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2005年、私が選ぶ私が書いたブログ記事ベスト5


女性法廷の主催団体の会見に参加しました

天皇の戦争責任について

今日は反省の日、はしたないことしちゃった!

スーパーサイズ・ミー ムーア的手法のドキュメンタリー

映画「オールウェイズー3丁目の夕日」 昔は良かったという愚

お粗末でした。
by masagata2004 | 2005-12-31 23:37 | マサガタな日々 | Trackback | Comments(0)

楽しくいこうや



(動画を見るためにはQuickTime Player 6.5以上が必要になります。)


エジプト、アスワンでナイル川をヨットで横断した時演奏されたノビア人の音楽。

来年よい年になりますように! こんな楽しい日々が過ごせたら、という願いを込めて。
by masagata2004 | 2005-12-31 19:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

エジプトという国 考えさせられた世界の問題

先々週から1週間かけて旅したエジプトだが、今回はこの旅を通して知ったエジプト(現地ではMSTRと呼ぶ)の姿から、世界の抱える問題を考えてみた。

エジプトというと、ピラミッドなどの古代遺跡があり、そんな観光資源から、それなりにリッチな国というイメージがあるが、実際はそうではなく、第3世界の一員であることを知らされた。

まず、行く前に聞かされたこと、円を現地通貨に換金した場合、エジプトのポンドは、円に戻せないので、使い切ることと、それゆえ必要な分だけしか換金しないこと。ドルが十分通じるので、ポンドがなければドルを使えばいいと。つまり、エジプトの通貨は他の通貨に換金できるほどの価値はない。経済の状態からいって、信用度が低いということだ。

それから、現地ガイドの方が説明した言葉を引用すると、エジプトでは義務教育を終了せずやめてしまう人が多いということ。大学まで卒業しても、職がないので、学業をさせることに意義がないと思えてしまうからだ。平均賃金は、日本の10分の1以下だ。

各観光地には、安くてインチキ臭いおみやげを売る人々がたむろする。そして、子供が労働をしている姿が見られ、例えば、絨毯作りの工房では、子供が絨毯を紡ぐ姿を観光にしているぐらいだ。ガイドの人は学校に通いながらのアルバイトといっていたが、日本では間違いなく労働基準法違反。

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ホテルは外国人用を想定してか、表示は英語のみ。

考えさせられたことと言えば、エジプトの経済状態以外に中東の現状、特にイラク戦争以来の緊張状態というものも思い知らされる。

エジプト人ガイドは、ことあるごとに「アメリカは石油のためにイラク戦争をした」ということを我々観光客に話していた。相当な憎しみを感じた。日本も兵隊を送っている以上、人事ではない。

テロが頻発しているご時勢もあってか、観光地やホテルはどこも警備厳重で、必ず金属探知器をくぐらなければいけない。バス移動ではパトカーが護衛しながら走る程だ。

でもって、面白いことを知った。たまたま、私の会ったガイドさんの話から憶測することだが、イラク戦争の不当性を話すガイドさんに、私なりの持論で「日本の中国侵略と似たようなものですね」と話すと、ガイドさんはさっぱりの顔をした。どうやら、そのことをガイドさんは知らなかったようだ。かなり日本語が話せる知日派のようだが。
中東では、反米教育で原爆のことを話すらしいが、中国侵略や南京虐殺を教えられてないのだろうか。そうだとすると、ちょっと気まずい感じがする。

ご存知、イスラム教の国、ガイドさんはイスラム教徒で、モスクでは長々とイスラム教とは何かの講義をした。「イスラム教はテロの宗教ではない」ということを説明したがっていた。
道端ではよく、土下座する形の礼拝をする人々を見かけた。

また驚くことを知った。まあ、中東ならではのことだが、男性は妻を4人まで持つことが許されているのだ。女性は駄目らしいが。ただ、女性の地位が低いというわけではないらしい。女性の議員もいるらしいから。

経済状態の話に戻るが、これと同じような光景は、以前、旅したマレーシア、メキシコ、そして発展途上の中国でも見られた。貧富の差が激しく、貧しいというのは日本の「貧しい」というレベルではない。だが、実をいうとこういう光景は、むしろ世界では大半を占めるということを忘れてはならない。現状では、世界の富の8割は、人口では2割しか占めない先進国が握っている。
こんな不均衡が、テロリズムを生み出しているともいわれる。

観光を楽しみながらも、不安と罪悪感も感じざる得ない旅であった。
by masagata2004 | 2005-12-28 00:48 | 旅行 | Trackback | Comments(0)

機内で見たMR&MRS.スミス

14時間の成田からカイロまでのフライトの中で、この映画を見た。

機内映画というのは、たいてい上映中の映画を出したりするものでそれがいい。もっとも、古い設備で映写はあまり良くなかった。だが、娯楽映画だから、その辺は妥協できた。

話は、お互い殺し屋であることを秘密にしている夫婦が、お互いを殺しのターゲットにするようになった大騒動。見てない人には、ネタバレになるが、二人は結局殺し合うことができなくなる。

ところで、この映画は、実を言うと、私がアメリカ留学中に見たテレビドラマの映画化ではないかと思っている。それは、同じタイトルで、ドラマでは二人は諜報機関のエージェントでお互い夫婦の役を演じて、様々な諜報活動をする内容だった。ただ、ミセス役は美人だったが、ミスター・スミス役がぱっとしなかった。

ブラッド・ビットはかっこよかった。個人的には好きではないが。髪の毛を短くしていたためか、ブラビって確かにイチローに似ているなと感じた。アンジョリーナは、いかにもというはまり役だった。

非現実的な娯楽ムービーといってしまえばそれでお終いながらも、ハリウッドだから、そんな非現実性も娯楽化できてしまうのがおもしろい。ただ、何というか、それ以上の感想はない。

ところで、同じ機内で「バットマン・ビギンズ」という映画も上映していた。バットマンがバットマンになる経緯を映画にしたものだ。この映画も分かりやすい娯楽映画。ただ、バットマン好きでないと楽しめない部分もある。もっとも、主役の俳優の筋肉が売り物だった感じもするので薄っぺらいといえば薄ぺらい。正義の味方がそんなにかっこいいのかと文句をつけたくもなった。

14時間もの長時間フライトでは、こういう映画が合うのかもしれない。
by masagata2004 | 2005-12-25 20:56 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)

戦前のメリークリスマス

メリークリスマス、クリスマスおめでとう!

キリスト教でもないのに商売人に乗せられて、こんなことと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、この日本的商業クリスマス、意外に昔からあったようで、私はたまたま戦前クリスマスが一般に知れ渡っていたことを思わせる広告を当時の新聞から発見しました。
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ちょっとぼやけているようなので、説明をしますと「クリスマス・セール、銀狐 婦人帽子 12月24日迄 ギャラリー ヒツジ屋 数寄屋橋」

これは1937年(昭和12年)12月18日の読売新聞一面にあった広告です。「Xマス」という書き方も、当時からあったことには驚かせられます。

ところで、これのあった同じ紙面を飾ったトップニュースは何かといいますと、日中戦争で当時の中国の首都南京が旧日本軍によって陥落されたことを祝うものでした。でもって、この時に世界的に知られる大虐殺が行われたのです。以下は、その一面。

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このギャップには、何となく恐ろしさを感じてしまいます。当時の人からすると、南京陥落は最高のクリスマス・プレゼントだったのでしょうけど。
by masagata2004 | 2005-12-24 17:16 | ライフ・スタイル | Trackback | Comments(1)

気分は、すっかり吉村作治博士!

または、マスター・キートン、かっこつけるとインディ・ジョーンズ。
ピラミッド、神殿、ミイラ、私はたいした考古学マニアではないけど、それなりの衝撃を強く受けましたね。

先週から約1週間ほど、エジプトを旅してきました。

カイロまで14時間のフライト、空港ではパスポートの不備か私が怪しい人物に見えたためか1時間も足止め。だが、無事通過。

翌日、まずはピラミッド見物、ギザのクフ王ピラミッドからスフィンクス、階段型ピラミッド、屈折型、赤のピラミッド(一番下の写真)、ピラミッド三昧の翌日は、空路、アブシンベルへ、アスワンハイダム建設のため移転された遺跡、アブシンベル宮殿、それから、アスワンへ。イシス神殿、切りかけのオベリスクのある場所を見物。その夜はナイル川を帆船で横断し美しい景色が眺められるホテルに宿泊、アガサ・クリスティも愛した景色だとか。
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次の日、ルクソールへ、コムオンボ神殿、ルクソール神殿、カルナック神殿。

その次の日は、ツタンカーメン王の墓があることで知られる王家の谷、そして、日本人観光客11人がゲリラの襲撃で犠牲になったホトシェプスト女王葬祭殿、寝台列車に乗ってアレキサンドリアに向かう。

翌日はアレキサンドリアで国立博物館、ポンペイの柱、カプセルホテルのような遺跡カタコンベを見物。 その日の夜は、バスでカイロへ。ナイル川を一望できるカイロの高層ホテルの27階の部屋に宿泊。でもって、ナイル川クルーズとベリーダンスを見ながらの夕食。

翌日、考古学博物館を見学。ラムセス2世のミイラをみました。その後、モハメド・アリ・モスクに行き見物。その後、空港へ。飛行機で12時間かけて成田に帰る。

はっきりいって強攻軍でしたけど、楽しかったです。気候も良かったし、心配したテロの襲撃もなく、疲れながらも楽しかったです。費用は、保険から現地で使ったお金も含めて25万ぐらいだったから、十分だと、もっと見学するところを減らして、ゆっくり観光を楽しみたかったなと、それがちょっと心残り。

吉村作治さんは、エジプト人ガイドさんが言うには現地ではあまり有名ではないとのこと。まあ、外国人だからでしょうけど。でもって、早稲田大学の発掘チームの方々を階段ピラミッドの近くで見かけました。

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by masagata2004 | 2005-12-23 22:53 | 旅行 | Trackback | Comments(2)

ベリーベリーダンス



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ナイル川遊覧船内にて
by masagata2004 | 2005-12-22 00:19 | 旅行 | Trackback | Comments(0)

NHKが低視聴率巨人戦を放送し続けた理由が判明

Excite エキサイト : 芸能ニュース

つまり、エビジョンイルはこんなご褒美を待っていたのね。まあ、辞任しても、天下れる場所をきちんと確保していたわけだ。それも、受信料使ってだ。横領同然のことをしやがって。

海老沢NHK前会長、読売新聞に“転職” [ 12月21日 17時05分 ]
夕刊フジ


 NHK前会長の海老沢勝二氏(71)が、読売新聞社の調査研究本部顧問に就任することが21日、分かった。来年1月1日に委嘱する予定という。

 海老沢氏は今年1月25日、一連の不祥事や受信料不払いの急増などの責任をとって会長を辞任。翌26日にNHK顧問に就任したが、視聴者からの批判もあり、28日に辞任した。


 読売新聞社によると、同本部は社内外の知能を結集し、世界と日本が直面する問題の総合的な研究調査を行うという。同本部が設けた憲法問題研究会では憲法改正試案を公表している。海老沢氏には、講演会活動やメディア全般についてアドバイスを求めたいとしている。海老沢氏は渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長と親しいことで知られる。

by masagata2004 | 2005-12-21 20:09 | メディア問題 | Trackback | Comments(0)

エジプトから帰って来ました



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とりあえずご報告(^O^)/

後日体験談をお話しします。
by masagata2004 | 2005-12-21 12:45 | 旅行 | Trackback | Comments(0)

自作小説「白虹、日を貫けり」 第20章 失われていく自由

テーマは、ジャーナリズム、民主主義、愛国心。大正時代から終戦までの激動の時代を振り返りながら考える。

まずは、まえがきから第19章までお読みください。

 次の週、公演初日、満員御礼の中で「蟹工船」という題名の劇は始まった。北洋を航海して蟹を漁獲して船内の工場で加工する役目を担う蟹工船は、工場船であるため航船ではなく航海法は適用されない、だからといって陸地にはないため工場法の適用も受けない。したがって、労働者達は資本家にこき使われても何も文句が言えず、過酷な労働を強いられ全く人間扱いされず、監督者に日々暴力を振るわれる始末だ。寄せ集めで無教養な彼らも、過酷な境遇を共有することにより、予想もつかない抵抗心と団結力が生まれようとしていた。
 この劇の原作となった同名小説の作者、小林多喜二は共産主義者として知られる。龍一は、大西に共産主義者なのかときいてみた。
「わいは、不正を暴き戦う精神に共鳴したんや。共産主義とか、そういうもんはどうでもええ」
と大西は答えたので、龍一はほっとした。最近は、警察、とくに特別高等警察の共産主義者に対する取締りが厳しくなっていると聞く。治安維持法の制定が予想以上に影響していた。
 そして、「共産主義」という言葉から、この劇団の座長をどこで見たかを思い出した。満州にいた頃に見たのだ。満州で共産主義の活動家として知られた「久保田」という名の男だった。帰国して劇団を創設したらしいが、あくまでプロレタリア文学などの文芸作品の劇化を主とした活動としていると聞く。
 龍一自身、共産主義に共鳴する考えはない。ロシア革命が起こり共産主義国家ソビエト連邦が登場。資本主義の国々が二年前にニューヨークから始まった世界恐慌により過酷な状況に陥っていく中、共産主義に対する憧れが労働者階級の間で強まっていくのは必至だが、私有財産を制限した上で富を一国家で収奪し再分配する制度が真の解決策になるかは疑問であると考えた。
 だが、今の日本経済は悲惨な状況だ。六年に及ぶ海外生活から帰国して目の当たりにしたのは、変わり果てた人々と街の姿だ。以前より暗い表情をしている人々が増えた。通りには職にあぶれ物乞いをする者が目立つ。「大学は出たけれど」という歌が流行するほど、大学を卒業したものでさえ就職先を見つけるのが難しいほど失業者が溢れている。この状況を解決して貰おうと政治に期待したいのだが、政界は政敵同士が、互いの醜聞を暴露し合うという状況で不況克服解決策はなかなか立案されず国民はあきれ絶望感が増大するばかりだ。
 このような劇で悲惨な状況を訴えることでしか、不満の解消策はないのかと、考えながら見ていた。
「諸君、長い間待っていたこの時が来た。半殺しにされながらずっと待っていた。仲間を裏切ってはいけない。そして、力を合わせることだ。俺たちが団結すれば、彼ら如きをもみ潰すのはたやすいことだ」
と一人の漁師が集まった仲間に対して甲板の上に見立てた舞台の上で言う。
 劇は佳境に入った。
 とその時、どどっと騒々しい音が劇場の後方から聞こえてきた。数人の警官が中に入ってきたのだ。観客は振り返る。
「この劇はやめだ」
と一人の警官が大声で叫び劇を中止する。
「何をいっとんや、ちゃんと保安課の許可を得たもんやで」
と最前列に龍一と肩を並べて座っていた大西が立ち上がり、警官に詰め寄った。
「座長の久保田はいるか」
 中断された劇の上手から久保田が出てきた。
 警官は、ずけずけと舞台に上がって来た。
「貴様らを治安維持法違反で逮捕する」
 しばらくの間、静まりかえっていた劇場内がざわざわとし始めた。
 すると、さらにどどっと制服警官が劇場内に入ってきた。舞台の上の役者をどんどん引っ張り出してくる。
 そして、三人ほどの警官が、大西を囲み、さっと腕を取り手錠をかけた。そして、さっと引っ張っていく。
「待ってくれ、これは一体どういうことです?」
 龍一は、警官に対して言う。私服の刑事らしき男、先週の稽古で見た顔、その男が反応して言った。
「お前は誰だ?」
「朝夕新聞の記者、白川龍一です。治安維持法ってどういうことです?」
 龍一は怒りを込めて言った。
「こいつらは、共産主義活動を組織して国家の転覆を謀ろうとした」
「待ってくれ。共産主義って、この人は違う。私のよく知っている人だ。彼は共産主義者じゃない」
 龍一は大西を見つめながら言った。
「こいつも久保田の仲間だ。共同謀議の可能性があるので取り調べる」
「待ってくれ。これは不当逮捕だ」
 龍一は、引っ張られる大西の後を追う。そして、劇場の外にまで出た。
「大西さん、言ってください。あなたは共産主義者じゃないでしょう」
「わいはこいつらの仲間や。それには変わりあらへん」
 大西は無表情に言った。龍一は、じっと見つめた。まただ。十二年前と同じ光景、同じ苦しみが再び襲ってきた。 

 翌日の各新聞の一面には、久保田を筆頭とする共産主義結社が劇団を隠れみのにして国家に対する破壊活動を計画していた容疑で逮捕されたと報じられた。各紙は、大西を含め劇団が共産主義革命を起こそうとしていたのには間違いないという書き方だった。大西が、元大阪朝夕の記者で新聞紙法違反で刑に服したことのある経歴も紹介され、反体制的思想の持ち主であると書かれていた。
 それが警察発表だったため、そのまま報じられた。国際部所属の龍一は、社会部に頼み込み、この事件を憶測だけで誇張して報じないようにして貰った。社会部も朝夕の元記者であることの配慮から、事実を淡々と述べるだけに終始し、「まだ、はっきりしない部分もある」「捜査の状況を見守るべき」と冷静な判断を促すような言葉を含ませた記事を載せた。
 龍一は何度も警察署に行き大西との面会を申し込んだが、面会は拒絶された。
 数日後、事件に新たな展開が起こった。それは、劇団の役者がほとんど退団を申し出て釈放されたということだった。また、今後プロレタリア文学の劇を演じないことも誓約した。だが、久保田とその他の劇団員は退団や思想の転向を拒み、拘束されたままでこのまま裁判にかけられることになる。六年前に制定された治安維持法は、三年前の改定により厳罰化され、最高刑が死刑又は終身刑にまでなっている。転向を拒否すると言うことは、ただならぬ決意である。
 
 龍一は、五度目の面会申し出を拒否され、拘置所を出たところで、ある人物と十二年ぶりの再会をしてしまった。
「岸井部長!」
 驚きで一杯だった。一二年前、大阪朝夕を退職して、それ以来、ずっと会っていない。もう部長ではない。。一二年の歳月のせいか、一目見ただけでは分からなかったが、懐かしい記憶が一挙に蘇った。
 岸井も大西と面会しようと拘置所を訪ねようとしていたという。岸井は、今は高等学校で国語の教師をしているという。
「久しぶりだ。けっして喜ばしい再会とはいえないが」
 二人は、居酒屋に入り、日本酒を飲みながら対面していた。
「本当にお久しぶりです。どういっていいのか。あれからお元気でしたか」
「何と言っていいのかな。まだ新聞記者に未練があるのが正直なところだよ。だから、元部下が、いや、私にとっては同志ともいえる記者がこんなことになって残念でならない」
 岸井は、苦しい面もちで龍一と目が合わないように顔を下にもたげ御猪口をすすった。
「まさか、大西さんが共産主義者だったと疑っているのでは、それは違うでしょう」
「もちろん違う。彼はそんな考えは持っている方ではない。確かに反体制的な考えをしていたが、だが、共産主義とは一線を画す考えの持ち主だ。十二年も会ってないが、そんなに考え方をころころ変える男でないのはよく知っている」
 かなり確信を持った話しぶりであった。
「でしたら、大西さんを救いましょう。そうです。記事を書くのに協力してください。警察の誤認捜査だというんです。岸井さんが、知る限りのことを話して、身の潔白を証明させるんです」
「私も協力したいのだが、きっと大西が嫌がるだろう。私や、ましてや君が救い出そうとすることを。自分の手で、今度こそ戦い抜きたいはずだ。妥協などせずにね」
「でも、このままでは刑務所に入れられて、今度は何年も出ることが出来なくなるかもしれません。そんなの辛過ぎます」
「だが、今度だけは、彼のやりたいようにさせたいんだ。彼の信念の赴くままに。大西君はきっと共産主義ではなく、言論の自由を守りたいがために抵抗を続けているんだ。今度こそは、彼のやりたいように」
 龍一は、岸井の話しぶりに不自然さを感じた。「今度こそは」という言葉が、心なしか引っかかった。
「社の存続のために控訴を断念したことは確かに悔やまれますよね。でも、今度は大西さん自身のためなんです」
 龍一がそう言うと
「{白虹日を貫けり、と古代の人が呟いた不吉な兆しが、雷鳴のようにとどろいている。}という言葉だったな。中国の史記にある言葉だったな。あんな格言、よほど中国に造詣の深い者でないと使いたがらないと思った」
 岸井のほっぺは酒で赤らみ、話し方も酔い調子になっている。
「何を言い出すんです?」
「あれは君が書いた記事だろう。分かっていたんだ。それを大西君が、君の身代わりに」
 龍一は言葉を失い、体中に身の毛がよだった。
「だから、彼には言ったんだ。君を突き出されたくなければ、控訴を断念しろと。会社のためにも断念しろと説き伏せた」
「何ですって?」
 龍一は、胸をぐさりと刺された感じがした。
「会社を守るためだった。言論機関を潰してはならない。そのためには妥協も必要だと考えた。だが、だが、普通選挙が実現しても治安維持法とか出来て、自由は縛られていくばかりだ。そんなことなら、あんな妥協をさせるんじゃなかったと。悔やまれて仕方なかったんだ。大西君は会社のことはどうでも控訴するつもりだった。戦い抜くつもりだったが、彼の弱みにつけ込んで、彼の意志に反することをさせてしまったと思っている。だから今度こそは・・」
 酔いに任せて放った言葉に龍一は、言い返す言葉がなかった。岸井を責めるわけにもいかない。大西が自らの身代わりになることを龍一こそが容認し、大西の意志に沿うという口実で自らは、記者としての歩みを続けて来た。大西が控訴を断念した理由に自分のことがあったことは考えれば分かったはずだ。本来なら自分が被るべき罪状を代わりに被ってくれた。犠牲を強いたのは、龍一自身であったといってもおかしくない。そんな自分に誰を責めることができよう。
 岸井は酔いつぶれ、座ったまま眠りこけてしまった。
 龍一は立ち上がり、勘定を二人分支払い、居酒屋を出ていった。
 龍一は思った。何が何でも大西を救い出さなければ。

第21章に続く。
by masagata2004 | 2005-12-13 23:36 | 自作小説 | Trackback | Comments(0)


人生は常に進歩していかなければならない


by マサガタ

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