小説で地球環境問題を考える。 Part 22

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 21を読んでください。

 その夜のパーティーは盛大なものだった。
 パーティーとは、マラティール大統領の六十歳の誕生日を祝う催しである。政財界のトップ達が招待されており、来月の大統領選の運動も兼ねた催しとなっていた。
 マラティール氏は、黒いイブニングタキシードを着て主役として出席した。その他の招待客の男性も同じ格好をしていた。女性客は、化粧をし、艶やかなドレスをまとっている。
 英明は、ワイングラスを片手に一人の女性を探していた。由美子だ。由美子もこのパーティーに招待されているのだ。パーティが始まって、もう三十分も経つというのに、まだ姿を現していない。今夜のパーティーで、自分と由美子との婚約を発表するつもりである。婚姻届には、すでに署名が済まされ、明日にでも帰国し役所へ届け出れば結婚が成立することを、この群衆に伝えるつもりだ。
 できるだけ早くしなければならない。なんでも、誕生祝いの特大ケーキが出され、招待客でハッピー・バースデーを歌い上げるときに、首相に銃弾が飛ぶという予定になっている。その時に、そばに立っている通産大臣が、銃弾で倒れる大統領の体を支え、その場で号泣するというシナリオだ。何ともドラマチックなシーン、それによってライ通産大臣は大統領のもっとも近くにいた人物という印象を大衆に与え、大事なボスを失い悲しみにくれる腹心という印象を与え同情を引き、大統領選で後継として選ばれるにふさわしい男と認められる。見事にでき上がったシナリオだ。
 だからこそ、その大事件が起こる前に、婚約発表をすまさないと、チャンスがなくなってしまう。英明は、特大ケーキがパーティー会場に運びこまれるのを目にした。そろそろ始まるのだ。大統領のそばには、タキシードを着たライが、不格好に突っ立ている。いつもの光景だがライ氏は、まるで大統領の執事のように見える。
 パーティ会場にとても大きなケーキが運ばれて来た。物珍しさに辺りがざわめいた。
 司会が、マイクに口を近づけると言った。人々は皆、耳を傾ける。
「只今、大統領六十歳の誕生祝いを記念して作られました特大ケーキが到着しました。このケーキは、大統領が長い間、守ってこられました我がスワレシアの国土を型取ったものであります。皆さん、これより一斉にハッピー・バースデーを歌いましょう」
とそのとき、英明は、由美子が会場に入って来るのを見た。
 英明は、考えた。今だ。ここで無理を言って割り込むのだ。由美子を引っぱって、大統領のところまで行くのだ。マラティール氏も友人である明智社長の娘の婚約発表なら失礼を許してくれるだろう。英明は由美子に近づいた。
 だが、おかしなことに気付いた。由美子は、この会場には相応しくないティーシャツとジーパンというスタイルだ。全くの普段着だ。なぜ、こんな格好でパーティー会場に? それに由美子の後ろには、数人の黒い制服を着た警察官と刑事らしき格好をした男達がついている。
 そして、パーティー会場の群衆の注目は、特大ケーキから会場を悠々と入って来る由美子と警官の集団に移った。人々は、静まりかえった。英明も、じっと様子を見守るしかなかった。由美子は、英明には目もくれず通り過ぎていく。そして、大統領の方へ向かっていく。
「何事だ!」
と大統領が、驚きのあまり大声で叫んだ。
「大統領、私共は、あなた様を緊急に警護しなければならなくなりました。すぐにこのパーティーも中止してください。このパーティー会場であなたの暗殺が実行されるという情報を入手したのです。」
 背広を着たスワレシア人の刑事が、まじまじと大統領を見つめ言った。由美子は、申し訳なさそうに大統領を見つめた。
「誰が、そんなことを?」
 マラティール氏は、仰天顔だ。今度は、数人の警察官が通産大臣を取り囲んだ。
「ライ・グーシング。おまえを公共事業入札で不正入札に便宜を計った収賄容疑の門で逮捕する!」
 会場が、一挙にざわめいた。総理は、目を丸くしている。ライ大臣の表情は硬直状態になった。
「ライが、収賄容疑だと。バカなことを言うな。彼はそんなことをする男じゃない。何かの間違いだ」
 大統領は、激怒して言った。
「大統領、この会場にいるもう一人の男が、組んでやったことなのです」
と由美子は、マラティール氏に真剣な眼差しで見つめ言った。
「何だと! それは一体誰だ?」
「石田英明です」
と由美子は、英明の方を指差して言った。
 警官が数人、英明のほうへ向かって歩いていく。英明は、手に持っていたワイングラスを投げ捨てると背を向け走り出した。
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 その時、バーン、バーンという銃声が辺りに鳴り響いた。稲妻のような炸裂音が鳴り、会場にいた人々は本能的に身を伏せた。女性客は悲鳴を上げた。由美子も身を伏せ、床の上にうずくまった。
「うわあ」
と男の悲痛の叫び声が聞こえた。
 バーン、バーンと銃声がまた響く。今度は、警官の反撃による発砲だ。天井にぶら下がっていたシャンデリアが割れる音も同時に聞こえた。
 すると、天井から、一人の人間が落ちてきた。バターン、と体が、床に打ちつけられる音が響いた。それは、ライフル銃を手に持った男の肉体だった。腹を撃たれ、血を流して死んでいる。
「待て!」
と警官が一人の男を追いかける。英明が混乱のどさくさに紛れ、会場を逃げ出したのだ。
 由美子は、静まりかえった会場を眺めた。会場の様子は一変してしまった。客の何人かは気絶している。床には見るに耐えない暗殺者の死体が転がっている。撃ち放たれた銃弾によって割れたシャンデリアの破片は、テーブルや床の上に散乱していた。特大の誕生ケーキは、暗殺者が放った銃弾でぐしゃぐしゃになっている。そして、そのケーキのそばでタキシードを着た男が倒れこんでいた。体中から血を流し、表情は見るからに死んでしまったことを伝えている。
「ライ、ライ、しっかりしろ!」
と叫び、目から涙を流すマラティール大統領の姿があった。

 英明は、メルセデスベンツを猛スピードで走らせていた。後ろから数台のパトカーが、追ってくる。英明は、アクセルを一杯に踏み込んでいる。パーティー会場から駐車場に逃げ込んだ後、パーティーに来るのに使った自分の車に乗り込んで逃走しているのだ。
 夜の街を、猛スピードで走るベンツとサイレンを鳴らしながら後を追うパトカーの集団という光景に道を歩く人々は唖然とした。
 英明は思った。絶対に捕まってはならない。逃げて、逃げ切るつもりだ。地の果てまでも逃げ切ってみせる。すべてが終わりだ。今までのすべてが崩壊したのだ。築き上げた地位や名声が、そして、それらをさらに高める策略も。何もかもうまくいくはずだったのだ。
 明智物産を乗っ取り自分の帝国を築くこと。
 捕まるくらいならば、いっそのこと!
 数十メートル先で渋滞が始まっていた。このまま突っ走れない。英明は、左側に都市高速道路への入り口があるのを見つけた。急カーブで左折をし、高速道路へ入った。パトカーも後を続く。
 ベンツは、料金所に立ち止まることなく突っ走る。夜の高速道路を行くあてもなく猛スピードで走る。
 英明には、後ろから鳴り響くサイレンの音など耳に入らなくなっていた。すると、目の前に二つの分かれ道と各々を示す二つの標識が見えた。一つは、高速道路の出口だ。「この高速道路はここで終わり。一般道へ続く道」と書かれてある。もう一つは、「道路延長工事のため立ち入り禁止」と書かれ、フェンスの門が侵入を塞いでいる。
 せっかく高速道路に入ったのに、もう終わりである。クアランコクは、発展途上国の未完成な都市であることを英明は思い出した。
 そして、この高速道路は来月に道路延長のための工事入札対象となっている場所であることも思い出した。今ある高速道路は、クアランコク市内だけを結ぶものだ。いずれは、首都を中心に北へ南、東へ西へと高速道路網をスワレシア国土全体に拡張するプロジェクトがあるのだ。
 英明は、急な選択を迫られた。このまま高速道路を出れば、市街の混雑した道に戻り足止めをくわされてしまう。そうなれば間違いなく捕まってしまう。もう一つは、工事中の道なき道だ。つまりどちらも行き止まりだ。
 ベンツは、フェンスを突っ切った。フェンスは壊れ、左右に吹っ飛び門は開いた。英明は、スピードを緩めずベンツを走らせた。道は、整備がまだされてないためがたがたで車体が弾む。
 英明は、一瞬、ふわっと体が浮く感じを覚えた。地面に足がついていないような感覚だ。英明は、戦慄を体全体で感じ取った。

 ベンツは、途切れた高速道路から宙へ放たれた。十メートル以上の高さから飛び降り、地面に車体が叩きつけられた。ボンネットから火花が上がった。すぐさま、火は車体全体を包み込んだ。
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 ボーンと大爆発が起こる。空高く破片と火の粉が飛び上がった。
 何もかもが、粉々に焼き砕かれた瞬間であった。

Part 23へつづく。
by masagata2004 | 2008-01-10 21:54 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)
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