小説で地球環境問題を考える Part 7

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 6を読んでください。

 集会の場所は、ホテルからタクシーで十分ほど行ったところにある市民会館だった。数百人くらいが入れる広さの講堂が使われていた。集まったのは、森の近くに住む農民たちだ。
 講堂の演壇では、集会のリーダーを務めるスワレシア人の中年男性が、演説を振っていた。
 由美子と健次と堀田は、席に座って中年男性の話に耳を傾けていた。
 演説は、政府公用語の英語と違い、地元の人たちが日常話すスワレシア語で行なわれている。
 堀田が、由美子と健次の通訳をしていた。堀田は、仕事で五年ほどスワレシアに住んでいた経験があり、そのためスワレシア語が理解できる。
「新しいダムができるとなると、私たちは土地を奪われ農業をやめなければいけなくなる。開発だとか国の経済のためだといって、似たようなことがこの国の各地で起っている。その度に、私たちの平和な生活は脅かされてるのだ。もうこれ以上我慢はできん。今こそ政府と対決すべきだ!」
と男は、大声を張り上げて言う。
「オー!」
と応える大声のかけ声が、講堂に響いた。
 
「いいか、明日、世界一だといわれるのっぽビルのオープニング・セレモニーにマラティール大統領が来る。あのビルに乗り込んで直接訴えてやるんだ!」
 由美子は、その式典に自分も出席する予定であることを思い出した。
 ガタン、っとドアの開く大きな音がした。それはあまりに大きく突然で、聴衆も演壇の男も、その場でぴたりと黙ってしまった。
 全員、入り口のドアの方を向いた。一人の男が立っている。若い体格のがっしりとした肌は茶褐色の男だ。現地の人のようだが、様相が全く異なる。
 何とも奇妙な格好をしている。現地の人々と違いシャツとズボンという服は着ていない。髪の毛は、両側を剃っているが、長くのばし背中で結んで垂らしている。着ているものは、上半身裸に腰巻きだけだ。首と腕に独特の模様をほどこした飾りを身につけている。足は裸足だ。まるで原始時代の人間の姿を思わせる。
 いったい、何者だという感じで皆、彼を見つめている。
 由美子は、ふと彼のような男の姿に見覚えがあると思った。確か、大学で写真を見て習ったことがある。世界の先住民の一員としてでだ。
「おまえ、何者だ。ペタンの者か?」
と演壇の中年男は英語で話しかけた。
 ペタン、それが、その民族の名前だったと由美子は思い出した。スワレシアの森に住む人達だ。一万年以上も前からの狩猟採集生活を守り続け、生きている人々で世界的にも、とても珍しい。スワレシアでは、人口の○.一パーセントにも満たず、彼らは熱帯雨林の中を移動して生活するため、現地の人々でもそんなに滅多に会うことはない。
「ペタン、ペタン?」
 そう小声で話す声が、各所で聞こえた。
「イエス・アイ・アム・ペタン。ネイム・イズ・ゲンパ」
 ペタンのゲンパという名前の人だと、たどたどしい英語で言っている。
「君はいったい、何の用でここにきた?」
 演壇の男は聞く。
「君たちと一緒に戦いたい。一緒に政府と戦いたい」 
「君と私達の戦いとどういう関係があるんだ」
と演壇の男はゲンパにきく。
「私たちは、森で暮らす者だ。今度政府がダムを作るから、森から出ていけと言われた。私たちは、はるか昔から森で暮らす者だ。森以外のところに住めない。住みかがどんどん減ってみんな死ぬかもしれない。だから、戦いたいんだ」
 聴衆が、騒めいた。
 由美子は、席から立ち上がった。自分も何か言わなくては。実際、そのために来たのだ。自分の会社の建てるダムのために多くの人々が苦しんでいる。自分が、彼らと一緒になって戦ってやるといえば、皆、心強いと思うかもしれない。図々しいと思われるかもしれないが、やってみようと考えた。
 ガタン、とまたドアの開く音がした。今度も何事だと人々は振り向く。すると、どっと黒い服を着た人々が波のように入ってきた。警察官たちだ。
「皆、そこを動くな。君達を逮捕する」
 警官隊のリーダーらしき男がそう叫んだ。
「なんで、逮捕されるんだ。おれたちは集会してるだけだぞ」
 演壇の男が言った。
[この集会の内容は、国家安全破壊防止法違反に当たる。よって、全員逮捕だ!」
 警察官二人が、演壇に上がり、男の両腕をつかんだ。
「やめろ、放せ。集会の自由を犯すな。何をする!」
 男は、床にひれ伏され、さっと背中で手錠をかけられた。
 警官隊は、銃とこん棒を出し、次々と聴衆を捕まえ、手錠をはめていく。抵抗する者も出、講堂の中は格闘ばかりの騒然な雰囲気となった。
「由美子、逃げよう」
 健次は、由美子の手を引いた。と、そのとき、バシっと、いう音がした。
「堀田!」
 健次が叫んだ。堀田がこん棒で肩を打たれたのだ。気を失って、床に倒れた。
「堀田さん!」
 由美子が叫んだ。
 突然、大男の警官が、がっと由美子と健次に体当たりし、覆いかぶさった。

一時間後
 由美子と健次と堀田は、警察署の一室でソファに座っていた。
 堀田は、気を失っただけで怪我はなかった。三人とも市民会館の講堂にいた村人と共に逮捕連行されたが、自分達が日本人と分かると即座、釈放された。
「俺は他の奴らと一緒に留置場に入るぞ。俺も仲間だ。こんなことは許されん。市民が政府の横暴に反発して何が悪い」
と健次が、目の前の小太りな警察署長に言った。
 由美子も、言った。
「そうだわ。こんなことは許されるはずないわ。みんな、ダムが建設されると生活に困るから、団結したんじゃありませんか。私たちだけでなく、みんなを釈放してください」
 すると、署長は言った。
「あなたたち、日本の人には関係ないことです。これはスワレシアの法律に基づいてやったことなのです。政府は、国家の安全を乱す行為があれば、それを未然に防ぐ義務があります。今度のことも、通産大臣からの命令によってなされたものです」
「通産大臣がですか?」
「そうです。明日はクアランコクタワービルのオープニング・セレモニーがあります。大統領が出席されるなか、奴らが乱闘してきては、たまりませんからな。そのうえ、産業発展のために大事なダム建設の妨害をしようとしています。これは立派な国家安全破壊防止法違反です」
 警察署長は、由美子たちをにらみながら熱弁を放った。
「でも、村の人は自分たちの生活を守る権利があります。ダム建設こそ、村人の生活を脅かす破壊行為では?」
 由美子も、負けずに熱をあげて言い返した。
「悪いですけど、お嬢さん。私とは、そのような議論はしないでほしい。するのなら大臣や官僚たちとしてください。私は命令に従っただけですからね。とにかく、あなたたちにはここを出ていってもらいます。日本に帰るなり自由にしてください。こっちはあなたたちの世話などしている暇はないのです。あまり世話をやかすと強制退去命令を出して日本に無理にでも帰させますよ」
 さっと、周りを取り囲むように三人の警官が来た。由美子たちは、それぞれ腕を引っ張られ警察署の外へ出された。   
「ちくしょう! 何しやがるんだ。俺は留置場に残ると言ってるんだ」
 健次が、玄関に向かって叫び声を上げた。
「おい、健次、さっさと帰ろうぜ。俺たちにできることなんてなんにもないんだ」
と堀田が言った。
「何言ってんだ! 何かすべきだ。それが正義というもんだ」
 その時、すっと目の前に黒いリムジンが停まった。
 一人の男が、後部のドアを開けて出てきた。
「由美子さん、ご無事でなによりです。迎えに参りました」
 英明だ。そっけない口調だ。
「わたし、帰らないわ」
 由美子は、英明をにらんで言った。
「いいえ、どうしても帰ってもらいます。明日は大事なクアランコクタワービルのオープニングセレモニーがあるのですから。あなたはお父さまの代理として出席する義務があります」
 由美子は、英明の言葉にはっとした。クアランコクタワービルのオープニング・セレモニー!
 由美子は、自分からさっとリムジンに乗りこんだ。英明が、後に続いてリムジンに入ろうとする。
「待って、健次と堀田さんも一緒に入れて、同じホテルに泊まってるんだから」
と相変わらず英明に睨みをきかせ由美子は言った。

Part 8につづく。
by masagata2004 | 2007-05-25 21:41 | 環境問題を考える


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