小説で地球環境問題を考える Part 13

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 12を読んでください。

 由美子は、目を覚ますと、服を着たままベッドの上で寝そべっていた自分に気付いた。もう朝だ。窓からまぶしい朝陽が入り込んでいた。
 時計を見ると午前六時だった。しまった、と思った。この時間にロビーでみんなと待ち会わせる予定だったのだ。
 とにかく、起き上がった。急いでバスルームに駆け込んだ。服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
 五分ほどして、シャワーを止めると、タオルで体をさっと拭きバスルームを出た。
 新しい服に着替えながら、昨夜のことを思い出していた。昨夜は、夕食の後、部屋に戻って、ずっと健次を待っていたのだ。
 だが、待てども、なかなか彼は現れなかった。気が付くとベッドの上で自分は寝込んでしまっていた。
 どうしたのだろう。忘れてしまったのか?もしかしたらそうかもしれない。昨夜は、皆疲れ切っていた。前日の森の探索に続き、サンプルの分析と今日の探索計画の打ち合わせが続き、心身ともに神経を張り詰めた状態にいた。自分だって、待ちながら寝込んでしまったほどだ。きっと健次も、ちょっと休むつもりが、朝まで寝込んでしまったのだろうと思った。
 とにかく、急いで、ロビーに行くことにした。みんなが待っている。そこに健次も来ているはずだ。
 服を着終わると、由美子は走ってスイートルームを出た。
 エレベーターに乗りロビー階のボタンを押した。エレベーターは、どんどん下に下がっていく。
 由美子は、心配になった。腕時計を見ると、約束の時間より十五分も遅れている。健次は、時間にうるさい男だ。もしかしして、自分を置いて隊員達とさっさと出かけていったのかもしれない。
 エレベーターがロビー階に着くと、さっと降り走った。
 見覚えのある仲間たちが立っているのが見える。
「おはよう。みんな、ごめんなさい。遅れてしまって」
 由美子は、苦笑いをしながら、みんなに声をかけた。
「あ、おはよう、由美子さん。あれ、健次は、一緒じゃないのかな?」
 堀田が顔をしかめて言った。
「え、彼、まだ来てないの?」
 見ると、皆来ているのに、健次は、ここにいない。
「由美子さんとずっと一緒だと思ってたんだがな?」
「え? 昨日の夜、わたし、ずっと待ってたけど、彼来なかったのよ。堀田さん、健次と同じ部屋だったんでしょ?」
「ええ、でも、健次は、僕が部屋に戻ったときにはいなくて、てっきり、由美子さんの部屋に行ったのかと・・」
 皆、騒然となった。大事なグループのリーダーが行方不明となったのだ。

 健次は目を覚ました。顔に水滴がぽとっと落ちたのを感じた。
 は、ここはどこだ? 自分は体を横たわらしている。体の下には、草や葉で作られた敷き布団のようなものがあるのを感じる。目を開き真上に見えるものは空ではない。木の枝と葉で作られた天井のようだ。ここは、人間の作った小屋の中のようだ。作りはかなり原始的だ。辺りは暗くない。もう夜中ではなく、昼になっているようだ。
 ザー、ザー、と激しい雨の降り注ぐ音が聞こえる。これは熱帯地方特有の雨、スコールだ。短時間に滝のように降り注ぐ大雨だ。
 ポタ、ポタっと、水滴が健次の顔に落ちてきた。雨漏りだ。天井から、水の雫がどんどん落ちてくる。健次は、体を動かして、よけようとした。だが、体が思うように動かない。体が、重くて動きにくいのだ。何だか体中に熱を感じる。かなり気分が悪い。
 ああ、そうだ、自分は、コブラに噛まれ死にかけているのだ。もうだめだ。誰がこんなところに連れてきたのか知らないが、自分はすでに死ぬ身にあるのだ。死の恐怖が、健次を襲った。
「目を覚ましたのかい? 大丈夫かい?」
と英語で、誰かが自分に話しかける声が聞こえた。誰だ? と思いつつ、健次は、力を振り絞り叫んだ。
「ノー、ヘルプ、ミー」
 その人物は、健次の体をさっと動かした。すると、雨漏りの水滴が、顔に当たらなくなった。     
「すまないな。天井に穴が開いてしまって。ところで気分は、良くなったかい。そうだ、もう一杯薬を飲ましてやるよ。まだ、気分は悪いだろうが、じきに良くなるさ。この薬は効くんだから。現に、今生きていられるのもこの薬のおかげさ」
 健次の口に男が木でできたコップのようなものを近付ける。健次は喉が乾いていたせいか何の抵抗もなく口を開くと、コップからどろっとした液体のようなものが流し込まれた。味を感じる前に、どんどん口から喉へと流れていく。
 健次は、目を開き男の顔を見た。気分が悪いから、ぼんやりとしか見えないのだが、この男の顔には見覚えがある。どこかで会ったことがあるはずだ。目、鼻、口などの細かい部分がぼやけていても、輪郭、それに頭の両側を剃り真ん中でまとめた特徴ある髪型には、見覚えがある。
「ゲンパ、ゲンパだろ。俺、君をクアランコクの市民会館で見たよ。やはりここに住んでいるんだな。ところでだが、どうして俺はここにいるんだ? 俺は蛇に噛まれたはずだが、どうなったんだ?」
と健次は英語で話しかけた。
 ゲンパは、言った。
「君が、蛇に噛まれて死にそうだったところをたまたま仲間が見つけた。急いで、薬を飲ませ、解毒した。今、毒は消えたが、体の痺れだけが残り苦しいんだ。だが、それもじきに治まる。安心してくれ」
「コブラの毒を解毒したのか」
「そうだ、我々部族が古くから使っているものだ。草をまぶし液体にしたものだ。コブラの解毒だけじゃなく、他のいろいろなな病気になったときに効く」
「何だって、血清ではなくコブラの毒を解毒する薬を草から取ったって? そんな草どこに生えているんだ?」
「木に登ると見つかるさ。木の上の方にある枝に生えてる草さ」
「木の上に草が生えている? そうか、鳥や風が種を運び空から落ちてきて寄生する植物だな!」
 健次は、ついさっきまで重苦しかった体と気分がどんどん軽くなっていくのを感じた。

 由美子は、スイートルームで窓の景色を眺めていた。
 激しい雨が、降りしきっている。そのスコールを見ながら、抑えがきかないほど不安な気持ちで一杯だった。
 今朝は、大混乱だった。ホテル中を探し回ったが、見つからなかった。警察を呼ぼうとも思ったが、騒ぎを大きくするのは良くない。何か特別な事情があって、健次が伝言を残さずどこかに出かけたとも考えられるのだ。
 いずれ由美子か隊員の誰かに連絡を入れるかもしれない。今日一日はそれを待とう。そういう結論になり、当然のこと、今日の森林探索は中止となり、一同は健次からの連絡を待つこととなった。
 由美子は、嫌な予感がしてならなかった。今回の森林探索は、当初から様々なことが絡み合い、きな臭い雰囲気が常につきまとうのだ。
 まさか、健次の身にとんでもないことが? 由美子は、目から涙がこぼれてきそうだった。ハワイで過ごした健次との日々が思い浮かべられる。楽しかった二人だけの思い出が。まさか、まさか。

 健次は、気分がすっかり良くなり、ゲンパと顔を向き合いながら座っていた。空は、真っ赤に焼けていて今は夕方だ。腹が減っているのを感じてきたる。むんむんと湿気をたっぷり含んだ生暖かい空気が体を包んできて、とても心地よい。そんな心地良さが空腹感を誘う。
b0017892_211189.jpg

 健次は思った。今まで、何度かインフルエンザや胃潰瘍などで病気をしてきたが、その後の病み上がりの状態が、今以上に心地良かったことはない。数倍の解放感を感じるのだ。コブラの毒から解放されただけでなく、体の他の部分も癒されたような気分だ。むしろ、以前よりも体の状態は良くなった感じがする。自分が飲まされた草の薬は、ただならぬものだと確信した。
「ゲンパ、こんな薬があったことをどうして君達は世間に知らせなかったんだ? コブラの毒を血清以外に解毒できる薬が森の木の上にあったなんて!」
 健次は感動を込めて言った。
「僕達にとっては、毎日、普通に使っている薬草さ。外の人達が珍しがるとも思えない」
「ああ、そうだな。だが、もしこの薬草にとんでもない効果があれば、君たちの住む森も守れるかもしれない」
「さあ、ケンジ、腹が減ってるだろう。妻と母ちゃんが、おいしい夕飯をこしらえてやる。明日になれば、おまえを町へ帰してやるからな。その前に元気をつけるんだ」
 健次は思った。何が何でもゲンパ達の住むこの森を守らなければ!

Part 14につづく。
by masagata2004 | 2007-08-28 21:40 | 環境問題を考える | Comments(0)


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