小説で地球環境問題を考える Part 16

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 15を読んでください。


 到着ターミナルを出てタクシーに飛び乗った。タクシーは、清太郎のいる野村総合病院に向かう。
 一時間後、タクシーは、都心にある野村総合病院に着いた。
 ここには、この病院の院長であり、父の主治医である野村医師がいる。タクシーから飛び出た。受け付けに行き、清太郎の病室をきいた。
 エレベーターに飛び乗り、病室へ向かった。エレベーターがその階に着くと、由美子は走った。
 本当は、体ががたがたに疲れていることを知っている。五時間以上に及ぶ飛行時間に空港についてからは走ることばかりだ。身も心も焦りで一杯だった。
 病室に着いた。さっと扉を開けた。この病院の最上階にある広い特別室である。
「お父さん!」
 由美子は、大声で叫んだ。 
 中には、主治医の野村とベッドに横たわる父、清太郎がいた。
「由美子、どうしたんだ・・」
と清太郎が息の詰まったような声で言った。清太郎は、毛布から首を出した状態だった。顔色はとても青白い。
「お父さん、わたし心配で、倒れたって聞いたものだから」
 由美子は、涙を流した。
「何を大袈裟な。単なる疲れが溜まって起こった失神だ」
 清太郎は、言った。
「でも、こんなに顔色が悪くて」
 由美子は、父の顔に近付いた。
「由美子さん、大丈夫です。主治医の私が保障します。ただの貧血です。一週間もすれば回復なさいますよ」
「その通りだ、由美子、先生を信じるんだ。だから、こんなところでほっつかないで、スワレシアに戻るんだ。おまえは明智物産の跡取りなんだぞ」
 全く、こんな時まで、会社のことを持ち出すとは父らしい。
「でも、わたしはお父さんの娘よ。お父さんのことが心配なの。わたし、今はずっとついていてあげたいの」
 由美子は、必死で叫んだ。
「全く、体が疲れて休んでいるときに、大声出すな」
 清太郎は、小声でめんどくさそうに言った。
「由美子さん、その通りですよ。お父さまを休ませてあげましょう」
と野村は微笑みながら言い、由美子の肩に手を置き、
「外に出ましょう」
と体を押した。
 野村と由美子は、病室を出た。
「先生、わたし何だか信じられません。父がただの貧血だなんて。父は、今までどんなことがあっても倒れたりする人ではなかったのですから」
 野村医師の顔は、さっきまでとはうって変わり、堅く重苦しそうになった。その表情は、由美子にとてつもない不安感を与えた。 

 それから一時間後、病院の診察室に、由美子と野村はいた。
 野村は、蛍光板に照らされたレントゲン写真を見ながら言った。
「そうですね。話すべきでしょう。あなたが明智さんにとって、唯一の肉親であるかぎり」
 由美子は、一時間の間、野村を説得し続けたのであった。最初は、何もない、ただの貧血ですよと言い通した野村も、由美子のしつこいまでの熱意に負けてしまったのか、事実を語る決心をしたのだ。
「お父さまは、ガンです。それもかなり末期です。胃を中心として体中に転移しています。はっきり言って、ここまでくると手のほどこしようがありません」
 ぐいっと、由美子の胸に剣を指すような衝撃が走った。まさかと思っていたが、こんなことだったとは。
「それでは、父は、もう・・」
 由美子は、声を出すのでさえ、苦痛になった。
「残念ながら、あと一ヵ月もてばいいところでしょう。病状の悪化が予想以上に進行しています」
「そんな」
 由美子の目から涙がぼろぼろと湯水のようにこぼれ落ちた。
 
 健次は、由美子が突然クワランコクを発った理由を真理子から聞いた。健次は訳も分からず動揺していた。
 安藤は、由美子の父、明智清太郎には一度も会ったことはない。写真は何度か見たことはある。由美子の持ってる写真と新聞や雑誌に財界の著名人として載る写真だ。
 健次はただのサラリーマンの家の出、由美子に比べるとはるかに貧しい家庭で育った。由美子と二人でいるときは、そんな違いなど感じずにいた。健次にとって由美子は一人の女性でしかなかったのだ。健次は、その由美子という女性に引かれ、二人の世界だけを考え付き合ってきた。
 健次は国立大学の薬学部を出た薬理学者だが、所詮は製薬会社に雇われているしがない研究員にすぎない。
 だからといって、そのことで由美子への気持ちが変わるわけではない。ただ、由美子が心配だ。そして、もちろんのこと由美子の父、明智清太郎もだ。
 明智清太郎が、死んでしまうようなことはあってはならないと思った。まだ一度も明智清太郎とは会ってないのだ。会って自分の気持ちを伝えたい。自分、健次が由美子を心から愛していることを、そして、彼女を妻にしたいとさえ思っていることを。
 今すぐにでも、由美子と病床の明智清太郎のそばに行きたかった。だが、今手を付けている研究もほっておけない。あともう少しなのだ。今とても大事な時なのだ。すぐにでも、研究結果を出せれば自分は、日本に戻り、由美子と明智清太郎のもとへ向かう。
 健次は、その決意を心に刻んだ。そして、その気持ちを紙に書き、ファックスで由美子の東京の実家へ送った。

 東京では、そのファックスを家政婦が受け取り、病院で父親に付き添う由美子に渡した。由美子は、涙を流しながら、健次の手紙を読んだ。

 次の日、昨晩から徹夜で過ごした健次は、腹が減り、大学近くのレストランに出向いた。実際、そんな外へ出る時間も惜しいくらいだったが、腹の中はからからで、そのため神経を集中することが、ままならない状態だったのだ。決してそんな状態で、顕微鏡に目を通しても、確かな情報を得ることはできない。自分の情熱から来る無理が、裏目に出ることを恐れた。
 来たレストランは、東南アジア風のファーストフードを出す店といったところだろうか、米と卵と鶏肉を混ぜたような軽い食事が渡される。b0017892_20371246.jpg店は出勤前の現地の人々で溢れかえっていた。
 健次は、ほっと一息をついて、店の外の路上に置かれた、テーブルの席に着いた。
 健次は、ゲンパから知らされた木の上の方に寄生して生える草のことを思い返していた。
 調査隊は、これまで思わぬ場所を見逃していたように思う。たいてい熱帯雨林で動植物を探すというと地面からだ。しかし、意外に地面では熱帯雨林の多種性を見るのは難しい。というのは、熱帯雨林ではフタバガキのような大木が支配力を持つ。土の栄養分は雨でほとんど溶け出されてしまうためあまり多くが残らない。残ったわずかな栄養分は、どっしりと根を下ろした大木の根によって吸い取られてしまう。そうなると、他の植物が生き延びる方法は大木に寄生し大木の栄養分をもらい分けすることだ。草花などの小さな植物は大木の周りか枝などに根付いている。外からは鬱蒼としているようで熱帯雨林の木と木の間の地面は、意外にもすっきりしているのはそのためだ。
b0017892_20541496.jpg

 ゲンパから渡された草は木の上方、樹冠と呼ばれる幹のてっぺんで何本もの枝が花が開くように広がっている場所だ。高さは六十メートル以上もある。そこには風や鳥によって運ばれる様々な植物の種が着生している。
 健次の調査隊の医薬品原料探索は、主に大木の周りの地面に生える植物や、それに群がる昆虫や菌類などをサンプル対象としていた。最も、いか仕方ないことである。六十メートル以上の高さの場所を探索することは非常に難しいのだ。

 健次は鶏肉を口に入れようとした瞬間、思わぬ人物に出会った。
「おはよう、健次くん」
 人を小バカにしたような口調、蒸し暑い外でもビジネスマンらしく背広とネクタイのスーツをまとう男、石田英明だ。
「おはようございます」
と健次はわざとらしく丁寧に言い返し、英明と目を向け合った。英明の人を見下すような目つきに対抗するためだ。英明は今サングラスをしているが、隠れたそのいびつな目線は何となく感じ取られる。
「ゆったりと朝食かね。いい薬草でも見つけて熱帯雨林を救うんだなんて言い切ったわりには、のんびりしてるね」
「何か用かい? あんたもここに食事をしに来たのか」
 健次は、かっとなって言った。
「こんなところで食事はしないね。ここの食い物は全然、僕の口に合わなくてね」
「だろうな。じゃ、何なんだい、俺に何か用事があってわざわざ来たんだろう。この辺にはあんたのオフィスはないからな」
「そうさ、君に用事があって来たんだ。由美子さんに会いたいんでね。君とずっと一緒にいるんだろう。大事な話がある。彼女は、ずっと仕事をすっぽかしている。彼女は、君にたぶらかされて、明智物産の重要な人材であることをすっかり忘れてしまっている」
「何だと、無茶苦茶なこと言いやがって! 俺は由美子をたぶらかしてなどいない。森を守りたいのは、由美子自身が決めたことだ。ハワイで環境学を学んで、熱帯雨林の大切さをよく知ってるんだ。だから俺と一緒にいるんだ。それのどこが悪い!」
「悪いが健次くん、由美子さんは僕と婚約してるんだ。君とではない。彼女は、明智物産の跡継ぎなんだ。僕のような男の支えを必要としている」
「そんなバカな。何言ってやがんだ。由美子がおまえのような男と」
「これは決まったことなんだよ」
「ふん、そうか」
 健次は、本気にしてなかった。どうせ、英明が勝手に決めたことと確信しているからだ。由美子が、英明を嫌っていること、会社を継ぎたくないことなど、恋人である自分が一番よく知っている。
「由美子さんに会いたい。今どこにいる。研究所の中か?」
 英明が健次をにらみながらきく。
「日本へ帰ったよ。親父さんが倒れたんだ」
「何、社長が?」
 英明が驚きの表情を見せた。
「知らなかったのか? あんた婚約者じゃなかったのか、そんな大事なことを由美子が婚約者のあんたに知らせなかったとは驚きだな」
 沈黙が流れた。英明が黙って突っ立っている。健次は、何となく勝利した気分になった。くだらないことだが、さっきまでのかっとした気分が急に吹っ飛んだ。
 さてと、英明など無視して食事に手を付けるか、と思った瞬間、堀井が走って自分のところに向かってくるのが見えた。
「健次、やったぞ。ついに発見したぞ。あの草にガン細胞を破壊する効果があることが分かったんだ。実験の結果、間違いなくガン細胞はあの草から抽出した成分によって消滅している。この発見はノーベル賞ものだぞ」
 健次は、立ち上がった。
「本当か? 間違いないんだな」
「当たり前さ。すぐに実験室に来て確かめてみろよ」
「分かった、すぐ行く!」
 健次は、ぼおっと突っ立っている英明を無視して横切り、研究所に向かった。
 健次は、思った。これで、英明どもの企みは潰される。

Part 17へつづく。
by masagata2004 | 2007-10-13 20:10 | 環境問題を考える


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