアの小国いう印象を持っていたが、こんなビルがあっては発展途上国となんていってられない。
同時に驚いたのは、父の会社がこんなビルを建てる大事業を成し遂げたことだ。変な話し、父が事業家だということは知っていたが、ここまでのことをする会社の社長だったとは思いも寄らなかった。それだけ由美子は父親の会社について興味がなかった。由美子は、父、清太郎のことを初めて知ったような気がした。
 リムジンは、クアランコク・パレス・ホテルに着いた。

 由美子と英明は、最上階のスイートルームに案内された。部屋は別々で、由美子のスイートルームと英明のスイートルームは、同じ階の別の端々にあった。互いの部屋の間には百メートル近い距離があった。
 英明が、由美子の心理を見抜いていたのか、それは結構な計らいだと由美子は思った。
 由美子は、部屋に入ると、さっそく、電話の受話器を取りフロントにつないだ。
 由美子は、英語で言った。
『ハロー、わたし、ミスター・堀田とお話したいのですが、つないでいただけますか?』
 しばらくして、堀田につながった。
『やあ、由美子さんだね。健次なら僕と同じ部屋だ。どうだい、邪魔しに来たいだろう?』
『もちろんよ。そこは何階の何号室?』
 電話の置かれたテーブルの下に盗聴器が仕掛けられていることを由美子は知らなかった。
 百メートル離れたスイートルームで英明は由美子の話し声を聞いていた。このホテルは、明智物産が所有するホテルである。この程度の計らいなどたやすかった。

Part 4へつづく。
by masagata2004 | 2007-03-29 00:09 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)
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