<   2007年 02月 ( 14 )   > この月の画像一覧

「華の嵐」を思い出す俳優

Excite エキサイト : 社会ニュース

高松英郎さんがお亡くなりになったそうで。

この人は、名脇役として知られいろいろなドラマに出ているようだが、私の記憶では、「華の嵐」が印象に強い。お昼のメロドラマでは大変人気を博したもので、渡辺裕之と高木美保が主演。舞台は戦前から戦後直後にかけて、高木美保演じる貴族の令嬢と高松英郎演じる父親の男爵に対し復讐を企む男(渡辺裕之演じる)が、身分を超えた恋仲になるという話しだ。時代背景をうまく使ったストーリー展開が醍醐味だったような気がする。

ただ、ドラマは気に入っていたがミスキャストだったと思う。男爵というがらではなかったから。あの当時、そのメロドラマのせいで、日本の近代史に関心を持つようになって、その時に得た知識が、今のブログでの連載小説にも多少なりとも役立っている。でも、かなり時代考証が雑でもあった。また、予算の制限もあったのか、セットがちゃちかった。今振り返ると、そんなに面白いドラマでもなかったような。はっきりいってくだらなかったか。あの当時の自分は充分楽しめたのだから、まだ子供だったな。

自分が書いている小説の方が、実際、面白い。

いい記事だと思ったらクリックしてください。ランキングへ
by masagata2004 | 2007-02-27 23:20 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)

小説で地球環境問題を考える Part 1 

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。


「院長先生、正直に教えてくれませんか?」
 明智清太郎は、困惑気味な表情の医師を見て言った。明智の主治医である野村院長は、手にカルテを持ち椅子に腰かけていた。
 机の上には蛍光板に照らされたレントゲン写真数枚がかけられ、内臓の様子が写し出されていた。
「そうですね。あなたには、はっきり申し上げたほうがよろしいでしょう。あなたのような立場の方には、隠すというのは適切でないでしょうから。診断の結果、腫瘍が発見されました。それもかなり進行しています。もともと膵臓から発生したものなんですが、胃や肝臓などの他の臓器にも転移しています。これだけ腫瘍部が広がっていると、摘出して治療するのは不可能です。お仕事がお忙しかったとはいえ、こんな状態になるまで放っておかれるとは・・・」
 野村院長は凍った目をして、明智を見つめる。
「では、先生。実際のところ、私は助かるのでしょうか?」
「残念ながら、もってあと1ヶ月というところでしょうか。私もこんなことを申し上げるのは大変つらいのですが」
 明智は、がくんと肩を落とした。今、まさに人生で最大の難関に直面しているのだ。これまで、幾度も大きな難関に出くわしてきたが、これほどまでに大きなことはなかった。
 明智清太郎は、年齢六十五歳、白髪頭の貫禄ある老人だ。肩書きは日本で指折りの資本力を誇る総合商社、明智物産の社長である。明智物産は、総売上高一兆円以上、総従業員数十万人以上、世界中に百以上の支社を持つ巨大企業だ。
 明智清太郎は、日本で、いや、世界でも指折りの富豪だ。もっとも、偶然にそんな富豪になれたんではない。
 明智清太郎の生まれは、北海道の貧しい農村だった。高校卒業後、身一つで上京した。小さな缶詰工場で営業マンとして働き始め、実績を上げた後、そこの工場長に就任、缶詰の製造と販売を一手に引き受けるために食品会社を設立、それを足掛かりに、事業を次々と起こした。
 食品会社の次は運送会社、そして、海外との貿易をすすめるため貿易商社を築いた。事業はおもしろいほどにうまくいき、規模は、うなぎ登りに拡大していった。分野も建設、電気などと多方面に渡り総合商社と呼ばれる規模となった。
 もちろん、数々の困難もあった。資金を調達するために銀行の融資をもらうのは並大抵のことではなかった。高卒という学歴だったため、信用を得ることはたいへん難しかった。
 だが、八方まわり、苦労に苦労を重ね、資金をぎりぎりの分まで調達。それでも資金不足に悩まされたが、高度成長時代の日本経済の支えがあり、予想以上の収益を収めることができたのだ。
 また、人間関係のトラブルにも数多く出くわした。ライバル企業の陰湿な妨害、信頼していた部下の裏切り、そのたびに清太郎は顔を紅潮させ怒ったが、そのエネルギーを糧に利益拡大の事業展開に精を出すようにした。
 そんな事業拡大による栄えある人生の中、清太郎は数々の恋愛を経験した。そして、葉子という女性と結婚することになった。
 葉子は、取引相手の娘であった。強い信頼関係から紹介された女性であった。葉子は、お嬢様育ちで美しく気立ての良い女性であった。清太郎は、出会ったときからすぐさま気に入ってしまった。葉子も、同様であった。仕事上の都合と二人の恋愛感情がうまく符合し、結婚は成立した。
 結婚から数年後、夫婦の間に女の子が生まれ由美子と名付けられた。由美子は愛らしく、清太郎にとっては自分の妻と会社同様にかけがいのないものとなった。
 しかし、由美子が生まれて数カ月程経ったある日、明智家に悲劇が襲った。葉子が外出中、交通事故にあい死亡したのである。
 清太郎は気が狂わんばかりであった。せっかく愛する娘を授かったという時に愛する妻を失うことになり、堪え難いショックを受けた。
 赤ん坊だった由美子は、母親の死を知るには、あまりにも小さ過ぎた。
 由美子は、母親似の美しい容貌に清太郎によく似た強情で負けん気の強い性格を兼ね備えた子であった。自分に母親がいないことを気にすることなく明るく活発な少女へと成長していった。
 そんな由美子の姿を見ながら、清太郎は妻の死による悲しみから立ち直り、唯一の肉親である娘のためにと、さらなる事業拡大に力を注いだ。
 由実子には、何不自由のない生活を送らせた。高等な教育も受けさせた。自由奔放にやりたいことをやらせた。娘の幸せを願い、いずれは会社を引き継がせるつもりで頑張り通した。

 だが、それが、もうままならない。あと半年の命、娘は、二十四歳、ちょうど、留学先のハワイの大学を卒業したばかりだ。まだ、会社を引き継がせるにはおぼつかない。
 娘が会社を引き継ぎ、その次の後継者となる孫を生むまで、死んでも死にきれないのだ。
 どうしてくれよう。これじゃあ、今までの苦労はなんだったのだ!
 ここにきて自分の書いた人生のシナリオを閉じなければならないとは。なんという無念だ。
 
 社長専用のロールスロイスで野村総合病院から新宿ビジネス街の明智物産ビルに着くと、さっそく秘書に連れられ、ロビーを通り抜け社長室へ向かった。社長と秘書が歩く姿を見るなり、通りがかった社員たちは条件反射的に頭を下げる。清太郎と秘書は、最上階の社長室へ直通で行く専用のエレベーターに乗りこんだ。
 エレベーターには、革張りの長椅子が備え付けてあった。最上階の五十階まで約一分の間、清太郎は椅子に座り考えにふけった。エレベーターのガラス張りの大きな窓から、眼下に広がる大都会東京の壮大な景色が眺められる。経済大国日本の繁栄を、そのまま象徴するかのような景色だ。
 社長室に着いた。
 エレベーターを降り、しばらく歩くと、またもや革張りのどっしりとした椅子に腰を下ろした。目の前には、とてつもなく大きく台の広い机が置かれている。さっそく、いつものように、机に置かれた書類を開き文面に目を通した。
 コン、コン、と誰かがドアをノックする音が聞こえた。
「社長、石田でございます」
 石田だ。
「入り給え、英明くん」
 清太郎は言った。
「失礼いたします」
 石田英明が、ドアを静かに開け、中に入ってきた。普段は社員が社長室に出入りするには秘書を通さなければならないのだが、この男、石田英明に関しては別であった。
 英明は、清太郎から特別の信頼を受けている。三十歳の若さで清太郎により副社長に任命された程だ。
 慶応大学経済学部を卒業。その後、アメリカへ渡りハーバード大学大学院で経営学修士号(MBA)を習得し、アメリカの商社に入社。そこでトップセールスマンとして活躍していた時に明智物産より引き抜かれた。入社後は期待通り驚異的な実績を上げ、出世街道まっしぐらだった。
 ビジネスのやり方が、強引だと文句も聞かれるが、彼の会社への貢献度は抜群のもので取締役員の中では最年少の三十歳の若さで副社長に就任できたのも、その彼の実績による結果だった。
 今や年功序列、終身雇用という言葉は死語である。明智の求める人材というのは、利益を上げ、会社の株価を上げ、実績を数字で表わせる者共だ。年齢や勤続年数など関係ない。それが明智物産の方針だった。
 英明とは、まさにそういう男だった。
「社長、検査に行かれたとお聞きしましたが、いかがでございましたか?」
 英明は、遠慮深い口調できいた。
「なあに、たいしたことはなかった。今までの仕事の疲労が貯まったためだということだった。もうわしも年だ。無理はできん。当分は商用で遠出するようなことは控えなければな」
 明智は、医師には一切公言は慎むようにと注意をしてきた。明智物産社長が、癌で半年の命ということが知れ渡れば、社内はもとより財界全体が大騒ぎとなる。余計な混乱は避けたかった。とくに今は、いままでにない大規模な事業をすすめている最中でもあるのだ。 
 いくら最も信頼する部下の英明であろうと、また娘の由美子さえにも話すことは出来ない。今はそんな大事な時期だ。
「それは何よりです。体調がお悪い様子でしたので、ずっと心配でした。これからは、あまり無理をなさらないでください。私で出来ることがありましたら、社長の負担を少なくさせることは出来ますので」
「それはありがとう、英明くん。だが、もう心配はいらんよ」
 明智は、ぐっと気合いを入れて答えた。
「ところでですが、社長。今回のプロジェクトの書類には目を通されましたでしょうか」
「ああ、一通りな。土地の選定は決定したんだろう。最終処理は、君の仕事だったな」
 プロジェクトというのは、スワレシアという東南アジアの新興工業国の首都周辺に予定されている水力発電ダム建設のことだ。完成すれば貯水量、供給電力量ともに東南アジア最大規模のダムとなる。
「計画は、順調に進んでおります。スワレシアの大統領が発案し、国家総動員の事業なのですから」
「ところで、英明くん、由美子のこと考えてくれたかね」
 明智は、突然、話題を変えた。
「社長、考えるもなにも、願ってもないお話です。お嬢様のような素敵な方と一緒になれるのですから」
 英明は、大きな笑顔を作って言った。
「そうか、それはよかった。私もこれで少し肩の荷が降りる。娘には君のような男に面倒を見てもらう必要がある」
 明智は、満悦の笑みを浮かべて言った。
「ところでお嬢様は、今日、ハワイからお帰りになるそうで」
「ああ、そうだ。まったくあのじゃじゃ馬娘、五年ぶりにやっと日本に帰ってくるんだ。何だか、あっちの大学で環境学とかいうわけのわからんことやっておって、結局は遊びほうけてばかりいるんだ。日本に帰ったら、この会社で働いて、みっちりしこまなきゃな。英明くん、頼んだよ、由美子のこと」
「お任せください、社長」
 英明は自信あり気に顔をほころばせた。
「そうだ、英明くん。今日は、会議に出席せんでもいい。由美子を成田に迎えに行ったらどうだ」
「いえ、社長。それが、半年前、ハワイにお嬢様を訪ねましたところ、帰国の際は、迎えになど絶対来ないでくれと言われまして」
「なんだと、由美子の奴、君がわざわざ迎えにくるというのに、そんなことを。けしからん!」
「社長、もしかしたら、由美子さんは照れてらっしゃるのではと?」
「あの娘に照れることなどあるか!」
 明智は怒りを込めて言った。娘の由美子にはまったく困ったと、せっかくの肩の荷が重くなってしまった。

 英明は、明智と会議の打ち合せを済ませた後、社長室を出た。

 副社長室のある階へ戻るエレベーターの中で英明は背広のポケットから、携帯電話を取り出した。ある番号を押す。
「野村総合病院です」
と事務員らしい女性の声が耳元に響いた。
「野村院長を頼みます。石田と伝えて下されば分かります」
 しばらく待つと、英明は言った。
「やあ、院長さん、それで検査の結果はどうだったんだ?」
 野村院長の発する言葉を耳元で聞く。そして、
「そうか、やっぱり、癌だったのか!」
 英明は、満悦の笑みを浮かべた。

Part2に続きます。

この小説の著作権は、このブログの管理者マサガタこと海形将志にあります。
by masagata2004 | 2007-02-24 21:10 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)

大人になるということ Part 5 自分を好きになろう

Part4に続き、これがこのシリーズの締めくくりとなります。

これまで、とても否定的なことばかりを述べてきましたが、締めくくりの最後は、ポジティブなことを話します。

これまでは、世の中は厳しい。正論は通じないし、夢は叶わないし、運の良し悪しが人生を左右すると話してきました。

ただ、そんな中で落ち込んで、自分は駄目だと思っては意味がありません。というか、そんな駄目な自分を好きになっちゃいましょうと。そういう提言です。私も最終的には、そう考えて、生きていくことにしました。

世の中、完璧でないし誰もが完璧ではありません。そして、皆、完璧でない運命を背負ってこの世に生まれていきます。金持ちの家に生まれること、貧乏な家に生まれること、日本人に生まれること、アメリカ人に生まれること、北朝鮮人に生まれること、白人に生まれること、黒人に生まれること、アジア人に生まれること、男に生まれること、女に生まれること、異性愛者に生まれること、同性愛者に生まれること、両性愛者に生まれること、体や精神に障害を持って生まれること、そういうことは誰もが選べることではありません。

そんな運命を呪い、そんな運命を背負った自分を憎んだり人はするものです。そして、自分以外の境遇の人間を羨んだり、ねたんだりするものです。金持ちになった人、スターになった人、エリートの地位を得た人に憧れるものです。

でも、それ以外の生き方でも、十分、人間は幸せになれますし、幸せの定義は人それぞれです。また、仮に不幸であってもいいのです。そんな自分を、人生劇場の主人公にしましょう。駄目な自分を主人公とした小説を書くつもりで、書きながらその主人公に惹かれていきましょう。考えてみれば、誰もが他には持ってないものを持っているのです。いずれにそれに気付きます。ですから、それを活かしましょう。他人は他人、自分は自分です。世間体は、所詮は世間体です。世間一般の価値観はメディアなどにより何の根拠もなく形作られるいい加減なものが多いのです。

人生における失敗を悔やまないこと。皆、失敗はします。それよりも今後失敗しないように未来に向けて策を練ましょう。いろいろなことがあって人生です。で、もしかしたら失敗と思ったことが、後に発想の転換で良かったと思えるかもしれません。思い通りにいかないのもいいかも知れません。

といっても、割り切るのは難しく現実を受け入れられないことって世の中にたくさんあります。大人になるということは、そんな現実を知り、受け入れ、そんな現実とそれに適応して生きる自分を好きになることかもしれません。

では、皆様も立派な大人になりましょう。

いい記事だと思ったらクリックしてください。ランキングへ
by masagata2004 | 2007-02-21 21:06 | ライフ・スタイル | Trackback | Comments(0)

シバレイ様、この記事をどう思います?

たまたま、物置の整理をしていて見つけた6年前の雑誌。
ニューズウィーク日本語版、2001年8月1日号
b0017892_1415252.jpg


MIT(マサチューセツ工科大学)の気象学の教授、リチャード・リンゼン氏は、地球温暖化は誇張され過ぎていると。今世紀末には、気温が3-4度上昇すると予想されているが、氏の予想によれば1度未満だと。もちろん、産業活動が温暖化に与える影響は否定しないが、でも、そんなに大きくないと。また、シミュレーションは、あてにならないとか。サンプルにする海水も、適切なものを使っているとは思えないとか。データも大雑把なものでかないとか。

また、同じ記事の中で、ニューズウィークのパリ支局長のクリストファー・ディッキー氏は、環境保護団体は、寄付金集めのために脅威を煽っているという論説を書いている。これまでの社会問題は、地域単位のものが主流だったが、ここにきて地球全体で騒げる問題が出てきたので、大喜びだと。

最も、この記事は6年前の話し。だから、今はまた状況は違うと思う。ちなみにこのリンゼン氏は、ブッシュ大統領にホワイトハウスでご招待を受けた学者だそうだ。本人は民主党支持者だと主張しているが。

でも、数年前の雑誌を見るのも面白い。この時は、あの911の1ヶ月程前。ビンラディンが新たなテロを仕掛けているという警告を米政府が出している記事が掲載されている。でも、まさかあの超高層ビルが崩壊することまでは予想してなかったのだろう。

その他、憲法9条を改正して平和を守れと提言する日本通のアメリカ人政治学者のコラム。ウォーターゲート事件の真相を暴いたワシントンポスト紙の女社長の伝記記事とか。買った当時は読んだのか覚えていないが、再び読んでみたい。

シバさんも読みたいですか。
by masagata2004 | 2007-02-18 14:15 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(1)

映画「ヒマラヤ杉に降る雪」 日系人の苦難の歴史

それを真正面から見つめた作品だった。

工藤夕樹の演技と英語(ネイティブ並)がどんなものかと思い、レンタルのDVDで見た。

ストーリーは、1954年のアメリカ西部の漁村の海で、漁師の死体が引き揚げられ、殺人容疑をある日系人男性がかけられ逮捕される。地元の新聞記者イシュマルは、工藤夕樹演ずる容疑者の妻ハツエとかつて恋仲であったが、彼女との恋を成就できなかった未練から当初は傍観する。

だが、無罪を証明する決定的な証拠を見つけ判決が出る直前に提出、彼女の夫と彼女を救う。

物語は、戦前から戦後にかけ、日系人の人々が歩んだ苦難の歴史を綴ったものだ。まあ、日系人に申し訳ないというアメリカ人の想いが込められていた感じの映画だ。これって被告を黒人にした似たようなストーリーで映画が数多くあるので今更驚くことではない。ちなみにこの映画のようなストーリーは評判が良くない。差別を受ける当事者の視点ではなく、善良な白人が可哀想なマイノリティを救うという形だからだ。

この映画には、このブログで連載している自作小説と共通する場面があったので、それが印象的だった。それは、イシュマルの父親が真珠湾攻撃の直後、日系人を擁護する記事を書いたがため、誹謗中傷や広告のキャンセルなどのバッシングを受けるところだ。満州事変後の朝日新聞にもあったことで、それは侵略を支持する世論に同調しなかったため受けた圧力だった。

最近では、911後の米マスコミや、北朝鮮による拉致認定後の日本マスコミにも共通したことだ。情動により偏見が増幅される現象だ。そして、どんなに正論を言っても、誰も聞く耳を持たない。

現在、米の下院議会で日本軍の元従軍慰安婦が証言に立ち、日本政府に公式な謝罪を求める決議案の公聴会が開かれている。この決議案を提案したのは、日系人議員のホンダ氏だが、この人も映画に出てきたような苦難を経験したのだろう。その意味で、祖先の国を糾弾する立場に回り、自分がアメリカ人であり、日本に加担しない者であると見せたかったのか。それとも、祖先の国が正義を全うしてくれることを望んでのことか。私は決議案には反対だが、ホンダ氏は立派なことをしていると思う。

ところで、日系人の苦難といえば、近々「東京ローズ」という映画が制作されるらしい。東京ローズと呼ばれた実在した日系人女性の物語で、この映画と似たような日米戦争により過酷な運命を辿る日系人の歴史を浮き彫りにする。誰が主役を演じるのか分からないが、工藤夕樹が日米での知名度で言えば最高なのだろう。この映画でも法廷での証言シーンや、社会の偏見に打ちのめされる演技を見事に見せたほどだし。もちろん誰になるか分からない。

ちなみに私は、工藤夕樹の英語上達レッスンDVDを購入して、発音の学習をしている。さすが、ハリウッドで頑張っているだけある。

いい評論だと思ったらクリックしてください。ランキングへ
by masagata2004 | 2007-02-17 20:59 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)

自作小説「白虹、日を貫けり」 第49章 炎

テーマは、ジャーナリズム、民主主義、愛国心。大正時代から終戦までの激動の時代を振り返りながら考える。

まずは、まえがきから第48章までをお読みください。


 ベネット博士との対話は、まず、基本的な日本の歴史についてからだ。天テラスなどの寓話から、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、江戸、そして、明治に入り近代に至るまで事細かにお互い語り合った。博士のこれまで目を通した文献に加え、リッチーがこれまで培ってきた知識を合わせ話し合った。もっともリッチーが日本の学校で学習してきたことは、必ずしも正しい知識であったとは言い難い。それは、日本が明治以来、明治政府を中心とする中央集権国家を目指すがため国策的にねじ曲げられたところがあるからだ。
 日本という国が統一された国民国家であった歴史は実をいうとけっして長くない。戦国時代までは島国の中に数多くの勢力があったのを内戦に勝利した徳川家が統治する江戸幕府により日本という国の形が出来たが、それも二世紀半後、力を失い分裂の危機を迎える。危機は国内のみに留まらなかった。アメリカ海軍のペリー提督率いる黒船来航により欧米列強勢力の脅威にさらされることになる。
 その危機を救ったのが各地方にいた武士階級のエリートたちだ。分裂する日本をまとめ上げるため、近代国家日本を江戸幕府にとって替わるものとして築き上げた。危機に対し真正面に立ち向かう武士道の教えにより成し遂げられたものである。それにより、各地方を統治していた藩は廃止され、中央集権政府に任命される県の知事が統治することになる。封建的な制度は廃され、西欧の近代文明をどんどん吸収していくこととなった。そして、アジアで初の憲法も制定された。
 国家を統合する役割は、これまで表にはなかなか出てこなかった「天皇」が担うことになった。天皇を中心とする立憲君主制国家となったのだ。しかしながら、緊急時を除き実質的に天皇は象徴的な役割しか担わず、法律立案や行政は議会と政府が執り行うことになった。西欧に似た議会民主制を目指したのだ。また、「富国強兵」の号令の元、軍備も強化されていくことになる。
 日本は欧米の帝国主義勢力に対抗するためアジアにおける領土拡大を目論む。朝鮮半島を攻め植民地化して、その後、中国大陸での権益拡大を目指す。その過程でロシア帝国と争うことになる。日本は、その戦いに勝利する。それは小国が大国を破るという前例のない偉業であった。
 第一次世界大戦後、デモクラシー運動が盛んになった。リッチーも、その運動に加わった自らの歴史を振り返った。新聞記者となり普通選挙運動、婦人参政権運動、米騒動などの民衆運動を取材した。だが、自らの書いた記事により新聞社が政府から言論弾圧を受けた。帝国憲法では、言論の自由は「法律の範囲内」という曖昧な定義により制約され、統治権力が介入することもしばしばあった。だが、そんな中でもデモクラシーを求める運動は絶えず、ついには男性の普通選挙法が実現する。
 しかし、状況は世界恐慌の到来で一変する。世の中が不況にあえぐ中、政府は有効な対策を打てないがため、軍部が台頭してしまったのだ。本来なら、軍部は政府の方針に反することはしないものなのだが、帝国憲法の欠陥ともいうべき軍の統帥権が中央政府から分離していたことが悪用されてしまった。
 しかし、この軍部の異常なまでの台頭は、制度的な欠陥にだけ起因するものではなかった。それは、世論の後押しのせいでもあった。中国やロシアとの戦争に勝利し、帝国主義勢力の仲間入りをした国民は侵略戦争に異論を持たず、また、不況から抜け出す手立てとして軍の行動に期待を寄せたのであった。新聞もそんな世論に同調した。リッチーは、そんな変わりゆく日本に絶望し、新聞記者を辞めることになった。
 南京での惨劇を思い出し、涙を流しながら、婦人に体験を語った。歯止めが効かなくなるほどに暴走していく日本をただ見守るだけでは済まなくなり、日本に戻り首相補佐官となったこと。だが、政府も軍部の暴走に何ら歯止めをかけられず、チャーリーの誘いにより反逆行為に乗り出す。日本は、母なる祖国ポーランドを占領したナチスドイツと同盟関係を強化、ついには首相の座も軍部に牛耳られることに。ナチスや日本のファシズム勢力の台頭を容認できないアメリカは、これまでの孤立主義を捨て日本へ様々な制裁を課す。それは、日本を戦争に駆り立て、それによりファシズム勢力を排除し、世界に新たな秩序を築く目論見を実現するためであった。
 ワシントンに在住しながら、月に数回の割合でペンタゴンを訪ね、ベネット博士との対話に応じてきた。ただひたすらいろいろなことを話した。日本の歴史、これまでの自らの経緯に限らず、日本人の思想、信条、宗教観、家族観、趣味などなど。ベネット博士は、矢継ぎ早に様々な質問をしてくる。その度にリッチーは悩みを隠せなかった。どう答えていいのか分からなくなることが多かったのだ。しかし、その度にベネット博士は、こう言ってリッチーに塾考させ答えを引き出さそうとする。
「問題なのは答えがないことじゃないの。答えがあり過ぎることなのよ」

一九四五年三月 大阪
 深夜の大阪市、中之島にある朝夕新聞ビルの一室で一人の男が筆を取っていた。宮台真司編集局長だ。かつては、国際部の記者であったが、満州事変以後、軍部礼賛の記事を書き続けることにより売上部数の向上に寄与したことが認められ、編集局長に出世するまでに至った。
 三日前、帝都東京が空襲を受けたことに関する記事を推敲しまとめていた。多数の死者が出たことには触れず、敵機が低空で侵入したが、それを十数機撃墜させたことが主題になっている大本営発表を元にしたものだ。「鬼畜米英」には負けていないという戦意高揚を目的とした記事だ。しかし、そんな記事が何の役に立つのかと、日に日に戦況がひどくなるにつれ思う。そして、誰もが口にしないが分かっていることがある。それは日本が戦争に負けるだろうということ。軍が力を失い、外地で惨敗を喫しているのは分かっている。撤退を「転進」という言葉を使って誤魔化し続けているのも分かっている。
毎日のように日本中のあちこちが空襲に遭っている。敵が日本の制空権を握っているのは誰の目にも明らかだ。
 ブー、と空襲警報が鳴った。宮台は筆を止めた。爆撃機の轟音も聞こえて来る。一瞬思った、東京の次はここか。急いで避難をしないと。その途端、激しい閃光が窓の外に映った。耳の鼓膜が破れるほどの爆音と同時に窓のガラスが窓枠ごと吹き飛び辺り一面が火に包まれた。
b0017892_20273272.jpg

 宮台は自らの体が炎を上げていることに気付いた。頭が錯乱した。熱さを感じるほどの余裕さえなかった。そして、目に映ったのは、天井が自らに落ちてくる光景であった。


 ベネット博士とリッチーが対話を始めて一年近い歳月が流れた。そして、日本に関してある結論に達した。日本がなぜ、こんな状況にまで追い詰められたのか。それと日本人の精神文化とにどんな関連があるのか。

第50章につづく。
by masagata2004 | 2007-02-12 16:12 | 自作小説 | Trackback

決議案を通過させる必要がないくらいのことを日本がしていれば

Excite エキサイト : 国際ニュース

こんなにもめることはないのだろう。これまでは、日米関係を悪化させたくないので気を使って通過を渋ってきたのだろうけど。

こういう風に日本の戦争責任問題にアメリカが介入し出すのは、最近は中国や韓国との関係の配慮から、日本に圧力をかける必要が出てきたからだと聞く。靖国問題もしかり、つまりは日本とアジア諸外国との関係が悪過ぎるとかえって米国にとっては日本を使いづらくなっているのだという。日本に極東においてアメリカの代弁をしていただきたいという役割が果たせなくなるからと。

だけど、こういうことは日本人自身が自分たちのこととして率先して、かたをつけていれば良かったのにと思う。こんなことだから、アメリカに東京大空襲や原爆のことを謝罪、反省させることができないでいるのだ。

決議案可決は、日本人としては反対だが、そんなものを必要としないくらい、自国の過去の清算に積極的に日本が取り組んでいればよかったのにと思う。河野談話だけでなく、きちっとした国会決議案をね。いつまでも、歴史をカードにされたくない。右翼とか愛国者と呼ばれる方々は、どうしてそういうことを認識できないのか。

ちなみに過去の清算といえば、私は日本が侵略戦争に加担する過程を自作小説を書きながら検証しています。

いい記事だと思ったらクリックしてください。ランキングへ

以下は問題の河野談話の全文です。この外務省サイトからコピペしました。政府も直接の関与を過去に認めています。これだけ堂々と認めていながら、今更、ひっくり返すと国家の体を為してないと思われるだけです。

慰安婦関係調査結果発表に関する
河野内閣官房長官談話
平成5年8月4日

 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。


でもって、中曽根元総理の回顧録にも、部下のために慰安所を作ったりしなければならず苦労したなどと書かれています。書いた当時は、罪悪感もなく、そんなに重要なことだと思っていなかったようですね。

ついでに追記。3月10日の朝日の社説です。あんまり社説のコピペはしたくなったのですけど。

慰安婦問題―国家の品格が問われる

 旧日本軍の慰安婦について、「官憲が家に押し入って連れて行くという強制性はなかった」などと述べた安倍首相の発言の余波が収まらない。

 米国のニューヨーク・タイムズ紙は1面で「否認が元慰安婦の古傷を開いた」として、元慰安婦たちの生々しい証言を伝えた。米連邦議会下院では、日本に対して公式謝罪を求める決議案が採択に向けて勢いを増している。

 一方、国内では慰安婦への謝罪と反省を表明した93年の河野官房長官談話に対し、自民党の議員らが事実関係の再調査を首相に求めた。メディアの一部にも、これに同調する向きがあり、国内外で炎に油を注ぎ合う事態になっている。

 何とも情けないことだ。いま大切なのは、問題は何が幹で何が枝葉なのか、という見極めである。

 首相発言の内容は、河野談話が出されて以来、それを批判する人たちが繰り返し持ち出す論理と似ている。業者がやったことで、日本軍がさらっていったわけではない。だから国家の責任はない、というのが批判派の考えだ。

 今回、一部のメディアが「問題の核心は、官憲による『強制連行』があったかどうかだ」と主張したのも、それに相通じるものだろう。

 しかし、そうした議論の立て方そのものが、問題の本質から目をそらそうとしていないか。

 どのようにして慰安婦を集め、戦地に送り、管理したのか。その実態は地域や時代によって異なる。しかし、全体としては、植民地や占領地の女性たちが意思に反して連れて行かれ、日本軍の将兵の相手をさせられたことは間違いない。

 河野談話が「軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と結論づけたのは、潔い態度だった。

 細かな事実にこだわって弁明ばかりするよりも、民族や女性の人権問題ととらえ、自らの歴史に向き合う。それこそが品格ある国家の姿ではないか。

 海外の誤解も指摘しておきたい。たとえば、米下院の決議案は日本政府が謝罪していないという前提に立っている。

 だが、政府の主導で国民の募金によるアジア女性基金がつくられ、元慰安婦たちに「償い金」を贈り、首相名で「おわびと反省」を表す手紙を渡した。

 補償問題はすでに国家間で決着ずみだとして、政府は女性基金という道を取った。私たちは社説で「国家補償が望ましいが、次善の策としてはやむをえない」と主張してきた。日本として何もしなかったわけではないのだ。

 安倍首相は河野談話を受け継ぐと繰り返し、「これ以上の議論は非生産的だ」と語る場面が増えた。だが、首相が火種となった日本への疑問と不信は、自らが消す努力をするしかない。

 日本は北朝鮮による拉致を人権侵害と国際社会に訴えている。その一方で、自らの過去の人権侵害に目をふさいでいては説得力も乏しくなろう。
by masagata2004 | 2007-02-11 19:24 | 時事トピック | Trackback(1)

これぞ不都合な真実か!?

b0017892_1302224.jpg

まだ2月だぞ。地球温暖化により開花した桜?

東京、新宿御苑にて。
by masagata2004 | 2007-02-11 13:00 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)

自作小説「白虹、日を貫けり」 第48章 菊と刀

テーマは、ジャーナリズム、民主主義、愛国心。大正時代から終戦までの激動の時代を振り返りながら考える。

まずは、まえがきから第47章までをお読みください。

 一九四四年七月 ワシントン
 リッチーは、日本語教官の任務を解かれた。そして、チャーリーと共に、ハワイからワシントンへと飛行機で飛ぶことになった。教官の任務を解かれたのは、通信室で涙を流したことが報告され忠誠心を疑われたからだという。やはり元日本人ということでは、信頼たるに足りないと思われたのか。
 リッチーにとっても限界だと思った。日本語を日本兵を殺す米軍兵士に教える。教室の中にいたとしても戦闘に加担していることには変わりない。もちろん、最初から、そんなこと分かっていたが、通信室で聞いた戦場の兵士たちの言葉を聞き、理屈では割り切れない感情の込み上がりを感じ始め、それが制御できなくなるほど自らを締め付ける。
 ワシントンに来た理由は、チャーリーが知っていた。何でも、元日本人のリッチー、まだかつての祖国に未練のあるリッチーだからこそできる任務だと。そして、その任務を果たす場所は、ワシントンの国防総省、通称ペンタゴンと呼ばれる場所だ。
 軍部はリッチーを信頼していないと聞いていたが、そんなリッチーを中枢部であるペンタゴンに連れてくる。内心、どんなことをされるのか不安でならなかった。
 ポトマック川沿いのとても大きな建物に二人を乗せた車が着いた。階数は四階建てだが、横にとても広く延びている面積の大きなビルだ。そして新しい。建てられて一年半ほどだという。
 ここが、米軍の最高指令部なのだ。軍からの信頼を失い、軍部を遂行する者として不適格だとされた自分にできる仕事があるというのか。そもそもは軍務を解いて、悠々自適な生活でも送らせてくれれば十分だとチャーリーに伝えたが、「今の君だからこそできる仕事がある」とワシントン行きを強く勧めた。
 だが、よりによってペンタゴンに。ハワイの海軍司令部よりもはるかに接近したところではないか。
 ペンタゴンに入ると、待っていた黒い制服の海兵隊員にさっそく案内された。エレベーターに乗り、上の階に行くと、その後、海兵隊員に連れられひたすら長い廊下を歩く。非常に長い廊下だ。かなり歩き疲れたかと思った時に目的の部屋に着いた。
チャーリーとリッチーの前で海兵隊員は、ドアをノックする。
「どうぞ、入ってください」
と女性の声が、年配の感じがする。
 海兵隊員はドアを開ける。初老の婦人が書類や本の束を置いたテーブルを前に椅子に座っていた。
「リッチー、後は、マダムが君の任務について話してくれる。私は他に用があるもんで、ここでお別れだ」
 チャーリーは海兵隊員とその場を去っていく。リッチーは、おそるおそる中に入る。マダムは、にこにこしながら椅子に座ったままリッチーを見つめる。
「初めまして、マダム。私はリチャード・ホワイトリバーと言います」
「こちらこそ、お会いできて嬉しいわ。私の名はルース・べネット博士よ」
「博士ですか」
とリッチーは驚きを隠せなかった。何の分野の博士なのか。まさかこんなご婦人が兵器の博士だとでもいうのか。
「そうよ。私は文化人類学の博士よ。そして、私の任務は日本についてなの」
とさらりとベネット博士は言った。
「ねえ、どうぞ座ってくれないかしら」
と博士は手を差しのべ、対面する椅子に座るように促した。
 リッチーは、椅子に座った。目の前の老女を改めてみるととても上品で美しいことが分かった。b0017892_21534924.gif軍が、こんなご婦人に与える任務というのがあるのか、まだ不思議でならなかった。
「あなたを何と呼んだらいいのかしら、そもそもは日本人だと聞いていたけど」
 婦人がそう言うと
「リッチーと呼んでください。今はリチャード・ホワイトリバーという名前になりましたが、元はリュウイチ・シラカワという日本人の名前でした」
とやや微笑んでリッチーは答えた。
「リュウイチね。あなたのプロフィールについてはいろいろと知らされたわ。父親が日本人、母親は亡命ポーランド人だったのですって。生まれは横浜で、その後、上海で十六歳まで過ごす。その後に神戸に移住して、そこの高校を卒業後、大阪で新聞記者となる。その新聞記者を辞めた後に中国で貿易商となって、しかし、日本と中国との戦争が始まってからは日本に戻り、首相の補佐官になったのよね」
と老眼鏡をかけ婦人は書類を読みながら話した。
「いったい私が何の役に立つというのでしょう。そもそもあなたの任務とは何ですか。文化人類学とかいいましたよね。それが、国防総省から求められる任務なのでしょうか」
とリッチーは真剣な眼差しで婦人に訊く。
「そうよ。とても重要だわ。暗号解読と同じくらいね。私は、あなたから日本、つまりは日本の文化、日本人の民族性について調査を委託されたの」
 リッチーは、ますます分からなくなった。
「何をおっしゃっているんですか。そんなことを軍が調査しているですって。驚きですね。今更日本についてですか。だって、日本とアメリカは九十年近い外交関係があるのですよ。日本を訪れたアメリカ人は数知れずです。日本についての資料もたくさんあるし、それだけで十分ではないですか」
「それだけでは十分といえないのよ。特に戦後の占領政策をうまくいかせるには」
「戦後のことですか?」
「そうよ。分かっているように、戦況はどう見てもアメリカが勝利するわ。いずれ日本は降参するでしょう。その後に大事なことは、日本をどう統治していくかということなの。仮にも戦闘をし合った敵同士だったのですもの、私たちは相手のことをよく知らないと、どんな抵抗を受けるか分からないからよ。その意味でもしっかりと日本人のことを研究しておかないといけないのよ」
「ですが、それでも私を呼ぶほどのことでは」
「私の学問ではね、フィールドワークというものが大事なの。資料だけでは十分ではないのよ。どうしても生の日本人の言葉を聞きたいの。だからといって、私のような年寄りが敵国に乗り込んで調査なんてできないのは分かっているでしょう」
 やや冗談めいた口調にベネット博士はなったが、リッチーは真剣な眼差しで見つめる。
「日本人について何が知りたいのですか」
「私たち西洋人には分からないことがたくさんあるわ。特に戦場からの日本人捕虜についてのこと。国民国家一丸となり私たちを敵として憎んでいるかのように思えたのだけど、でも捕まった兵士たちは食事を与えると、すぐに味方の情報を提供して、中には米兵と戦闘機に一緒に乗って攻撃目標を教える者もいる程よ。この落差が理解できないの。そもそも、どうしてあんな戦争を起こしてしまったのか。それと日本人の民族性とどう関連するのかを研究したいの」
 婦人の言葉は、とても活力があった。リッチーは、
「分かりました。協力しましょう」
と答えた。何となく自分に向いている仕事のように思えた。
「それでは、さっそくとりかかることにしましょう。そうだわ、あそこのサイドボードに置いてある二つのものを見てくれないかしら。このプロジェクトのタイトルとしたいの」
 そう言われ、リッチーはサイドボードの置物に目を向ける。花瓶にそえられた菊と、武士道を象徴する刀の置物だ。
「どういうことなんです。菊と刀なんて」
菊と刀、それこそまさに日本を象徴するものだと見ているの。優美で美しく繊細に手入れされた菊の花、でも、戦争となると恐ろしく凶暴になる性格のコントラスト、それこそが研究課題だわ」

b0017892_2233918.jpg

b0017892_2235794.jpg


第49章へつづく。
by masagata2004 | 2007-02-10 21:38 | 自作小説 | Trackback | Comments(0)

米映画「イル・マーレ」 余韻の残るファンタジー

キアヌ・リーブス主演の韓国映画のリメイク。2004年、アレックスはレイクハウスという湖畔に立つガラス張りの家に引っ越すが、そこで前の住人のと思われる女性からの手紙を郵便受けで見つける。彼女の手紙には、転居先に手紙を送ってもらう頼みと、その他奇妙なことが書かれており、その上、彼女は2年後の2006年にいると言っている。

アレックスは不思議に思いながらも2年後の女性との文通を試み、そして、それこそが自らの運命を予言するメッセージであることに気付く。

というファンタスティックなドラマだが、なるほど韓国映画をリメイクしたなと思わせるドラマだった。「冬のソナタ」に見られる演出が数多い。強引で矛盾するところがあったが、でも時空を超えた文通とは面白い発想だ。キアヌ・リーブスが主演なのも、その辺の東洋性を考えたことかなと思うが、彼はマトリックスの頃と比べると老けたなと思う。

それに、彼の弟役の俳優が目障りだった。キアヌを引き立てようとしたのだろうが、あまりにもキモイ。それから、最後のシーンが2008年と気付けるような場面演出が必要だったかと思う。何となく気付かせたかったようだが、そんなに注意して見ているタイプではなかったので、二度見てやっと筋が読めた私だった。

文句はその辺にして、私はこの映画が好きだ。映像の美しさが何よりだった。映像だけでなく音楽も良かった。ラブロマンスというジャンルはそもそも好きではないのだが、こういう風に、時空を超えたファンタジーという醍醐味があったから楽しんで見られた。ファンタジーを採り入れた面では「あなたにも書ける恋愛小説」という映画を気に入った理由とも共通する。これは現実世界と小説世界が交錯するドラマで、その対比がコミカル且つファンタスティックだった。陳腐な恋物語そのものには興味ない。

愛をテーマにするなら、「招かれざる客」や「ブロークバック・マウンテン」のような社会との葛藤を中心に添えるようでないと魅力を感じない。ありきたりの愛などテーマにした映画は、ただ退屈なだけだ。

いい評論だと思ったらクリックしてください。ランキングへ

ちなみに時空を超えたファンタジーでしたら、私の英語版ブログの中で短編小説を連載しています。英語が読めるようでしたら、是非ともご覧になって下さい。
by masagata2004 | 2007-02-09 23:18 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)


人生は常に進歩していかなければならない


by マサガタ

プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ

全体
プロフィール
自作小説
映画ドラマ評論
環境問題を考える
時事トピック
音楽
スポーツ
ライフ・スタイル
米留学体験談
イベント告知板
メディア問題
旅行
中国
風景写真&動画集
書籍評論
演劇評論
アート
マサガタな日々
JANJAN
スキー
沖縄

タグ

最新のトラックバック

映画「終戦のエンペラー」..
from soramove
【映画】バーダー・マイン..
from しづのをだまき
インサイダー
from 映鍵(ei_ken)

フォロー中のブログ

高遠菜穂子のイラク・ホー...
ジャーナリスト・志葉玲の...
増山麗奈の革命鍋!
*華の宴* ~ Life...
poziomkaとポーラ...
広島瀬戸内新聞ニュース(...
楽なログ
美ら海・沖縄に基地はいらない!

その他のお薦めリンク

ノーモア南京の会
Peaceful Tomorrows
Our Planet
環境エネルギー政策研究所


私へのメールは、
masagata1029アットマークy8.dion.ne.jp まで。

当ブログへのリンクはフリーです。

検索

ブログパーツ

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

東京
旅行家・冒険家

画像一覧