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自作小説「白虹、日を貫けり」 第12章 裏取引

テーマは、ジャーナリズム、民主主義、愛国心。大正時代から終戦までの激動の時代を振り返りながら考える。

まずは、まえがきから第11章までお読みください。

 一九一八年九月
 大阪地方裁判所で大西哲夫を被告とした公判が開かれた。裁判は、なぜか非公開となったため傍聴は許されなかった。また、大西との面会も弁護士以外は許されず、龍一は、はがゆい気持ちにさせられた。今からでも遅くはない。自分が執筆者であることを公にしようと考えたが、大西と話ができない状態では、どうすべきかが全く判断しようがない。仮に自分が執筆者であることを告げても、大西が免責されるわけでもない。記事の名義人としての責任が問われることとなり、また、取り調べに対して虚偽の証言をした罪も加わり、さらに重い罪に問われることになる。どちらにしても、大西にとって得なことはない。
 裁判の弁護は、社の顧問をしている敏腕弁護士が担当していると聞いた。だが、検察側も、検事局では古参の検事を送り出して争っていると聞く。この裁判で有罪の判決が出れば、次は大阪朝夕への起訴となる。
翌月、判決が出された。大西哲夫を新聞紙法第四十一条違反、安定秩序を乱した記事を書いた執筆記者として禁固三ヶ月の刑を受けることとなった。
 ちょうど同じ時期に、政変が起こった。寺内正毅内閣が総辞職したのだ。これは、米騒動への対応と報道規制に対する批判を受けての引責辞任だ。代わりに総理に就任したのは、寺内内閣で法務大臣を務めた原敬氏だ。

 大阪朝夕新聞社社長室。
 顧問弁護士と山村宗太郎社主は、顔を向かい合わせ応接用のソファに座っていた。
「社長、検察はすぐにでも、この社を起訴する構えです」
と弁護士は神妙な面もちで言った。
「なぜなのだ。今までだって何度か記事の発行禁止は出されていた。今回に限って、なぜ我が社を潰すまでの処置をしたがる」
 山村は、やるせない気持ちを弁護士にぶつける勢いで問うた。
「これは検察と言うよりも、内務省、つまりは内閣の意向と考えるべきでしょう。当社は、以前から寺内内閣ににらまれていました。政権の批判を散々にやってきたからです。その結果、内閣は総辞職するまでになりました。ですから、政府としては、今後のことも考え、この機会を逃すまいと今まで以上に力を入れているのです」
「我々に勝ち目はあるのか?」
「最大限やっていますが、相手側も手強いです。大西氏に有罪の判決が出されてしまってますから、状況は不利です」
 両者は、蒼白な表情となった。会社を解散させなければならないのか、という思惑がよぎった。大阪朝夕の創始者である山村にとっては、身を引き裂かれるような思いだ。明治中期に創業させ、関西一帯に三十万部も売り上げる大衆紙として発展させた。それが、このような終わり方をするとは。
「社長、実を申しますと、検察側から非公式にですが、取引の申し出がございまして」
「取引だと?」
「あくまで非公式なのですが、あちら側の提示する条件を呑めば四十三条による起訴を取り下げ、会社の存続を保証すると」
「何! それはどんな条件なのか」

 拘置所にいる大西に面会をしにきた者がいた。社会部長の岸井信男だ。二人は、二人だけの面会室をあてがわれ、机に向かい合って座っている。
「大西くん、気分はどうかね」
という挨拶言葉を最初に発した。
「いいわけないでしょう。こんな判決、納得いかへんです。裁判官も検事と組んでたような感じで、きっときな臭いことがあると思いますよ。わいは、控訴するつもりです。会社もそのつもりでしょう。このまま、あの連中に潰されてはたまりませんから」
「そのことなんだが、控訴はやめてくれ、そうしないと会社が困るんだ。そのことを伝えに私はここに来た」
 岸井がそう言うと、大西は立ち上がった。
「なしてですか、会社と言論の自由が潰されようとしてるんですよ。なして戦わないのですか」
「会社がそう決めたんだ。君が控訴を断念して刑に服する。そして、会社は、今後あのような記事を書かないことを約束する。そして、君と私、編集局長、それから、社長は責任を取って辞職するということに決まったのだ」
「なんやて! そんなの納得いかへん」
「ああ、納得いかないよ。だが、社が存続するにはそれしか方法がないのだ。検察が発行禁止の起訴をしない代わりに社が呑んだ取引だ。裁判になると勝ち目がない。そうなると、大阪朝夕はお終いだ」
 両者の声の調子は穏やかではなかった。
「わいは控訴を断念しません。戦うつもりです。最後まで、大審院(現在の最高裁判所)に行くまで戦って見せます。これは、会社とは関係あらへんす。わいの問題として戦います」
「そういう訳にはいかないんだ。君が控訴しては取引が成立しなくなる」
 岸井は、大西に冷や水を浴びせるようににらみつけながら言った。
「なしてです、部長? あんたは、どうしてそんなに変わったのですか? 一緒に民本主義や言論の自由のために戦って来たのでしょう。なして、今になって、会社やめさせられ、わいにできんことを頼みはる。見損なったで!」
 大西は返すように怒鳴りつけた。
「大西くん、分かってないようだな。権力というものを。権力はな、恐ろしいものなんだぞ。君や私のような者など簡単に吹き飛ばしてしまう力を持っている。もちろん、我々がお世話になり続けた新聞社もだ。我々には、かないっこない」
「わいは、そんなこと信じんで。わいは戦う。あんたがなんと言おうと会社がなんと言おうと、わいはこの国のためにも戦い続けたいんや。言論の自由を殺してしまってはあかん。わいのことはどうなってもええんや」
 大西は、是が非でもという表情を岸井に見せつけながら言い放った。
「そうか。君がそのつもりなら、私もすべきことがある。あの記事のことだが、あれは君が書いた者じゃないな。そのことは警察には話さなかったが、私は分かっていた。あの文の書き方からして君のではない。特に「白虹、日を貫けり」のところは君らしくない。誰が書いたのかも分かっている。白川龍一くんだろう。君の愛弟子の。君が、控訴をするとなるなら、私はそのことを検察に告げるぞ。そうなると、君のみならず、白川くんもお終いだ。彼も起訴され、刑務所行きになるだろう。そして、新聞人としての生命を絶たれる。それでいいのか」
 岸井は、鬼のような表情になりそう言い放った。心は、まさに鬼同然となっていた。
「なんやて、あれは俺が書いたんや」
 大西は岸井の襟をつかんで言った。
「公判でそう言うんだな。だが、白川くんは嘘を突き通せるかな?」
「卑怯や。なんてことするんや」
「君が控訴を断念すれば、白川くんが書いたことは告げない。速やかに退職してくれれば、それなりの退職金を積む。頼む、条件を呑んでくれ。そうすれば会社が救われる。そのことはひいては言論機関を潰さず、今後の民本主義発展のためにもなるんだ。我々は勇み足すぎたんだ。この考え方も間違ってはいない」
 岸井は、うなだれる大西を慰めるように言った。悔しさは共有しているつもりでいた。

第13章に続く
by masagata2004 | 2005-07-31 15:56 | 自作小説 | Comments(0)

仏映画「ボン・ボヤージュ」と独映画「アンナとロッテ」

先週、レンタル店で第2次世界大戦を題材にした2つのDVD映画を借りて見た。

一つは、フランス映画の「ボン・ボヤージュ」で、もう一つはドイツ映画の「アンナとロッテ」という映画だった。最近、レンタル・リリースされた映画らしいので、レンタル店に行って探してみるといい。両方を比べると非常に対照的な戦争観がうかがわれた。

フランスは戦勝国側の視点、ドイツは戦敗国側の視点といえよう。

「ボン・ボヤージュ」はとてもコミカルだった。ある青年が女優に騙され殺人罪で刑務所に入れられてしまうが、その時にドイツ軍がパリを陥落させ、そのどさくさに紛れ脱走する。そして、脱走中に出会った女性とともに原子爆弾の材料となる液体を国外に持ち出すことに協力する。彼を騙した女優を含め、様々な人間模様をとてもコミカルに表現しているところが見物だ。フランス人は苦難の時代を痛快に乗り切ったと言いたげだ。

対する「アンナとロッテ」はシリアスで重い。ナチスが台頭する前のドイツで生まれた双子の姉妹が、両親の死をきっかけにバラバラに引き取られる。姉はドイツの貧しい農家に。妹はオランダの裕福な家に。二人は、暗黒の時代の真っ只中で再会するが、育った環境の違いと戦争のもたらした悲劇により酷くも絆ごと引き裂かれてしまう。
ナチスドイツ時代、知的障害者に対する断種や民族を優勢と劣勢に分ける差別教育、また、ユダヤ人への虐殺などが色濃く描き出されている。二人は年老いて再会するが、それでも戦争の傷跡に悩まされる。
ドイツがいかに周辺国やユダヤ人に対しひどいことをしてしまったかを考えさせられる重いテーマだ。

戦争に勝つ負けるで、映画のテーマを分けられてしまったことが感じられ、ちょっと痛々しい。

ま、我々にも共通することだが。
by masagata2004 | 2005-07-28 22:43 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)

自作小説「白虹、日を貫けり」 第11章 弾圧

テーマは、ジャーナリズム、民主主義、愛国心。大正時代から終戦までの激動の時代を振り返りながら考える。

まずは、まえがきから第10章までお読みください。

 翌朝、龍一は朝刊をみて驚きを隠せなかった。自分が書いたはずの記事の記者名が「大西哲夫」になっていたからだ。
 龍一は愕然としてしまった。どういうことなのだろうかと勘ぐった。まさか、大西が自分の手柄にでもしようと名前を直前で変えたのではと思った。記事の言葉は、一言一句たりとも変更はない。
 大西を問い詰めようと思ったものの大西は朝早くから取材らしく下宿屋にも社内にもいなかった。
 龍一はやきもきして仕事に集中できなかった。大西ではなく、岸井部長が変えたのかとも思ったが、ひとまず大西に確認してからと思った。正午が過ぎ、昼食を取ったが、それでも大西は帰社してなかった。
 だが、思わぬ知らせが部室に飛び込んできた。内務省が、米騒動の報道規制を撤回する決定をしたとのことだ。どうやら、前日の記者大会のことが響いたらしい。また、国会内には、寺内内閣を糾弾する動きも始まったとのことだ。
 部内は、一斉にどよめいた。龍一もつられて、喜びを表したが、素直な気持ちにはなれなかった。自分の書いた記事が政治を動かすほどの影響を与えたかもしれないのに、それを自分の名で出せず、その栄誉を先輩の大西に持っていかれたことに対する怒りのほうが湧き起こった。
 岸井部長は言った。
「大西くんがまたやってくれたな。ちょっとあの記事は過激すぎると思ったが、そのおかげで言論の自由が守れたんだ。彼が来たら拍手で迎えよう」
 龍一は、岸井部長のデスクに近づき、この記事が自分が書いたものであることを伝えようとした。大西が自分に書くように勧めたのだが、その時は二人だけの話し合いで、今の今まで二人以外は誰も知らないことなのだ。書き上げたゲラは、大西が部長に提出した。大西が多少の推敲を加えると思われたが、そのままの形で記事として発刊されている。
「おお、大西くん」
 部室内は一斉に拍手が巻き起こった。大西が部室に入ってきたのだ。大西は反応するように笑顔をつくった。さっと龍一と目が合った。龍一は、にらみをきらした。でも、大西は無視するようににこにこ顔を周囲に振りまいた。
 岸井部長のデスクのそばにいた龍一は、方向を変え大西の方に近付いた。思いっきり、怒鳴ってやろうと思った。
 とその時、部室に男が三人ほど入ってきた。いかめしい表情をした男たちだ。何だろうと皆は、その三人に注目した。見るからに私服警官の風貌がある。
 男の一人が、書面を携え言った。
「ここに大西哲夫という者はおるか?」
 刑事風の口ぶりで言う。
「ああ、俺やが」
 大西は、きょとんとした表情で応えた。
「お前を新聞紙法違反容疑で逮捕する」
 部内の空気が一瞬にして凍った。
「待ってください。いったいどういうことです?」
 岸井部長が、刑事に詰め寄った。
「あんたはここの部長さんですかい。でしたら、後で事情聴取をじっくり受けてもらわなあきまへんな。他の人たちもな」
 刑事たちは記者たちを一人一人にらみつけた。龍一は目が合うとどっきりとした。背筋が凍った。さすがの大西も深刻な表情をして黙っている。刑事は、大西に手錠をかけた。

 それから、一週間が経った。龍一は、自分が書いた記事が、とんでもない事態を引き起こしたことを知った。あの日付の新聞は発売及び頒布の禁止を言い渡された。
あの記事でも指摘した新聞紙法の四十一条に違反する行為として大阪地検に起訴されたということである。四十一条は、「安定秩序を乱し、風俗を害する事項を新聞紙に掲載した場合は、発行人、編集人を六ヵ月以下の禁固又は二百円以下の罰金に処す」というものだ。
 新聞記者なら誰でも知っていて、誰もが気を使っている事柄だ。問題だったのは、記事の下りの「誇り高き大日本帝国は今や恐ろしい最後の裁判の日に近づいているのではなかろうか。白虹、日を貫けり、と古代の人が呟いた不吉な兆しが、雷鳴のようにとどろいている。」という部分だったらしい。この表現が、安定秩序を乱し、風俗を害する事項として検事局に解釈されたというのだ。何でも、「日を貫けり」の日は、「日本国、及びその元首の天皇」を差しているのではないかとも解釈できると。
 龍一には、理解できなかった。確かに、穏やかな表現ではない。だが、国の安定秩序を乱す意図などなかった。最後の審判の日という言葉も単なる比喩表現に過ぎない。国の終わりを望んでいるわけではないのだ。「白虹、日を貫けり」も然りだ。この表現にいたっては、中国の古典文学を知っているものでないと理解できず、一般読者に対しては難解なものだ。
 龍一は、他の記者や社会部長、編集局長らと共に事情聴取を受けた。龍一は、なぜかこの記事が自分が書いたものであることを言わなかった。少なくとも、大西が自分が書いたものであることを検察側に話すまでは言わずにおこうと思った。自己防衛のためではなかった。これ以上の混乱を避けたかった。そして、この起訴が、もしかして大西が名前を変えた理由だったのではと思った。大西は、起訴される可能性を踏まえて、自分の名を伏せたのではとなんとなく悟ってきた。
 しかし事態は、さらに深刻であった。検察側は、同じく新聞紙法の四十三条の起訴も準備しているというのだ。それは「第四十一条を処罰するに於いて、裁判所はその新聞紙の発行を禁止することを得」というもので、安定秩序を乱し、風俗を害した記事を掲載した際は、編集人、発行人に対する処罰とは別に新聞紙を発効禁止にすることができるというものである。発効禁止とは、特定の号をの発売を禁止するのは全く異なり、将来に向かって同一新聞紙の発行を永久に禁止する処分で、新聞社にとっては死刑宣告と同然である。

第12章に続く。
by masagata2004 | 2005-07-24 22:29 | 自作小説 | Comments(0)

体験談を語ります

Excite エキサイト : 社会ニュース

東京のど真ん中、窓から新宿の超高層ビル群を眺められるところに住んでいます。

揺れるに揺れました。数分ぐらいでしょうね。本棚ががたがたと揺れて、テーブルにおいてあった空のペットボトルが落ちてしまいました。

ですが、それ以外は、特にたいしたことはありません。不安定にかけてあったハンガーの服なども落ちませんでしたし、今まで何十回とも経験した普通の地震と変わりはありませんでした。

でも、長く感じられましたね。地震が起こるときって、一瞬、人間の弱さというものを思い知らされます。理屈では言い表されない恐怖を感じ、死というものを考えさせられます。

変な話、戦時中の空襲警報を聞いた人々が受けた感覚もそれに似たようなものがあったのでしょう。

私たちは、平和な日々を過ごすと、正常バイアスという心理状態に陥り、何でも大丈夫だ。幸せな人生がいつまでも続くと思いがちですが、実を言うと平和というのは、死と隣り合わせに存在するものでもあるのです。突然、死が訪れたらどうしようとか、死ななくとも、体の機能を失ったりしたら、肉親を失ったりしたらとか、真剣に考える時間を時には持つべきだと思います。
by masagata2004 | 2005-07-23 17:28 | マサガタな日々 | Trackback(2) | Comments(0)

映画「ニュースの天才」 やらせなんてマスコミの常套手段

レンタルで「ニュースの天才」という映画を借りて見た。

この話は、実話で、以前「CBSドキュメント」という深夜の番組で、この話の主人公となった人のインタビューを交えたドキュメンタリーを見たことがあったので見てみた。
話は、大統領専用機に専用の記者席を持つほどの有名で高尚な雑誌の記者が、記事を捏造し続けていたことが発覚するというスキャンダル。

すでにストーリーは、大筋知っていたので、驚くということではなかったが、しかし、映画を見てさらに驚いたのは、主人公である記者が病的なまでに嘘をつき続けることだ。あまりに稚拙で驚くが、それに加えそれを見抜けなかった雑誌の編集体制も、あまりにお粗末だと思った。

主人公は、恐ろしいまでのプレッシャーと日々戦っており、その結果、とんでもないことをやらかしてしまったとのことだ。でも、あまりにひどすぎる。実際、そこまで自分を追い詰める方がどうかしていると思った。

ところで、メディアがニュースを捏造するなんてことは、この事件に限らずよくあることだ。実際、私も目にしたことがある。だから、発覚したというのは氷山の一角に過ぎないものだろう。
by masagata2004 | 2005-07-21 22:29 | メディア問題 | Trackback | Comments(0)

スーパーサイズ・ミー ムーア的手法のドキュメンタリー

IN-N-OUT BURGER

昨日、レンタルビデオ店でアカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされた「スーパーサイズ・ミー」という映画を見た。

見た後の感想はというと、まあ上出来といったところ。

内容はというと、ずばりマクドナルド批判。ファーストフード業界が、いかにアメリカ社会を蝕んでいるかを訴えている。

映画の監督自らが、30日間マックのみで食事をして、健康そのものの体がどうなるかを実験するのだが、それよりも、マクドナルドを筆頭としたアメリカの食品業界が政治的圧力や資本力を背景に家庭の食卓から学校給食までを不健康なジャンクフードやソフトドリンクで埋め尽くしている実態を分かりやすくいろいろな人のインタビューを交え説明していくのが見ものである。

この手法は、「ボーリング・コロンバイン」や「華氏911」で有名なマイケル・ムーアの手法とよく似ている。銃・戦争とジャンク・フード、対象が違うようでどちらも共通しているテーマは、アメリカ資本主義の弊害だ。企業の力があまりに強すぎることが、問題だといいたいのだ。これは、リベラル系のアメリカ人からよく聴く言葉だ。このままいくと大企業が、国を支配してしまうんではと。いわゆるCorporate Americaになっていくのではという危機感だ。

映画の中で印象深いインタビューがあった。ある画家がいった言葉で、「アメリカの町の風景は、どこも同じようになってきている。マクドナルドのような企業広告が、どこに行っても見られる」と。

私がアメリカの大学に留学していた時、経済システムの講義で保守的な経済論者が市場の自由化を批判するときよく用いるのが、このことだ。自由にしてしまったために、多様化がかえって失われてしまうと。日本でも同じだが、チェーンストア化は、各町の個性を失わせ、ローカルなコミュニティを崩壊させてしまう。

この映画の監督のモーガン・スパーロックは第2のマイケル・ムーアになりたかったのだろうか。だからこそ、マイケル・ムーアでは挑戦できないテーマに挑んだのかな。

そうだよな、ムーア監督こそ、この映画を見なければならない体格なのだから。
by masagata2004 | 2005-07-18 17:33 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(1)

自作小説「白虹、日を貫けり」 第10章 記者たちの決起

テーマは、ジャーナリズム、民主主義、愛国心。大正時代から終戦までの激動の時代を振り返りながら考える。

まずは、まえがきから、第9章までお読みください。

 決起大会の会場となった大阪ホテルの大広間には、情熱に燃える新聞記者たちが集まっていた。「言論擁護内閣弾劾関西新聞社通信社大会」と銘打たれ、大阪の五社、大阪朝夕新聞社、大阪毎日新聞社、大阪時事新報社、関西日報社、大阪電報通信社が主催者として呼びかけた大会となったが、東海、近畿、山陽、山陰、北陸、四国、九州の各地から八十八社、百六十六名の記者たちが賛同し、代表者を送り込み結集した。
 龍一は、大西、朝倉環、岸井社会部長らと共に開会の二時間前に着いていて、準備をした。まさか、こんなにも多くの新聞社と記者が集まるとは予想だにしていなかった。それだけ、言論の自由を求める声が強まっていることを感じた。
 開会の辞が、岸井社会部長によって述べられ、大会が始まった。
「ここにお集まりになった新聞社の方々は、様々な考えを持ち、平素必ずしも一致しているとは限りません。然るに、この度は、諸君が代表せらる各社は言論擁護内閣弾劾という共通の目的の元、結集したのであります。新聞社は筆を以て意見を発表するのが仕事でありますが、このような国家非常時には、実際的行動に踏み出さなければならないのです」
と岸井は熱く語った。さっそく会場は総立ちの拍手となった。
 次に、この大会の座長に山村宗太郎大阪朝夕新聞社社主の選出を決定。山村社主は、壇上には立たず、壇の端の椅子から立ち上がり、一礼して選出を受諾した。龍一にとっては、社主と顔を合わす最初の機会だった。山村社主は、あまり自分の意見を言わない人だという話を聞いたことがある。頭の禿げた初老の紳士で、無表情で寡黙な印象を与える人だ。
 その後、大会宣言へと移った。大阪毎日新聞社相談役の梶原孝三氏が、宣言を述べた。
「言論擁護、内閣の目的を達するため、言論を弾圧する寺内内閣は、米騒動の失政の責任を負い、即、辞職すべし。米騒動の責任は新聞報道にはないのであり、即、報道規制を撤回すべし」
 また、総立ちの拍手が起こった。
 次に、各新聞社から代表の新聞人が、壇上に立ち演説をすることとなった。 
 最初の演説者は、大西哲夫記者だ。龍一は、メモを取り、目と耳を壇上の先輩記者に傾けた。 
 大西は、固い表情をしていた。演台のマイクに口を近づけた。
「諸君、この大会は、我ら新聞社と記者のためだけに開いたものじゃない。我が日本国民全てのために開いたものだ。我々新聞人は、常に民衆のことを考え、民衆が知るべきことを伝えることを使命としてきた。今、それが踏みにじられようとしている。そのことを黙っていられるか、黙っていられんよな。俺たちは、戦うぞ。言論の自由のために。誰も、いいたいことを言えない。伝えるべき真実を伝えられなくなったら、この国はお終いや」
「そうだ、そうだ」
呼応するように会場がどよめいた。
「わいらは戦うぞ。絶対、負けへんぞ!」
大西が大声を張り上げた。
「負けないぞ、戦うぞ」
 会場も叫び声で返した。大きな叫び声が響き渡り、広間の天井に吊されいたシャンデリアが揺れるのが見えた。椅子に上がって大声を叫ぶものもいた。会場は、激しい熱気にあふれていた。
 龍一は、筆を止め、その雰囲気に浸ってしまっていた。自分は、記者としてこの会場の様子を記録することが役割であったが、何だが、冷静にメモに走り書きをすることができなくなっていた。
 それは、自分自身が、新聞記者であることを深く自覚したために、新聞記者としての仕事ができなくなるという矛盾した感覚であった。 
 ここにいる記者たちと共通の想いを自分も持っている。言論の自由を守りたい。それが、新聞のためであり、それを読む民衆のためでもある。自分には、記者としてそれを守るために戦う義務がある。
 龍一は、一旦とめていた筆をまた走らせた。戦う新聞記者だからこそ、記録する義務があるのだと自覚したからだ。
 大西が演壇から下がると、次々と各社の代表が上がり、熱弁をふるった。
「言論の自由を守れ」「寺内内閣を打倒せよ」とのスローガンを誰もが連呼した。 
 数時間もの熱弁の後、大会は盛況裡に終了した。
 新聞社に戻ると、この大会の報道記事の執筆にとりかかった。他の取材記者と共に相談して紙面をどうするか考えることとした。
 明日の朝刊の一面にこの大会の模様を伝えた記事が載る。
 龍一は、現場取材記者として記事を書くことになった。大西記者がそうするように強く勧めたのだ。これは単なる報道記事だけになるものではない。記者としての宣言文の意味も込められている。龍一は、じっくり考え筆を取り、ゲラ原稿を書き進めた。
「この日は、日本の新聞界にとって記念すべき日になったのではないか。大阪ホテルに集まった一六六名の新聞記者たちは、政府の不当な言論弾圧と戦う決意を共有した。報道記事を差し押さえることでしか、自らの失策の解決を図れないようであれば、もはや統治権力者としての資格はない。誇り高き大日本帝国は今や恐ろしい最後の裁判の日に近づいているのではなかろうか。白虹日を貫けり、と古代の人が呟いた不吉な兆しが、雷鳴のようにとどろいている。この不吉な兆しが現実にならないよう、政府は直ちに報道規制を撤回し、また、このような報道規制の基となっている新聞紙法を改正すべきである。」
 ゲラ原稿を読んだ大西は、龍一に言った。
「白い虹が日を貫くってことが実際に起こるのか?」
「これはいわゆる比喩表現ですよ。古代中国の秦の始皇帝の時代、始皇帝に不満を持つ燕という国が始皇帝を暗殺しようと刺客を送るのですが、その時、空に白い虹が太陽を貫く現象を見て悪い予感がしたという言い伝えからくる故事成語です」
「そうか、さすがに上海で育っただけあり、中国には詳しいおまえらしいな。そいでもって、その刺客の暗殺は成功したんか?」
「いいえ、悪い予感通り失敗。燕の国も後に秦に支配されてしまうんです。つまり、国家が潰れるかもしれない兵乱が起こるという予兆でもあるのです。ちょっと難しすぎました?」
 大西の顔は心なしか不可解だった。やはりなじみない中国の故事成語をのせるのは問題あったのかと龍一は感じとった。
「いや、そんなことないで。よく書けとると思うで」 
 大西は、にっこりして答えた。
「じゃあ、明日の朝刊に僕の名前入りでこの記事が載るのですね」
「ああ、いよいよおまえも、戦う記者の仲間入りやな」
 龍一は、大阪朝夕の記者となってから初めて心沸く気持ちになった。それまでは取材して見聞きした事実をただ記事にするだけであった。自分の書いた記事を多くの人々が読んでくれることはそれなりに嬉しかったが、所詮は事実を伝えたに過ぎず、自分の意見を伝えるとこととは違う。何か記者冥利に尽きることをしたかった。
 英語では「ジャーナリズム」と、それを実行する人を呼ぶ「ジャーナリスト」という言葉がある。記事を書くだけでなく筆を使い、社会正義のために戦うこととそれを実行する人を意味する響きがある。龍一は、自分がそのジャーナリストになれるのではという予感がした。  


第11章に続く。
by masagata2004 | 2005-07-16 17:28 | 自作小説 | Comments(0)

ロンドンの思い出 1994年4月

あなたにとってのロンドンは?

私は、アメリカの大学を留学していた大学生だった。

イースターの休日を利用して行った旅だった。イギリスには、何とも暗いイメージがあったのだが、それが全く変わってしまったほど楽しく驚きに満ちた旅だった。

ロンドン塔、ウォーリック城、バッキンガム宮殿、大英博物館などなど。

そういえば、ロンドンの日本料理店の大将が言っていたな。イギリス人って傲慢だけど、日本人より大人だって。その時、ちょうど細川内閣が総辞職したニュースが流れた時期だったもんな。そのことに対し、そう言っていたのを覚えている。

そんな大人の国、イギリスは今度の事件にどう対処するのだろう。

すでにイスラムコミュニティに対する嫌がらせが相次いでいるとか。

この記事は、2005年7月、ロンドンでの地下鉄テロが起こった時に書いたものです。
by masagata2004 | 2005-07-14 22:33 | 旅行 | Trackback | Comments(0)

国連常任入りを目指す日本君、アメリカ君と中国君と対話

Excite エキサイト : 国際ニュース

日本くん: ねえ、アメリカ君、僕は常任理事国入りしたいんだ。中国君が嫌がっていて邪魔しているんだ。何とかしてくれないかな。

アメリカくん: ああ、いいよ。説得してみるよ。

中国くん: 冗談じゃないよ。これは特権だ。君だってイヤだろう、譲るのは。それに日本くんは過去のことを反省してない。何よりも僕の国の人民が嫌がるからね。それに君の仲間を増やすだけだろう。

アメリカくん: だってさ、日本くん。

日本くん: もっと説得してくれよ。イラク戦争支持して自衛隊まで送ったんだから。

アメリカくん: でも、郵政民営化まだだろ。それからさ、自衛隊が出て行くだなんていわないだろうね。

日本くん: いわない。いわない。何でもするよ。だから、お願い。

アメリカくん: だってさ、どうする中国くん、ちょっとは考えてやれば?

中国くん: 僕たちを日本はバカにしすぎているよ。うちらの人民にひでえことして戦争に負けたくせに、靖国に参拝して、どういうつもりだ。台湾のことでも、勝手なこといいそうだし。やだね。

アメリカくん: だってさ、ま、がんばりな。でも俺は、いつでも応援してるからさ。

日本くん: 本当に応援しているのかよ。突然、2カ国しか増やさないなんて言い出して。

アメリカくん: しかたないだろう。ドイツなんかはイラク戦争支持してくれなかったし。俺様のいうことに従う奴だけ支持するんだ。分かっているだろう。だからおまえは応援する。

日本くん: でも、それじゃあ、一緒に立候補しているドイツとかが反対に回ってしまうじゃないか。

その後、3人は、それぞれ、帰宅して、独り言をつぶやきました。

アメリカ: へ、日本なんてちょろいもんさ、そもそも俺にとって日本が常任理事国入りしようがするまいがどうでもいいんだ。というより、して欲しくはないけどよ、せっかくの特権なんだから。だが、応援している振りして、しゃぶるだけしゃぶるんだ。そして、どんどん言いなりにさせてやる。どうせ、バカな政治家や官僚どもの集まりだからな。ま、経済的には重要だから、顔たててやってるけどよ。ついでに、このことで日本と中国がけんかしてくれたら、俺たちは漁夫の利を得ることになる。しめしめ。


中国: 常任理事国だと。尖閣諸島や油田を譲るっていうぐらいでないとそんな特権ゆずれないね。どうせなら高く売らないといかんし。最初からやるつもりなんてなかったけど、人民が暴発し始めてからますますできなくなったな。こっちが認めたりしたら、政府の威信が崩れて内乱になりかねない。まあ、嫌いでも経済的に重要だから正面からぶつかりたくないけど。こうなったら、仕方ないよな。
だいたいさ、そんなに常任理事国入りしたけりゃ、普通考えるだろう、何をしたらいいかって、そんな頭もないのかよ、日本ってつくづく頭悪いな。

日本: 常任理事国入りを契機に、9条改正へと世論を盛り立てようと思ったが、今の現状じゃ厳しい。一度手にすれば、半永久的な特権だ。だから、いろんなとこに金ばらまいて支持集めしてきたのに。中国が難関だ。靖国も、こんなに大騒ぎになるとは思わなかった。アメリカも、さんざん尽くしてきたのに、要求ばかりして、何もやってくれない。内政でも外交でも失敗づくしだ。どうして、こんなに俺はバカなんだろう。
by masagata2004 | 2005-07-12 21:45 | 時事トピック | Trackback | Comments(0)

こりゃ、辞任しかないでしょう

Excite エキサイト : 国際ニュース


もう日本はお終いだな。でも、こんなのが、文部科学大臣やっているなんて、信じられないね。これで、女子高生なんかに援助交際はいけませんなんていえるのかよ。

この人は、はっきりいって精神病者なのかもしれん。ま、政治家なんて人格に異常のある人が多いというが、ふつう、それを表に出さないだけのしたたかさがあるというのに。

日本の国益はずたずただ。ある意味、この人は、中国や韓国の工作員なのかもしれないな。
by masagata2004 | 2005-07-12 21:20 | 時事トピック | Trackback | Comments(0)


人生は常に進歩していかなければならない


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