小説で地球環境問題を考える Part 14 

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 13を読んでください。

 次の日の昼、由美子と隊員一行は、現地の警察に健次の捜索願いを出す決心をした。もう丸一日以上行方不明なのだ。健次の身に、とんでもないことが起こったとしか考えられない。
 由美子たちは、警察署に向かおうとした。
 その時だった。ロビーの玄関前で、思わぬ事が起こった。
「由美子!」
 由美子は、その声に振り向いた。
「健次!」
 そこにいたのは、まさしく健次だった。ずっと行方を心配していた健次なのだ。
「あなた、どこにいたの。みんな、ずっと心配してたのよ」
 由美子は、目から涙がこぼれてきた。さっと、健次に抱きついた。
「由美子、そんなに泣くなよ。俺は、どうにもなっちゃいないぜ。それよりも、おかげでいい発見をしたんだ。もしかすると、あの森を守れるかもしれない」
 健次は、手に草をたくさん詰めた大きな麻袋を持っていた。

 健次は、由美子と調査隊員の前で、こう説明した。
 健次が夜になって急に森へ行きたくなり、車を飛ばして森に着いた。ところが、森の中でコブラに咬まれてしまい、死にかけたが、ペタン族のゲンパに出会い、この草をすりつぶした液を飲ませてもらい命をとりとめ助かったこと。
 この草は、あの森林の木の上の方に着生する雑草でかなりたくさんあること。コブラの毒を血清に変わって解毒できたほどだから、何か他に医学的な効用があるかもしれないのと考えたこと。
 皆、由美子も含め健次の話に唖然としていた。いくら健次が無鉄砲な性分の男だとしても、暗い夜にあの森まで行くのだろうか。それに、こんな雑草みたいな草が、本当にコブラの毒を解毒できたのだろうか?
 健次は、それがいきさつだと、必死で弁明した。今は、皆に余計な心配をかけたくなかった。自分が、襲われ殺されかけたなどと聞けば不安がるに違いない。そんなことよりも大事なことが、あるのだ。急いで、この草の成分を分析して新薬としての有効性を証明しなければならない。コブラの毒の解毒以外にも、様々な可能性が秘められているこの草を。
 
 健次と由美子は、ミィーティングが終わった後、夕食を食べに外へ出ることにした。今夜は、二人でクアランコクにある有名な郷土料理の店に行くことにした。
 ホテルのミィーティングルームを出て、廊下を歩いていたところで、背広にネクタイを身にまとった英明に出くわした。b0017892_2212929.jpg健次にとっては、ハワイでの悪酔い騒動以来の再会なので、気まずく目を合わせないようにした。二人は話すこともないと挨拶もせず通り過ぎようとした。
「今晩は。由美子さん、健次くん、お二人でお出かけですか」
 英明の方から話しかけてきた。
「そうよ。何か問題でも」
と由美子は、つっけんどんに言い返した。すると、英明は、澄ました顔で健次に向かって言った。
「健次くん、勝手に僕の婚約者に手を出さないでほしい。君のようなゲスな奴は、由美子さんにはふさわしくない」
「何が婚約者ですって! 勝手な勘違いはしないで!」
 由美子は、怒りをこめ叫んだ。
「由美子さん、あなた何をやってるのか知りませんが、どうあがいたって、計画通り来月にはあの森は切り倒されます。この男と一緒にいたって、事態は変わりませんよ。言ってるでしょう。僕と結婚をすれば、森の一つぐらい差し上げるって」
 何て男だ! 健次の前で、こんなことを口にするなんて。由美子は、この場で英明を殴りたかった。
「健次、行きましょう。こんな人、相手にしてられないわ」
 由美子は、健次の手を引っ張った。健次は、引っ張られながら英明に向かって得意気に言った。
「英明さん、残念ながら、あの森自身の力で、あの森は守れそうですよ。あなた達の悪企みなんか、おじゃんになりますからみててください」 

 レストランの料理は、とてもおいしかった。ここは、クラランコク一おいしい民族料理のレストランなのだ。東南アジアの料理は、主に辛いのが中心である。外の気温が暑いので、体をさらに熱くする食事をし、体感的に涼もうというわけだ。由美子と健次は、レストランの料理を口にほうばりながら会話を楽しんでいた。会話の内容は、主に二人のハワイ時代のことだった。
 だが、デザートを食べる頃になって、由美子は、真剣な表情になり健次に言った。デザートは、パイナップルに似ているが強烈な臭さを放つこの地方特有の果物ドリアンである
b0017892_219339.jpg

「健次、さっき、みんなの前で、昨日から行方不明だったのは、思いつきで森に行ったからだなんて言ってたけど。そんなの嘘でしょう。一体、何があったの? わたしには正直におしえて」
 健次は、どきっとした。口に運ぼうとしていたドリアンの一片を皿の上に戻した。そして、しばらく考えこんで言った。
「由美子、おまえやみんなには、心配かけたくなかったから言うつもりはなかったが、実を言うと・・・」
と今までの本当のいきさつを、二日前の夜、ホテルの部屋で起こったことから、ありのままを話した。
「そんな、いったい、誰が?」
と由美子は、驚きのあまり唇を震わせ言った。
「わからない。だが、あの森にまつわることには、やたらとキナ臭い匂いが漂っている。誰かが俺を消してでも、何かを成し遂げようとしている。そんなとんでもない陰謀が渦巻いているような、そんな匂いがしてくるんだ」
 安藤は、皮肉にもそんなことを言いながら鼻をつくドリアンの匂いが気になってしかたなかった。ドリアンは食べるとおいしいのだが、匂いは排泄物のようで最悪だ。
 由美子の方は、健次の身に起った話しを聞いて驚き、匂いなど気にならなかった。気になるのは、どうしてそんなことが健次に起こったかだ。
「それって、ダム建設のこと? じゃあ、お父さんの会社が?」
「わかんないさ、勝手に決め付けるのはよそう。とりあえず、今は、せっかく見付けた、あの草を徹底研究することに賭けるんだ。今はそれだけに賭けてみればいい。明日は多忙しになるぞ。もう一度、森に行き、ゲンパに会って、もっと草のサンプルを採ってくるんだ。また、あの草だけじゃなく、他にもいい植物を知っているかもしれない。そして、サンプルを研究所に持っていき、そこで・」
「やめて、健次。明日は、わたしとずっと一緒にいて。森の探索や草の研究のことは、堀田さんや他の人達に任せてもらえないかしら。私達、もう一ヵ月以上もゆっくりできる日がなかったわ。あなたは仕事ばかりで、それに危険な目に遭ったりして。だから、明日は二人で一日中過ごしたいの。わたしのお願いってわがままかしら」
 由美子の必死にせがむ言葉を聞きながら、健次は、由美子の目を見つめ、そっと微笑んで言った。
「ああ、分かったよ。ゆっくりしよう」

Part 15へつづく。
by masagata2004 | 2007-09-16 20:53 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)
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