小説で地球環境問題を考える Last Part

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 23を読んでください。Part12(蛇の写真付き)からPart13への移行にトラブルがあって続きが読めなかったようです。ごめんなさい。もう修正しましたので、ご確認下さい。

 安藤健次と父、明智清太郎であった。目の前の清太郎は、日本の病院で見た姿とは、見違えるように変わっていた。血色がよくかつての大商社社長の威厳を堂々と見せるあの父の姿に戻っていた。
「お父さん、もう大丈夫なの?」
「ああ、健次くんのくれた薬草が効いたらしくてね。全く元のままの健康体になっている。信じられんよ」
 清太郎は、微笑んで由美子に言った。
「信じられないわ。もう末期癌で死ぬことを覚悟していたのに。今まで、ずっと心配していたのよ。全然、連絡が取れなかったから」
 由美子は、何度も日本へ電話を入れた。しかし、不思議なことに野村総合病院には「明智清太郎」と名乗る患者はいないと取次いでくれなかった。明智邸にも会社にも連絡したが、父の所在は分からないという。一緒にいるはずの安藤に連絡しようと彼の自宅や携帯にも電話したが、全くつながらなかった。どうしたことかと心配でならなかった。日本に帰国したかったが、クアランコク検察庁から事件の関係者という理由で出国を許されなかった。
 健次が、今までの事情を説明した。
「実を言うと、急いで別の病院に移ったんだ。主治医の野村院長が、あの石田英明という男とグルだったことが分かったんだ。クアランコクで石田が死んだニュースを聞いて、極秘だった親父さんの病状を逐一あの男に知らせていたことを告白したんだ。罪の意識にさいなまれたらしい。あの男が、会社乗っ取りを企んでいたことも知らされた。院長は明智物産傘下にある銀行から融資を得るため石田の助けを借りたんだ。その見返りとしてやっていたことだったんだ。薬を飲んだ次の日に親父さんの容態が急激に改善したから、そんな信用のおけない奴に診てもらうわけにはいかないと、俺の知っている癌専門の医者のいる病院に移ったんだ。もちろん、野村院長には転院先は告げずにな。とにかく、親父さんの身の回りの奴ていうのが、信用のおけない連中ばかりで。病院にいる間は、誰とも接触しないようにしていたんだ。外との交信も遮断してな。そのおかげで、お前に心配かけてしまったな」
 清太郎は、
「もう信じられるのは、由美子、おまえだけだ。それに命を救ってくれた健次くんだ」
と落胆した表情で言った。
「お父さん、気を落とさないで。その通り、私たちがついている。これからどんなことでも頑張っていけるわ。そうだ、せっかくだから三人で食事に行きましょう」
 もうお昼だ。由美子は、久ぶりにお腹が空いていた。
「いや、それが、由美子。わしは、今から行かなければいけないところがある。そもそもそのことがあってクアランコクに来たんだ。クアランコク検察庁に呼ばれてな。今回の件の取り調べを受けることになったんだ」
「そう、そうなのね。そういうことになるはずよね」
 由美子は、驚かなかった。そして、これからの父のことを覚悟していた。

 検察庁までは、黒塗りの車で運ばれた。まるで護送車で運ばれるような気分だ。由美子と健次は、娘とその友人ということで同行を許された。
 クアランコク検察庁に着き、由美子と清太郎と健次は検察官に引き連れられ、建物の中へ入った。
 廊下を渡り、取り調べ室に向かう。取り調べ室に着くと、案内役の検察官が、由美子と健次を見て言った。
「ミスター・アケチのみが取り調べ室に入ることになります。長引くかもしれませんが、お二方は、隣の応接室でお待ちください」
 由美子は、検察官に分かったとうなずくと、父、清太郎のほうを見て言った。 
「お父さん、私や会社のことはどうでもいいわ。正直なことを言って。私は、お父さんがどうなろうと愛してる。娘として誇りに思う。だから、正直にすべてを話して。私は、犯罪者の娘になってもかまわない。嘘をつかず、自分の罪を素直に認められる立派な人を父親に持ちたいの」
 由美子は、目に涙を浮かべていた。清太郎は、じっと由美子を見つめる。
「アケチさん」
と思わぬ声が聞こえた。
 すると、そばにマラティール首相がいた。数人のボディガードに囲まれ、由美子たちを見つめ立っていた。
「マラティールさん、いや大統領」
と清太郎は、答えた。
 マラティール大統領は、そばに立っていた検察官に話しかけた。スワレシア語で会話を始めた。

 十分後、由美子たち三人とマラティール氏は応接室にいた。大統領は、清太郎の取り調べが始まる前に、少しだけでも話しが出来るよう取り計らってくれたのである。
「私は、いずれ国会での証人喚問も受けることになります。大統領選には出馬せず続投もしないつもりです」
 大統領は、清太郎に真剣な眼差しを向けながら話した。
「しかし、言っておきます。私は、何も知らなかったのです。ライが勝手にやったことなのです。こんなことを言えば、政治家お得意の言い逃れのようにしか聞こえませんが、事実、私は何も知らなかったのです。私は、むしろ裏切られたのです。その上、一番信頼していた男に殺されそうにさえなった。そして、もう一人友人であるあなたにまで裏切られた」
 清太郎は驚き、こう返した。
「マラティールさん、ここではっきりと事実を申し上げておきましょう。私は、あなたを裏切ってなどいない。あなたと同様、私も部下に裏切られたのです。私は何も知らなかったのです」
「お父さん!」
 由美子は、父の発言に驚いた。
「由美子も健次くんも聞いてくれ」
 清太郎は、由美子と健次をしっかりと見つめて言った。そして、マラティール氏の方にまた目を向け話し続けた。
「実際、私は今の事業を大きくするために過去に何度か不正をやってきました。しかし、今回は、そんなことをやってはいません。だが、社長として会社の者がやったことは、私が知り得なかったとはいえ、私の責任です。その責任を負うための裁きを受ける覚悟は出来ています。だが、決してあなたを裏切るつもりなどありませんでした。そのことは、分かってください」
「本当なのですか、明智さん」
「嘘など言っていません」
 清太郎は、真剣な表情だった。由美子は、その父の表情を読み取り、それが真実であることを確信した。父は、こんな状況で嘘をつく男ではないことを由美子は、長年の親子としての付き合いから一番よく知っていた。
「マラティールさん、私は、あなたの大統領の立場を考慮した上で、今、お頼みしたいことがあるのです。私の立場から頼むのは大変厚かましいことなのですが」
 清太郎の発言に、何を言い出すのかと皆、驚いた。
「今回の発電所建設計画、私の部下の犯した不正により、当然、我が社は、この事業から撤退せざる得ません。それは当然の報いです。しかし、この事業自体は、決して中止されることはないでしょう。東南アジア規模のダム建設は、あなたにとっては長年の夢だった。この国の産業発展のためには、なくてはならないものでしょう。しかし、そのために苦しむ人々がいるということも事実です。近くに住む農村の方々、そして、森の中に住む先住民の方々です。私は、今まで事業家として自分の企業の利益を増やしていくことばかり考えて生きていました。会社が大きくなればそれでいい。そのために住むところを追い出されたり、生活環境を悪くさせられる人々のことなど全く考えていませんでした。それを、今考えさせられているのです。驚くでしょうが、私はほんの十日前までは、末期癌で命を落とすところだった。ところが、あの森に住む人々が、与えてくれた薬草でこの通りあっという間に元の体に戻ることができたのです。死ぬ寸前の私の体を魔法のように治してくれたのです。あの森とそこに住む人たちがいなければ、私は死んでいたのです。それなのに、私は、そんな森とそこの人々を破滅に導かせることをしようとしていたのです」
「そんなバカな?」
 マラティールは、信じられないといわんばかりの表情だった。健次が、着ていたジャケットのポケットから草の入ったビニール袋を取り出して言った。
「大統領、信じてください。ここにその草があります。この草には、癌細胞を殺し、また癌細胞で弱った内臓の組織を修復させる成分が含まれています。それだけではありません。様々な解毒作用を持ち、コブラの毒さえも解毒できます。現に僕は、コブラに噛まれながらもこの薬草のおかげで助かりました。まだ、研究は始まったばかりです。その他どんな難病でも治せる可能性を秘めています。この草は、あの森に生えています。なくしてしまうと人類にとっての貴重な財産を失うことになります」
 清太郎が合わせるように続けた。
「お願いします。ダム建設計画のこと何とか考えていただけませんでしょうか。私は、そのためなら何でもいたします。また、明智物産で出来ることなら何でもいたします。お願いします」
 清太郎は、さっとひざまずき、土下座をした。
「明智さん、突然何をなさるんですか。私は、混乱しています」
 大統領の表情は、まさに青ざめ、心の混乱を表していた。由実子も、その父の姿に混乱した。そして、マラティール氏に向かって言った。
「大統領、娘の私からもお願いいたします。何も巨大なダムを作る必要はないのじゃないですか。発電なら、風力や太陽熱など自然を破壊しない手段もあります。そんな技術を提供出来ます。よく考えてください。熱帯雨林は、この国にとっても、地球にとっても、かけがえのない財産です」
 大統領は、顔をそっと背けた。清太郎は土下座したままだ。しばらく沈黙が続いた。大統領は、皆に背中を向け、窓の外をじっと眺める。急に沈黙が流れ陰鬱な雰囲気となった。由美子は、怒らせたのではと、不安になった。
 しばらくして、大統領は由美子たちの方を振り向いた。そして、話し始めた。 
「皆さん、私は、今、心に深い傷を負っています。死んだライとは、長年来の親友でした。イギリスの大学で政治学を学んでいた時からの付き合いでした。互いにこの国の未来について語り、植民地支配や戦争で、ごたごたになったこの国を建て直そうと二人で誓い合ったのです。二人で政治の世界に入り、同じ時期に国会議員にもなりました。そして、私が総理に彼が通産大臣になる程まで登りつめた、これからという時にです。彼が私利私欲のために収賄に手を染め、私を殺してまで大統領の座を手に入れようとしたのです。彼は、どうしてそんなにまで変わってしまったのでしょう。昔の彼は、そんな男ではなかった。私に原因があったのかもしれない。彼だって大統領になりたかったのです。私は、自分の方が、適役だと思っていました。私の方が見かけがよく、リーダーとしての強いイメージを国民に与えることが彼よりできると思いました。よかれと思ってしてきたことでしたが、知らず知らずのうちに彼に私に対する不信感を植え付けることになってしまった。私も気付かないうちに権威主義者に成り下がっていました。私も変わってしまった。私が若い頃、まだこの国がイギリスの植民地だった頃、イギリス人がゴム農園を切り開くため、熱帯の森を無残に切り壊していったのを見て、強い怒りを感じたことを覚えています。イギリス人は、自国の利益のため我々の国土を荒し回っていたのです。その時の怒りが、私を政治家への道に駆り立てたのです。そんな私が、今になって、この国の発展のためだからと、森を切り倒していくのは、とても滑稽な話しですよね」
 大統領は、床に膝まづいたままの明智清太郎を見下ろしながら言った。
「明智さん、お願いです。立ち上がってください。あなたのそんな格好を見たくありません」
 清太郎は、命令に従うかのように立ち上がった。大統領は話しを続けた。
「私が二十年近く前、日本で貿易の仕事をしていたとき、あなたには大変お世話になりました。発展する日本の産業を目の当たりにして、感動を受けた思い出で一杯です。そのころ私は、事業家のはしくれでして、日本には貿易をするかたわら、日本のビジネスについて学びに来ていたのですが、すでに帰国後に国会議員選挙に出馬する準備もしていました。日本の産業を見てスワレシア経済のモデルにすることを考えたのです。あの頃、あなたは「大の虫を生かすためには小の虫を殺す」という日本の格言を話してくれましたよね。これが資本主義経済のルール、国を発展させるためには常に犠牲が必要だと。日本は、あの時代高度成長による華やかな発展とともに国中に撒かれた公害問題が深刻化していました。あなたも産業界の人間としてそういうことに大きく関わっていました。だからこそ、そんな格言を使ったのでしょう。今の私もあなたと同じですよ。格言を持ち出して自分を正当化していました。でも、「大の虫を生かすためには小の虫を殺す」と言えば正反対に「一寸の虫にも五分の魂」という格言が日本にはありましたね。私はすべての国民のことを考えて、いままで行動してきたつもりでした。しかし、一人一人の国民のことを考えながら国全体を経済的に豊かにすることは、たやすいことではなかったのです。私は忘れていました。大の虫も小の虫も生きていける国にすることが真の政治家の使命であることを。今回のことで私は目を覚まされたような気がします」
「マラティールさん」
 清太郎は、ぽろぽろと目から涙を流していた。
 由美子と健次は、二人の老人の姿に圧倒されていた。不思議ともいえる雰囲気だった。この二人は、一国の大統領と大商社の社長という大きな肩書きを持つ貫祿ある堅物の老人たちだ。それが、お互いのことを包み隠さず語り合い、まるで若き青年時代に戻ったように、仮面を剥ぎ真の顔をさらけ出し、互いの姿を見せ合っているところなのだ。
 しばらく沈黙が続き、マラティール氏は言った。
「あれだけの大規模事業を中止させるのは、並大抵のことではないのです。私の大統領の権限を行使したところでも、もはややめさせることは出来ません。私個人の意見としましても、大規模なダムや発電所は、この国には必要です。どうしても必要だとしか思えません。しかし、もっと話し合う必要があることにも気付きました。果たして何が、なすべき正しいことなのか。そうですね。話し合う価値は十分にあります。多くの人を招いて話し合って見ましょう。どんな結論が出るか分かりませんが」

終わり

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それから、この小説は作者であるこのブログの管理者マサガタこと海形将志にあります。くれぐれも盗作は厳禁ですよ。出版予定でもあるのですから。紙での製本版入手に興味がおありであれば、筆者のメールアドレス、masagata1029アットマークy8.dion.ne.jp までご連絡下さい。
by masagata2004 | 2008-02-20 21:36 | 環境問題を考える


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