小説で地球環境問題を考える Part 17

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 16を読んでください。

 英明は、ホテルに戻り野村院長に電話を入れ、事情を確かめた。  
 しかし、今問題なのは、社長が倒れた原因である癌だ。とても危険な状態であと一ヵ月もてば幸いという。今すぐ死亡ということになれば、ちょっと面倒なことになる。まだ、由美子と結婚していないのだ。あの女と結婚しなければ、明智物産乗っ取りは不可能だ。あの女の夫となり、明智物産の正式な後継者と明智清太郎が生きている内に認めさせるのだ。
 英明は思った。ダム建設をさっそく開始するのだ。あの森に手を加えるのだ。伐採を始めなければ! そのことで由美子に結婚を迫らせるのだ。
 開始予定日までには、あと二週間ある、しかし、こんな事態だ。予定を早めよう。これであの女にプレッシャーを与えることになる。
 あともう一つあった。あの健次という男だ。あの男が邪魔だ! あの男がいるかぎり、由美子は自分と結婚したがらない。健次を直ちに消すのだ。そして、あの男のやっている研究にも何だかの手を加えなければ。何でも癌細胞を殺す薬草を見つけただと、信じ難い話だが、ほっておけることではない。一度殺すチャンスを逃した悔しさも拭いたい。
 英明は、電話の受話器を取った。プッシュホンを押した。この手の問題を解決する現地の組織につながる番号である。
[あんたか。もう一度、あの男をやってくれ。今度は失敗するなよ。手のこんだ真似は必要ない。思いっ切りやってくれればいい」

東京
 由美子は夕食を清太郎のいる特別病室に運んでいた。由美子は、ある決意を胸に秘めていた。もうここまで来たんだ、包み隠さず、何もかもを話そう。父はそれを嫌がるかもしれない。だが、このままでいるのは辛過ぎる。
 由美子は、病室に入った。
「お父さん、夕食よ」
 清太郎は、目を開け体を起こした。由美子は、父のベッドに備え付けてあったテーブルに食事を置いた。
「ありがとう、由美子」
 清太郎は、昨日に比べて、さらにやつれている。箸を取り、黙々と皿の上の食物を取り口に運んだ。由美子は、その姿をじっと見守るように眺めた。
 清太郎は、十分ほどして箸を置いた。出された食べ物の半分も食べてない。
 由美子は、食事をすぐに片付けた。清太郎は、再び目をつぶろうとする。
「お父さん、とても大事な話があるの」
と由美子が言った。
「後にしてくれ、今疲れているんだ」
 清太郎は嫌そうに言った。
「野村先生から聞いたわ。末期癌なんでしょ」          
 清太郎の目がぱちっと開いた。
「どういうつもりだ、そんなこと聞き出して」
と怒鳴るように言った。
「どういうつもりもないわ。わたしはお父さんの娘よ。お父さんのことがいつでも心配なのよ」
 清太郎は、ぐっと押し黙った。父と娘は 、真剣に見つめ合い、沈黙が流れた。 
「全くしょうがないな、おまえは・・」
 清太郎が、溜め息をつきながら言った。
「なら、これでよく分かっただろう。わしがおまえに、急いで我が社の一員となって頑張ってもらいたいことが。将来的には、おまえに明智物産を継いでもらいたい。その助けとして、英明くんとの結婚を勧めていることも。もう、わしの命も長くない。死ねば会社はおまえのものになる。今はまだ、おまえがあの会社を運営するのは無理だ。だから、英明くんの助けを借りて、あの会社を守ってもらいたいんだ。今までおまえのためを思ってあの会社を大きくしてきた。おまえにあの会社をいずれ譲るつもりでだ」
 由美子は、言った。
「お父さんは、私のこと何にも分かっていない」

スワレシア、クアランコク
 研究室の中で、健次は、堀田と一緒にいた 今は、コンピューター画面に目を通している。あの草の成分の分析結果を見ていた。驚くことに、コンピューターでさえ解析不能な未知の成分が数多く含まれていることが分かった。これまでの研究生活の中でこれほどまでに興奮したことはない。
 時計は、午前十二時を指していた。健次は、二日間、飲まず食わずの上、十分な睡眠も取ってない。だが、それが全然苦痛ではないのだ。目の前の新発見にしがみつかずにはいられず、研究室を離れられないのだ。体に疲れなど感じない。むしろ時間が経つごとに、気分が高揚してくるのを感じがする。
「健次、張り切る気分も分かるが、少しは休みを取れよ」
「何言ってんだ。一刻の猶予もないんだぜ。この草は、癌で苦しむ何千万という患者の命を救える。それにあの森をもだ。休んでなんかいられるか。疲れているのなら、おまえは帰っていい。俺一人でここにいる」
 今、この研究室には、堀田と健次の二人しかいない。そして、この研究所の建物の中で、こんな夜遅くまで残っている学者は、この二人だけである。
 堀田は疲れていた。自分は健次ほど体力のある方じゃないと分かっていた。
「じゃ、俺は帰るぜ」
と堀田が言った瞬間、ガッシャーンという窓ガラスの割れる大きな音がした。
 はっ、と驚いた瞬間、部屋の中は火に包まれた。火炎瓶が投げ込またのだ。
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「逃げるぞ!」
と堀田は叫んだ。
 健次は、立ち去ろうとしたが、
「待ってくれ、大事なサンプルとデータが!」 コンピューターのデータをまだ保存していなかった。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう」
「ちくしょう、せめてサンプルだけでも」
 健次は、草の入ったビニル袋を手に取った。さっとドアを開け、実験室を出る。
 二人は、大急ぎで廊下を走った。研究所の火災報知器が鳴り響いた。
 研究所の表玄関にまでたどり着いた。ドアを、さっと開け外に出る。むっとする夜の熱気が二人を包みこんだ。二人が、ふと立ち止まると。
 その瞬間、パン、パン、と何かが炸裂する音が聞こえた。銃声だ。自分達目がけて撃ち放たれたているのだ。
 二人は、また走る。
 パン、パン、銃声はまた続く。銃を持った男達が、暗い夜道から追いかけてくるのが見えた。
 二人は、ひた走る。
 パン、パン、パン、恐怖の音は追いかけてくる。
「うわあ」
と堀田が叫び声を上げ、どてんと倒れた。
「堀田!」
と健次が、はっと振り向くと多量の血を流す堀田の姿があった。銃の弾が当たったのだ。背中から腹部を貫通し、重傷だ。
 健次は立ち止まり、応急処置を施そうとした。だが、銃を持った男達は、容赦なく追いかけてくる。このままそばにいれば自分もやられてしまう。
 ウイーン、ウイーンと、消防車のサイレン音が聞こえた。
 銃を持った男達は、突然現れた消防車を見ると、立ち止まり、もと来た道を折り返すように走り去った。

 一時間後、健次は、国立クアランコク病院の手術室の前にいた。堀田が、救急車で運ばれた直後から、緊急手術が施されていた。
 健次は、恐怖に震えていた。自分も一つ間違えれば、同じ目に遭っていた。そのうえ、命を狙われるのはこれで二度目だ。一体誰が? いったい誰が自分の命を狙っているのか。その上、研究所を火事にまでして、せっかくの実験データを焼失させた。自分達の研究を台無しにさせたのだ。いったい誰がそんなことを? 何の目的で? 健次には皆目、見当がつかなかった。
 そんなことを考えながらも、健次は堀田のことが心配でならなかった。自分のせいでとんでもない目に遭わせてしまったみたいだ。そのことが、胸にどっと、のしかかってくる。気が付いてみると、恐ろしいまでに体が疲れていた。張りつめた緊張感のせいだ。突然、眠気が健次を襲った。
 
 起きると、そこはベッドの上だった。手術室前の廊下の長椅子でなく、朝陽の差し込む病室の中だった。
 いったいどうなったんだと、頭を混乱させていると、一人の看護婦が入ってきた。
「こんにちは、日本の人。昨日は大変だったわね。とっても疲れていたのね。ぐっすり眠っていたわよ。目覚めにはこれを飲むといいわ」 
 看護婦は、にこにこと健次に英語で話しかけた。右手にはコーヒーの香りが漂うカップを持っている。
「いや、どうもありがとう。なんとか、回復したような気がする。ところで、ぼくの友人はどうなりました?」
「ああ、あの人なら大丈夫ですよ。撃たれたところは急所を外れてましたし、手術は成功して、何とか危険な状態は脱しました。まだ、あなたの何倍も休息が必要な身ですけどね。とにかく、命は取り留めたんだから安心してください」
 看護婦は、にこにこしながら言った。健次はコーヒーを受け取ると、ぐいっと飲み込み目をぱっちりと開けベッドから飛び出した。。
 健次は、堀田のいる病室に向かった。病室の前には、警察官が一人立っていた。それは、護衛のためだった。健次が、警官に自分のことを話すと、すぐに病室に入れてもらえた。
 堀田は、青ざめた顔で、じっとベッドに横たわり体には点滴用の管を何本か注射させられていた。だが、健次を見ると、目をぱちりとさせた。
 健次は言った。
「すまない、堀田、こんなことになってしまって。よく分からないが、どうやら俺が原因みたいなんだ。おまえは、運悪く巻き込まれてしまったみたいでな」
 堀田が口を開けた。小さく枯れた声を出す。
「大丈夫さ。俺のことより、それよりもおまえは大丈夫なのか。ここにいてはかえって危険じゃないのか。日本に戻った方が安全だ」
「何言ってんだ、堀田! 今、おまえのことをほっておけるわけないだろう」
「お、俺は大丈夫と言ってるだろう。どうだ、彼女に会いに行ったらどうなんだ。彼女のことが心配だろう。お父さんが大変なことになっているのならなおさらのことだ。何か役に立つかも知れない」
 堀田は、そう言いながら真剣な眼差しを健次に送る。
 健次は、片手に薬草のサンプルを入れたビニル袋を握り締めていた。

Part 18へ続く。
by masagata2004 | 2007-10-25 22:38 | 環境問題を考える


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