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小説で地球環境問題を考える Part 15

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 14を読んでください。


 次の日、二人は、朝十時に同じベッドで目を覚ました。健次はぐっすり眠られた。由美子のスイートルームのベッドはとても心地良かった。
 ルームサービスに朝食を部屋まで運んで来てもらった。そして、食べながらベッドの上で会話を楽しんだ。b0017892_2246472.jpgゆっくりと二人だけのひと時を楽しんだ後、外出してクラランコクの町を一日中回ることにした。
 森の探索と植物の成分分析に関しては、その日一日だけは堀田と他の隊員達に任すことにした。皆、健次には休息が必要だと理解してくれた。
 まず、すぐ近くにある観光名所の一つ、スワレシア国立博物館へ行った。その近代的な建物の中には、スワレシアの伝統民具や工芸品美術品などが展示されていた。どれも見る者の目を楽しませるすばらしい品々であった。
 クラランコクの近代的な中心街の町並みは、とても美しい。ホテルの周りは、幅が広く舗装された道、熱帯地方らしくやしの木が両側に立ち並ぶ。車やオートバイが大忙しで走っている。
 高層ビルもにょきにょきと立つ、その中でもツインの世界一高いビル、クアランコクタワーは、一際目立ち、発展するスワレシアを象徴し威厳がある。
 マラティール大統領の経済発展第一主義は、次々と町の様相を変化させている。だが、一方で少し中心街を外れると、そこにはスラムがありトタン屋根でできたバラック小屋が並ぶ。
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 道を歩く人々は、ボロボロの服をまとい、小さな子供でさえ道端で物乞いをしている。これが、世界の発展途上の国々の実態なのだ。
 先進国と発展途上国の経済格差は、環境問題を考える上において最も重要な課題だ。
 由美子は、大統領と会ったときのことを思い出した。貧しい状況を少しでも改善したいというのが、指導者の本音なのだ。自然保護などというのは、余裕のある先進国の人々ができること。自然を破壊しなければ、まともな生活を維持できない貧しい人々には、そんなものは戯言としか聞こえない。
 そもそも、同じ地球という星に人々は住みながら、なぜこんなにまでも貧富の差が大きいのだろう。先進国では、食物があり余り、肥満で悩む人々が大勢いる。一方、発展途上国では、栄養失調で幼い子供達が毎日と餓死している。
 数人のボロボロの服を着た子供達が、由美子と健次が外国人だと分かると集まってきた。子供達は、にこにこしながら、手の平を広げ、お金をせがんでくる。
 二人は、どうしようか迷った。子供達の無邪気な顔を見てると、あげなければと思う。だが、そんなことをするのは、同時に後ろめたいことでもある。彼らを、乞食として扱うことになるからだ。同じ人間なのに、人間としての尊厳を無視しているように思えてならなかった。だが、考えてみれば、彼らにとって今大事なのは、そんな尊厳などというものよりも、今日一日の生活をどう守っていくかということだ。
 どうすればいいかと悩みながら、由美子は、財布を取り出し、何枚かのお札を取り出した。すぐに健次もつられて、財布を取り出すことにした。
 由美子が、お札をやると一人の男の子は、さっとそれを手に取り、何も言わず立ち去った。
「あ、こら!」
 健次が言った。
「どうしたの? 」
と由美子は言うと。
「あのガキ、俺の財布を丸ごと盗っていきやがった。何てことするんだ!」
 健次は、走って追いかけようとした。由美子が、さっと彼の手首を押さえた。
「健次、やめて、ほっておきましょう」
「何言ってんだ!」
 健次は、かっとなって言った。
「なくなった分のお金は、わたしがあげるから。ね、お願い」
健次は、由美子の悲しそうな顔を見ると、ぽっと溜め息をつき言った。
「ちぇ、しょうがねえな」


 次の日の朝、由美子と健次は、スイートルームのベッドの上で目を覚ました。
 昨日は、実にゆったりとした一日だった。だから、全然疲れを感じない気持ちのいい朝を迎えている。窓からこもれる朝陽を浴びながら、起き上がり、由美子は背筋を伸ばした。
 健次は、さっそくバスルームでシャワーを浴びている。由美子も一緒にバスルームに入った。
 
 シャワーと朝食の後、二人は、ロビー階へ降りた。さっそく、新たなる戦争を始める決意をした。これから、クアランコク大学の研究所へ向かう。
 エレベーターを降りると、ロビーを抜け玄関口に向かう。そして、回転ドアを抜けるとタクシーが並んでいた。その一台に乗ろうとする。
 そこへ、
「由美子!」
 聞き覚えのある声だ、と由美子は思った。声の方へ振り向くと、そこに自分の方へ向かって走ってくる若い女性の姿が見えた。
「真理子!」
 由美子は、感激した。心配で早く再会したいと思っていた親友が目の前にいるのである。思わず真理子に抱きついた。
「真理子、どうしてここに?」
「今朝、着いたばっかりなのよ。取材に来たの」
「そう、じゃあ、記者のままでいられたのね。よかったわ」
「何を言っているよ。私が今勤めているのは、雑誌社よ。環境問題に熱心で国際的な雑誌だから、やりがいがあると思って、思い切って転職したの。それでダム建設にともなう森林破壊の問題を取り上げにね。今度は、もう大丈夫よ。編集部が私に是非ともと取材で来たのだから」
「そう、じゃあ、とにかく落ち着いたのね」
「もちろんよ、何もかも順調よ。あなたが心配することなんてなにもないわ」
 真理子は、元気いっぱいの笑顔を作り言った。
「おい、由美子、突然何なんだ? この人は誰だ?」
と健次は、ことの成り行きに混乱していた。
「ああ、健次、こちらはわたしの高校時代からの大親友、真理子よ」
 真理子は、健次を見つめ言った。
「初めまして、大塚真理子です。お会いできて光栄です」
「いや、こちらこそ」
と健次は、何となく面食らった調子で言った。真理子が興味深そうに自分を見つめるからだ。
「あ、それから真理子、こちらは・・」
「あーら、いちいち紹介されなくても分かるわよ。彼氏でしょ。なかなかハンサムじゃない、うらやましい」
「あ、ははは」
とその場で三人は、大笑いした。
 由美子は、健次を見つめ言った。
「健次、先に行ってて。真理子とせっかく会えたの。少し話しがしたいの。後で、わたしも研究所に向かうから」
 すると、真理子が、
「あら、由美子、そんなことまで」
と言った。
 健次が、その場をとり繕うように言った。
「そうか、俺は先に行っている。外国でせっかく会えたんだからな。ゆっくりしていけよ。だけど、終わりしだい、すぐに研究所に来いよ」 
 そう言うと、健次はタクシーに乗り込んだ。
「本当にいいの、大事な彼氏と一緒に行かないで?」
と真理子が言うと、
「いいのよ。さっそく、いろいろと聞かせて」
と由美子は言った。

 二人は、スイートルームに入った。
 プルルル、プルルル、と電話の鳴る音がする。由美子は受話器を取った。
「ハロー」
と言った。すると、
「お嬢様、お嬢様ですね?」
と聞き覚えのある家政婦の声が聞こえた。何だか慌てたような声だ。なぜ、わざわざ日本からここまで電話を? と不思議に思った。
「あら、ばあや、どうしたの?」
「大変なんです、お嬢様。旦那様が!」
「お父さんが、どうしたの? 」
 由美子は、急に不安になった。
「旦那様が、お倒れ、になって、息さえもしてないんです。たった今、救急車で運ばれ、まして・・」
 ばあやの声は、その事態の緊迫度を如実に表すかのようにぶるぶると震えていた。いつもは落ち着いているばあやのこんな口調を聞くのは初めてだ。

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 それからほぼ六時間後、由美子は、成田空港にいた。

 電話を受けた後、すぐさま空港に向かったのだった。荷物など準備せずタクシーに乗り込みクアランコク国際空港へ、そして、何とか東京行きの便に間に合った。
 日本へ向かう飛行機の中で、父のことばかり考えていた。あの父が、見るに頑丈そうなあの父が、倒れたなんて信じられない。いったいどういうことだったのか。数日前、帰国したとき、咳き込んでいた。ずいぶん前から、とんでもない病気を患っていたのに違いない。

Part 16へつづく。
by masagata2004 | 2007-09-27 21:45 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)

映画「抹殺者」 ダヴィンチ・コード別バージョン

テーマとなっている素材は同じであった。つまりは「イエスは人間だったのか?」

物語は、イスラエルの首都エルサレムで思わぬ考古学的な発見がなされる。それは、イエスの時代と思われる墓から人骨が発見され、状況からして、それが主イエス・キリストのものだと思われたのだ。

バチカン教会は大混乱、アントニオ・バンデラス扮する元情報員であった神父を調査に派遣する。神父は、人骨を発見したイスラエル人の女性考古学者と共に内部の墓を捜索。

調査を深めていく毎に、人骨がイエスのものである可能性が高まっていく。そして、そのことを政治的に利用するもの達が彼らの行動を監視する。そして、彼らの身が危険にさらされる。

おきまりのポリティカル・サスペンス。だからこそ、面白かった。「ダヴィンチ・コード」よりも分かりやすかった。つまり、イエスの墓があり、人骨があるということは、復活はなかったということになる。イエスはただの人間だったんだということになり、それではまずいのである。特に政治的には。

つまりはカトリック教会の排他性を批判するテーマだったような。「ダヴィンチ・コード」もそうだったよね。

イエスが人間であったことがそんなに問題なのか。「復活」というのは、別に肉体的に復活しなくても、魂として人々の心の中で復活が見られたのなら、それでいいのだと思うのだけど。

映画の中でも登場人物が言っていたが、所詮、宗教なんて社会のニーズに応えて存在するもの。教祖様の実態なんてどうでもよくて、神格化されたイメージが信仰の源になっているのじゃなかろうか。政治的には、雑多な民を一つの権限の元、統合するシンボルとしての役割がある。それは、無政府状態をなくし、秩序を作るために必要なのだ。明治維新以降の国家神道論なんてそのいい例。

これだけ科学が進んでも、人類の祖先はアダムとイヴだと言って、ダーウィンの進化論を否定し続ける人々が多くいる。どうせ結論ありきの論理で話しを進めるのだ。かつて、科学もメディアも発達していない時代であれば、素朴な民を操る道具として宗教は立派に機能していたのだろうが、今では雑学か超常現象ネタとしてしか価値がない。

印象的だったのは、神父が人骨の身長とトリノの聖骸布に写ったイエスの身長を比較する場面、そこで、女性考古学者は激怒する。「あんなの偽物に決まっているじゃない。人が布に写るなんて考えられないわよ」って。

トリノの聖骸布は、レオナルド・ダヴィンチが教会に頼まれて作った史上初のネガフィルムだという説がある。教会が人々にイエスが存在したと見せるため考え出したトリックのようなものだと。

信じたい人は勝手にすればいいんだけど。それで幸せであれば真実なんてどうでもよくて。

問題なのは、そういう作り話を本気で信じて、その通りにことを成し遂げなければ済まなくなり、現実の状況が見えなくなってしまうこと。それこそが、世界中で起こる国家や民族間の紛争の源にもなっている。だから、イスラエルとパレスチナの悲劇はなくならない。

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by masagata2004 | 2007-09-24 17:52 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)

ロシア映画「大統領のカウントダウン」 ロシア版「24」か?

そんな感じ。主人公は、ややぽってりしたキーファー・サザーランドといった感じだろうか。顔はラッセル・クロウに似ている。

ストーリーは、チェチェンのテロに拘束され、拷問の末、テロ犯罪の濡れ衣を着せられたロシア軍将校が、モスクワのサーカス会場を占拠したテロ集団と戦いを挑むドラマ。

ハリウッドのまねをした演出が数多かった。特に飛行機が高度を下げると核爆弾が爆発する設定は「スピード」を思い出す。しかし、もう少しストーリーにひねりが欲しかった。

ロシア軍が撮影に協力しただけあって、装甲車の市街戦や飛行機の墜落危機などは、実にダイナミックだったが、なるほど、この内容ならロシアも協力すると納得できる。

チェチェン人は、極悪なテロ集団として描かれている。ただ、同じチェチェン人がテロ達に投降を呼びかけるシーンがあり、少しは同情している感じも受けた。でも、最後のメッセージは、チェチェンのテロと戦おうというスローガンだった。テロって、どっちのことかな。日中戦争時の日本と中国の関係にさえも似ている。

ただ、チェチェンよりもっとひどいのは、彼らとグルになりもっとあくどいことを企んでいるアラブの連中だというメッセージも込められていて、その意味でNATOと協調する点が、ある種、補足になっている。

ふーん、困ったものだ。

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by masagata2004 | 2007-09-19 23:08 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)

小説で地球環境問題を考える Part 14 

地球環境問題を小説で説いてみようと思って書きました。自作小説ですが、環境問題を考えるための記事と思ってください。

熱帯雨林を守ろうと奮闘する環境活動家と破壊を進める国家及び企業の対立から浮かび上がる不都合な真実。

まずはPart 1からPart 13を読んでください。

 次の日の昼、由美子と隊員一行は、現地の警察に健次の捜索願いを出す決心をした。もう丸一日以上行方不明なのだ。健次の身に、とんでもないことが起こったとしか考えられない。
 由美子たちは、警察署に向かおうとした。
 その時だった。ロビーの玄関前で、思わぬ事が起こった。
「由美子!」
 由美子は、その声に振り向いた。
「健次!」
 そこにいたのは、まさしく健次だった。ずっと行方を心配していた健次なのだ。
「あなた、どこにいたの。みんな、ずっと心配してたのよ」
 由美子は、目から涙がこぼれてきた。さっと、健次に抱きついた。
「由美子、そんなに泣くなよ。俺は、どうにもなっちゃいないぜ。それよりも、おかげでいい発見をしたんだ。もしかすると、あの森を守れるかもしれない」
 健次は、手に草をたくさん詰めた大きな麻袋を持っていた。

 健次は、由美子と調査隊員の前で、こう説明した。
 健次が夜になって急に森へ行きたくなり、車を飛ばして森に着いた。ところが、森の中でコブラに咬まれてしまい、死にかけたが、ペタン族のゲンパに出会い、この草をすりつぶした液を飲ませてもらい命をとりとめ助かったこと。
 この草は、あの森林の木の上の方に着生する雑草でかなりたくさんあること。コブラの毒を血清に変わって解毒できたほどだから、何か他に医学的な効用があるかもしれないのと考えたこと。
 皆、由美子も含め健次の話に唖然としていた。いくら健次が無鉄砲な性分の男だとしても、暗い夜にあの森まで行くのだろうか。それに、こんな雑草みたいな草が、本当にコブラの毒を解毒できたのだろうか?
 健次は、それがいきさつだと、必死で弁明した。今は、皆に余計な心配をかけたくなかった。自分が、襲われ殺されかけたなどと聞けば不安がるに違いない。そんなことよりも大事なことが、あるのだ。急いで、この草の成分を分析して新薬としての有効性を証明しなければならない。コブラの毒の解毒以外にも、様々な可能性が秘められているこの草を。
 
 健次と由美子は、ミィーティングが終わった後、夕食を食べに外へ出ることにした。今夜は、二人でクアランコクにある有名な郷土料理の店に行くことにした。
 ホテルのミィーティングルームを出て、廊下を歩いていたところで、背広にネクタイを身にまとった英明に出くわした。b0017892_2212929.jpg健次にとっては、ハワイでの悪酔い騒動以来の再会なので、気まずく目を合わせないようにした。二人は話すこともないと挨拶もせず通り過ぎようとした。
「今晩は。由美子さん、健次くん、お二人でお出かけですか」
 英明の方から話しかけてきた。
「そうよ。何か問題でも」
と由美子は、つっけんどんに言い返した。すると、英明は、澄ました顔で健次に向かって言った。
「健次くん、勝手に僕の婚約者に手を出さないでほしい。君のようなゲスな奴は、由美子さんにはふさわしくない」
「何が婚約者ですって! 勝手な勘違いはしないで!」
 由美子は、怒りをこめ叫んだ。
「由美子さん、あなた何をやってるのか知りませんが、どうあがいたって、計画通り来月にはあの森は切り倒されます。この男と一緒にいたって、事態は変わりませんよ。言ってるでしょう。僕と結婚をすれば、森の一つぐらい差し上げるって」
 何て男だ! 健次の前で、こんなことを口にするなんて。由美子は、この場で英明を殴りたかった。
「健次、行きましょう。こんな人、相手にしてられないわ」
 由美子は、健次の手を引っ張った。健次は、引っ張られながら英明に向かって得意気に言った。
「英明さん、残念ながら、あの森自身の力で、あの森は守れそうですよ。あなた達の悪企みなんか、おじゃんになりますからみててください」 

 レストランの料理は、とてもおいしかった。ここは、クラランコク一おいしい民族料理のレストランなのだ。東南アジアの料理は、主に辛いのが中心である。外の気温が暑いので、体をさらに熱くする食事をし、体感的に涼もうというわけだ。由美子と健次は、レストランの料理を口にほうばりながら会話を楽しんでいた。会話の内容は、主に二人のハワイ時代のことだった。
 だが、デザートを食べる頃になって、由美子は、真剣な表情になり健次に言った。デザートは、パイナップルに似ているが強烈な臭さを放つこの地方特有の果物ドリアンである
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「健次、さっき、みんなの前で、昨日から行方不明だったのは、思いつきで森に行ったからだなんて言ってたけど。そんなの嘘でしょう。一体、何があったの? わたしには正直におしえて」
 健次は、どきっとした。口に運ぼうとしていたドリアンの一片を皿の上に戻した。そして、しばらく考えこんで言った。
「由美子、おまえやみんなには、心配かけたくなかったから言うつもりはなかったが、実を言うと・・・」
と今までの本当のいきさつを、二日前の夜、ホテルの部屋で起こったことから、ありのままを話した。
「そんな、いったい、誰が?」
と由美子は、驚きのあまり唇を震わせ言った。
「わからない。だが、あの森にまつわることには、やたらとキナ臭い匂いが漂っている。誰かが俺を消してでも、何かを成し遂げようとしている。そんなとんでもない陰謀が渦巻いているような、そんな匂いがしてくるんだ」
 安藤は、皮肉にもそんなことを言いながら鼻をつくドリアンの匂いが気になってしかたなかった。ドリアンは食べるとおいしいのだが、匂いは排泄物のようで最悪だ。
 由美子の方は、健次の身に起った話しを聞いて驚き、匂いなど気にならなかった。気になるのは、どうしてそんなことが健次に起こったかだ。
「それって、ダム建設のこと? じゃあ、お父さんの会社が?」
「わかんないさ、勝手に決め付けるのはよそう。とりあえず、今は、せっかく見付けた、あの草を徹底研究することに賭けるんだ。今はそれだけに賭けてみればいい。明日は多忙しになるぞ。もう一度、森に行き、ゲンパに会って、もっと草のサンプルを採ってくるんだ。また、あの草だけじゃなく、他にもいい植物を知っているかもしれない。そして、サンプルを研究所に持っていき、そこで・」
「やめて、健次。明日は、わたしとずっと一緒にいて。森の探索や草の研究のことは、堀田さんや他の人達に任せてもらえないかしら。私達、もう一ヵ月以上もゆっくりできる日がなかったわ。あなたは仕事ばかりで、それに危険な目に遭ったりして。だから、明日は二人で一日中過ごしたいの。わたしのお願いってわがままかしら」
 由美子の必死にせがむ言葉を聞きながら、健次は、由美子の目を見つめ、そっと微笑んで言った。
「ああ、分かったよ。ゆっくりしよう」

Part 15へつづく。
by masagata2004 | 2007-09-16 20:53 | 環境問題を考える | Trackback | Comments(0)

アポロ月着陸捏造を暴けるか?

Excite エキサイト : 社会ニュース

私のような宇宙に興味のないものは、その点に強い関心を持ちます。

アポロは本当に月に行ったのでしょうか。いろいろな疑惑があり、それに対して最もらしい反論もありますが、それはさておいて、確かだったのは、その当時、かなりのリスクをかけてアメリカがアポロを月に送ったということ。でもって、当時の状況からして絶対に失敗はできなかったこと。

よく肯定派は、真空だし、重力が地球の6分の1だから、意外に簡単だとか言っているけど、でも、それは理論や技術的観点からのお話。実際のところ、前人未踏の空間、それに問題が起こっても誰も助けに来れないし、誰も迎えには来てくれない。今でも、スペースシャトルは死者を出すような失敗をするし、その当時なら尚のこと。なのに、アポロは13号を含め、宇宙空間で死者は誰も出ていない。

失敗したら飛行士が死ぬかもしれない。もちろん、飛行士は命を捨てる覚悟だったでしょう。でも、米政府は、そうでなかったはず。60年代、冷戦真っ只中、宇宙開発はしのぎを削り、暗殺されたケネディ大統領の公約でもあった月着陸。おまけに冷戦の代理戦争といえる泥沼のベトナム戦争最中。国内では政府に対する不信が高まっており、失敗すれば支持をさらに失いかねない。そのうえ、着陸は世界で生中継。もし、「失敗しました」という結果になれば、お笑いもの。そして、威信は崩れ、共産主義者どもが高笑い。

いちかばちかの賭けよりも、絶対に成功、というか成功したように見せかける方法を選んだはず。

今度の「かぐや」は、月面を全面的に撮すとのこと。当然、アポロの着陸点も。そこで、とんでもないものが写ってでもしたら。まあ、日本はアメリカさんを怒らすことはしないでしょう。頭のいい政治家さんなら、証拠を隠し持って、アメリカをゆする口実にするかも。それが目的なら、日本も大した国になれたわけだ。

発射が数年も遅れたのも、その辺の事情があってのことかも?確か2000年に捏造説の番組がアメリカで放送されたんだよね。その番組の中でも、この「かぐや」が証拠を取るんではないのかという指摘がされていたと。そこで、それを危ぶんだNASAがちょっかいを、または、日本が気を遣ってあれこれと。それとも、解像度を上げて、さらに確実な証拠を撮ろうと画策したのかも。「かぐや」の発射の直前に親米安倍総理の辞任。何か意味があるのかも。

湾岸戦争で「イラク兵が赤ちゃんを保育器から放り出して殺した」という証言の嘘。イラクには大量破壊兵器はなかったのにあるかもしれないと戦争に突っ込んだアメリカ。恐ろしいことをするという意味では、かつての旧ソ連と変わりない面もある。

陰謀説スリラーの方が、月の誕生解明ロマンよりずっと凄みがありませんか?

一連のエイリアン話は信じてませんが、アポロ捏造は信じる価値があると思いますし、他の陰謀説より信憑性は比較的高いし、政治性が強い面、惹かれるネタ。

宇宙SFものより、ポリティカル・サスペンスの方が好きな私にとっては、ワクワクさせるお話です。

そういえば、かぐや姫は、うその贈り物を見分けるのが得意な女性だったよね。

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by masagata2004 | 2007-09-13 23:29 | 時事トピック | Trackback(1) | Comments(23)

すばらしいアートだ!

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オリジナリティはないけど。
by masagata2004 | 2007-09-13 19:51 | アート | Trackback | Comments(0)

おぼっちゃま総理の美しくない退き際

Excite エキサイト : 政治ニュース

うーん、安倍晋三、とうとう辞任か。どうせこんなことになると思っていたよ。

しかし、まあ、貧弱で頭の悪い人だね。超バッド・タイミングを選んじゃった。

世界に日本の政治の醜悪さを見事にアピールしたよ。

次は誰かな。アルツハイマーの麻生か、それとも絶叫男が返り咲くか。
by masagata2004 | 2007-09-12 20:29 | 時事トピック | Trackback | Comments(0)

映画「シークレット・パラダイス」 近代文明批判をした孤高の画家

ポール・ゴーギャンの半生を描いたドラマであった。

ゴーギャンは、19世紀のフランスの画家として有名だが、30代になって画家として活動する前は船乗りだったり、株式の仲買人をしていた。

パリで家族と共に裕福な暮らしをしてたゴーギャンは、ある日、ピサロという画家と知り合い絵の才能に目覚めていく。どんどん夢中になり、ついには仲買人の仕事を辞め画家になる決心をする。生活は貧困のどん底に落ち、家族とは離れて暮らすことになる。

そして、ゴーギャンは、憧れの南太平洋はタヒチへ移住する。

楽園を夢見ていたものの、すこでは西洋文明が押し寄せ変貌しつつあった。ゴーギャンは、失われる前に、その楽園の姿を描き残しておこうと決意する。

ゴーギャン役の主演は、リアルタイムドラマ「24」でおなじみのキーファー・サザーランドであった。はっきり言ってミスキャストであった。まるでジャングルの中にテロリストでも探しに行くような感じで、芸術家らしい柔らかさが全く感じられず、ぎすぎすした部分ばかり目立ってしまった。

ただ、ゴーギャンというキャラクターと当時の世相を理解するにはとても分かりやすいドラマであった。タヒチは、フランスの植民地となり、未だに植民地だが、当時、西洋化するに当たって、現地土着の風習は次々と失われていったという。このことは、明治維新後の日本とも共通するところがある。

タヒチの人々が集まる風景を描いた大キャンバスの名作「我々はどこから来て、何者で、どこへ行くのか」の語りかけるメッセージとは、近代化していき、我々の本来あった土着の性質を失った後にはどうなっていくのか?という問いかけだったと思う。

どうなったか? それは、昨今の環境破壊と9.11以来高まったテロの危機ではないのか? そんなことを考えさせられ、そのことを予言していたゴーギャンの偉大さを感じざる得ない。

今度、損保ジャパンビルの美術館でゴーギャンの絵を見に行こうと思う。共同生活していたゴッホの絵も一緒にしかと見ようと思う。

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by masagata2004 | 2007-09-11 20:17 | アート | Trackback | Comments(0)

自作小説「インペリアル・ホテル」 第2章 明治村を訪ねる

歴史長編「白虹、日を貫けり」、恋愛短編「北京の恋」に続くマサガタの自作小説第3弾、タイムスリップ・ファンタジー、短編です。真実の愛を求めて現代から大正時代へ。

まずは序章からお読み下さい。

 翌日、敬介は愛知県犬山市の「博物館明治村」にいた。東京から自家用車で六時間ほどのドライブをして辿り着いた。
 犬山市の山林に囲まれた辺鄙なところにあるテーマパークだ。主に明治時代の西洋風建築物を保存する目的で一九六五年(昭和四十年)に開村された。村内には、数十の全国から移築された当時を偲ぶ建物が見られる。明治時代の教会、学校校舎、鉄道駅、文豪などの住居である。
 だが、敬介の目当ては、唯一、旧帝国ホテル「ライト館」であった。ちなみにこのライト館は明治時代ではなく大正十二年(一九二三)に完成した建物である。
 すでに午後三時となり、閉村まであと二時間しかなかった。入場門を入ったら、すぐさまライト館へと急行した。村内地図の表示板を見て、方向を確かめまっしぐらに走った。要は、ライト館にさえ行ければいい。そして、できるだけ長い時間をそこで過ごせればと考えた。途中目にする建物は通過するだけであった。
 ライト館のある場所に辿り着いた。何となく祖父に再会するような気分であった。建物は、赤茶色の煉瓦造りで荘厳な佇まいを醸し出す。目の前には、玄関部分として広い噴水がある。当時からあったらしく、現在の帝国ホテルには存在しない。
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 敬介は、外からの眺めにしばらく浸ったが、すぐに中に入ろうとした。だが、玄関付近で思わぬ看板に阻まれた。
「撮影のため入館できません」
 看板近くに、映画撮影をするクルーらしき集団がたむろしていた。カメラなどの機材も置かれている。
 畜生、せっかくはるばるやって来たのに。入館できない。仕方ないと思い、敬介は、改めて外観をじっくりと眺めることにした。周囲をとぼとぼと歩く、ちょうど玄関と噴水の裏側に来た。
 ここは、建物が玄関部分だけ移築されたことを露わにする光景が見られた。玄関の裏の客室につながる場所が白い壁面になっており、本来ならば、ここから長い客室がつながっていたという痕跡が見られるのだ。面白い光景だと思い、携帯カメラで写真におさめた。
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 そう、あくまで残っているのは、玄関のロビー部分だけである。建物の裏側には山林が生い茂っている。かつては大都会東京のど真ん中、日比谷公園と皇居の近くに建っていたこのホテルも、今では高原の小ホテルになったかのように姿を変えている。
 敬介は、また正面の方に戻った。携帯を取り出し記念にと正面の姿も写真におさめた。すると、どうしても中に入れないことに不満を感じた。そもそも入場料は通常と同じ額を払っているのだ。
 撮影隊のスタッフらしき若い女性に声をかけた。
「すみません。どうしても入れませんか。撮影といっても、僕は普段と同じ入場料を払っているんだし、入って中を見学する権利はあるでしょう」
と言うと、女性は、
「ああ、でも丁度今、撮影のための準備を始めばかりなのですよ。閉村まであと二時間もないくらいなのですから、それまでは見学できたのですし」
と言い返した。敬介は、ちとむかついた。
「じゃあ、遅くに来た人は損して当然だと。ここに来るまで、ここでこんな撮影をしていたなんて全然知らなかったんですよ」
と敬介は詰め寄った。女性は、ちょっと脅えた感じになり、少し離れたところにいたクルーのリーダーらしき年老いた男性のところに行き、数分ほど話し合いをした。
 すると、年老いたリーダーらしき男性が、敬介に近付いて来て言った。
「いや、すいませんね。私たちの撮影のせいで、ご迷惑をおかけしているようで。それで何ですが、どうです、エキストラをしてみては? それならば中に入れます。一人ぐらいエキストラが増えてもかまいませんので。服はあそこで着替えて」
 男性が指差す方向にトレイラーがあった。敬介は、館内に入れ映画のエキストラになれるのは面白そうだと思い、薦める通りにした。
 トレイラーの中で着替える服を差し出された。白い背広の上下である。襟の幅などを見ると現代のものとは違う。何でも、撮影されている映画は、大正末期の帝国ホテル内が舞台設定となっているらしい。敬介は来ていたTシャツとジーンズ、そして、スニーカーシューズを脱ぎ、彼の時代の紳士服に着替えた。ただ、財布と携帯電話、車と家のキーは着替えた服のポケットに入れた。
 靴は丁度いいサイズだったが、服は敬介のサイズよりやや大きめであった。だが、撮影ではどうせ遠目にしか写らないので、気にすることもないのは分かっている。せいぜい二時間ほど着ていればいいのだ。
 外はとても暑い。とくに背広を着ていては尚のことだ。まあ、仕事でそんな体験はよくするので慣れっこだ。これから、彼の時代の帝国ホテルに、その帝国ホテルに出入りするぐらいの上流の紳士をエキストラながら演じることとなる。
 中に入る。すでに撮影直前という準備万端さである。主演女優らしき女性が艶やかな着物をまとってロビーホールで撮影クルーと談笑している。どんな映画になるのだろうかと思ったが、敬介はあまり映画を観ないたちなので、撮影そのものに関心はなかった。
 帝国ホテルの内装をしかと見たかった。外観同様に赤茶けた煉瓦が特徴で、まるで煉瓦で神殿を作ったかのようにきらびやかな空間演出がほどこされている。煉瓦と共に白い大谷石と呼ばれる石材もはめ込まれアクセントとして機能している。
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 現代でも、このデザインは通じると敬介は思った。住宅設計専門の敬介だが、今後の設計の参考にさせて貰おうとしかと眺めた。
「そちらのエキストラさん、二階に上がってください」
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 撮影クルーが敬介に話しかけた。敬介は言われる通りに二階へ上がった。二階部分は、応接室や喫茶室がある。だが、ロビーは三階の天井まで吹き抜けになっており、撮影はロビー階のソファで女優が数人の人々と談笑する場面を撮るのが目的で、ロビーから三階までの吹き抜けが背景となる。だから、一階と二階に客の振りをしたエキストラをまばらに歩かせるのだ。
 二階の通路をロビーを見下ろしながら回る。すると赤いカーテンのかかった壁を見つけた。ちょうど玄関と対峙する位置にあり、ここはかつて客室の廊下があった場所である。赤いカーテンを少しめくると白い壁が見え、ここで終わりであることを示している。さっき外から見た白い壁面の裏側に位置しているのだ。かつては、数百もの客室とつながっていたのだ。何となく虚しい気分にさせられた。
 帝国ホテル、確か、かいつまんだ知識では、一八九〇年、外国人の客を呼び寄せ宿泊させるため建造させられ、最初の建物は当時の迎賓館である鹿鳴館の横にあったということだ。その後、別館としてこのライト館が建てられることになった。大正十二年八月末に完成、そして、九月一日には開業となり落成式典が開かれようとしていた。だが、その日正午、関東を大震災が襲った。マグニチュード七.九、震度六という規模であった。歴史に残る大災害となり、首都東京は家屋の倒壊と大火事に見舞われたが、ライト館は被害を受けず、緊急避難場所として解放された。震災報道の拠点としても使われ震災後、大きな貢献をしたと言い伝えられている。
 撮影が、もうすぐ始まりそうだ。それぞれが位置についている。それなりに演技をしようかと考えた。大正時代の男はどんな風に生きていたのかな。どんな風に振る舞っていたのかな。祖父の時代だ。祖父のことを想った。
 その時、プルルン、プルルンと携帯の着信音が鳴った。敬介はしまったと思った。撮影中に携帯、それも大正末期を舞台にした映画の撮影中に。当時、そんなものなかっただろうに。急いで電源を切らないとと思い、携帯を背広のポケットから取り出した。
 だが、着信画面を見ると「奈緒美」と出ている。なぜ彼女が? 気になり携帯を受信した。
「もしもし? 奈緒美か」
「ええ、そうよ、敬介さん」
「どうして電話を。何の用なんだ?」
 敬介は、少し苛立った口調になった。撮影が始まろうとしている時に、その上、自分を振った女の電話に付き合わされるとは。
「あなたとまた会いたいの?」
「なぜだ? もう俺と会う用などないだろう。医者と結婚するんだろう」
「信じられる。彼、ゲイだったのよ。それで何不自由させないから私に良き妻を演じてくれって言うの。そんなの嫌だから、あなたにまた会いたくなったの」
 奈緒美の声は泣き出しそうだった。確かにひどい話しだが、
「だからといって、今更、俺にどうしようというんだ」
 敬介は、さらに苛立った。
「もう一度会ってお互いのこと話し合いたいの? 駄目? まだ私はあなたのこと愛しているのよ」
 奈緒美が言った。その「愛している」という言葉は真剣そのものに聞こえた。敬介は、考えた。どう反応しよう。今更、婚約を破棄した女性に。だが、敬介の心も動いた。敬介もまだ、彼女のことを愛している。
 その時だった。地面がぐらつく感覚を受けた。は、と敬介は思った。地震だ。それもかなり大きい。建物全体がぐらぐらと揺れているのが見て分かった。どうしよう。こんなことはしていられない。逃げないと。どこへ。と、ふと赤いカーテンの方に目をやった。揺れが大きく敬介は、立っているのがやっとだ。倒れそうになったためカーテンを掴む。
 だが、揺れによりカーテンに吸い込まれるように敬介の体は倒れ込んだ。

 気が付くと、揺れは収まっていた。一分ほど続いた地震のようだが、敬介は床にひれ伏していた。手にはさっきまで持っていた携帯電話を掴んでいた。敬介は立ち上がりながら、それを背広のポケットにしまいこんだ。
 とにかく落ち着かないと。そして、ここから避難しないとと思った。目の前を見ると、廊下のようだった。長い廊下が続く。両側にドアがずらりと並んでいる。
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 敬介は、ここはどこなのかと思った。ライト館にいるはずなのだが。こんな長い廊下なんてなかったはずだが。
「大丈夫ですか。お客様」
と背後から男の声が聞こえた。
 敬介は振り向き、男の方を見た。男は、蝶ネクタイとスーツを着込んだ中年の口髭を生やした男性だった。
「ああ、何とか。地震が収まったようで良かった。すぐに避難しないといけませんね」
と敬介は蝶ネクタイの男を見つめる。
「地震、ああ、確かに小さいのがございましたね。じっとしないと感じない程度のが。でも、帝都ですと一月に一回は起こる軽いものですよ。お客様は、関東の方ではありませんね。どこの記者の方です?」
 敬介は男の言っている意味がよく分からなかった。
「何を言っているんです? さっきとても大きな地震があったでしょう? そんな軽いものじゃありませんでしたよ」
「はは、大袈裟ですね。やはり関東の方ではない。関西か九州当たりの記者さんですね。あちらの方々は地震には慣れてないと聞きますからね」
 蝶ネクタイは、微笑みながら話す。敬介は、この男の言う「お客様」とか「記者さん」という言葉が気になった。
「一体、記者さんとはどういう意味ですか。僕は記者ではありませんよ」
と敬介が言うと
「そうですか。今日ここにいらっしゃるのは、とりあえず記者の方ばかりのはずですが。開業間近の新館を新聞や雑誌の記者様に公開しているのですよ」
「え、あなた何を言っているんです? 今、ここは映画撮影に使っているんでしょう?」
と敬介は返した。
「映画撮影、そうですか。あなたは活動の方なのですね。ほお、この記念すべき新館を撮影にね。そうでしょうね。ここは、フランク・ロイド・ライト様が設計された由緒ある建物です。開業当時の姿をフィルムで残すと言うことは重要でございますよね」
 敬介は、呆気に取られた。言っていることの意味が掴めない。こいつは狂っているのか。何者だ? そうか、エキストラで、当時のホテルマンになりきっている男なのか。不気味だ。とにかく、ここを出ようと思った。
 当たりを見渡す。さっきまで見たライト館のロビーだった。だが、やけに落ち着いている。ロビーを見下ろすが、平然とした様子だ。数人ほどまばらに人がいる。だが、さっきまで撮影をしていたクルーや女優がいない。きっと地震で避難したのだろうと思った。
 階段を下りる。バシッと音と共に強い光が辺りを一瞬照らした。敬介が、その方向を見ると、男がカメラを持っているの目にした。古い時代の背広にカメラもかなり旧式だ。ああ、これがかの時代の記者の姿か。これもエキストラなのだな。だが、あんな地震が起こってまで記者の振りをし続けているとは。撮影はまだ続いているのか。
 このカメラを持つ男以外にも、ロビーには数人の人がいた。しかし、皆、相変わらず平然としている。ということは、さっきの地震は大したことはなかったということだったのか。
 敬介は生まれも育ちも地震の多い東京なので地震には慣れっこである。小さな地震を大袈裟に感じることなど自分にはあり得ないと思うのだが、まあ、時にパニックになることもある。そうだ、奈緒美からあんな電話を受けた後だっただけに心理的に動揺していたせいなのかもしれない。
 そうだ。奈緒美との電話が途切れてしまったのだ。もう一度、電話をしようと考え、敬介は携帯を取り出し、彼女へかけ直してみた。だが、何も聞こえない。何の信号音も。携帯が壊れてしまったのかと思い、待ち受け画面を見ると「圏外」という表示が出ていた。
 変だな。さっきはかかってきたのに。まあ、仕方ない。ここは山間の施設だ。電波状況は不安定だ。とりあえず、この明治村から外に出よう。そう思い、敬介は玄関を出た。とりあえず、辺りを見回す。撮影クルーがいてもいいのだが、見当たらない。さっきまで近くに停まっていたはずのトレイラーカーもない。エキストラをほったらかしにして彼らはどこに行ってしまったのか。信じられない。それも、地震があったわずか一分ほどの間に。
 大して大きな地震ではなかったのだから、そんな煙に巻いて逃げ出すことでもなかったろうに。
 敬介は、噴水の近くを歩いた。さて、それならそうと、この明治村を出て、さっさと車で東京に帰ろうかと思った。奈緒美のいる東京に。何であれ、彼女と直に話す必要がある。
 さて、どうやって帰ろうかと思った。辺りを見渡す。元来た道に戻ればいいと思うのだが、何だか、さっきまでと様子が違う。というか、こんな感じだったのだろうかと思った。
 目の前を車が通った。あ、クラシックカーだ。まあ、この施設なら珍しくない。多分、アトラクションとして走っているのだろう。しかし、それでも、どうもライト館に入る前とは様子が違っている。何だかにぎやかになったような。人通りが多くなっている。そして、敬介同様に皆、古い時代の服を着ている。あれ、もしかして、ライト館の中だけでなく、周辺も撮影範囲になっているのか。急な展開だな。それとも、明治村独自のエキストラか。
 敬介は頭が混乱した。まあ、どうでもいいやと敬介は思った。それよりも一刻も早く奈緒美に会いたい。その一心だ。エキストラとして借りた服はいずれ返そう。財布と携帯電話、キーがあるので問題はない。撮影クルーに預けたTシャツとジーパンはどうでもいいものだ。
 どうやって戻ろうかと思った。入場門から、駆け足で十分かそれ以上かかった。ただ、表示のある方向に向かって周囲をよく見ず来た。そもそも広い上、初めての場所だ。戻るのは一苦労に違いない。
 ふと、目の前に人力車と黒い服を着た車夫がいるのが目に留まった。
 きっと明治村のスタッフだろう。ガイド用に客を案内する。浅草や鎌倉で目にする人達だ。この人なら分かるだろう。そうだ。この人力車で入場門まで連れていって貰おう。数千円ぐらいかかるかもしれないが、迷って余計な時間を潰すよりましだ。
「すいません。入場門まで連れて行ってくれますか」
 車夫は、がっちとした体格の中年男性でキセルを手に持っている。古い時代の細長い葉巻パイプだ。観光用とはいえ凝っているなと思った。
「入場門? それどこのことだ?」
 車夫は怪訝な顔をして言う。
「決まっているじゃないですか。ここ、明治村のですよ」
「明治? 村?」
 車夫の顔はますます引きつった。
「とにかくお金はいくらでも払うんで連れて行ってください。迷ってどう戻っていいのか分からなくなったのですよ」
「あんさん、わしはあんたの言っていることが分からないですな。ここは、明治村というところではないですよ。そんなところ聞いたこともないすし。何と言っても、ここは帝都東京ですさ。それに明治とか言っていますが、今はもう大正ですがな。一体どこにあるんですかい、明治村とは?」

第3章へつづく。

この小説の著作権は、このブログの管理者マサガタこと海形将志にあります。
by masagata2004 | 2007-09-09 17:42 | 自作小説 | Trackback | Comments(0)

映画「パフューム」 芸術家と犯罪者は紙一重

この映画を観た後、そんなことを感じてしまった。

物語は、18世紀のフランス、パリ、捨て子として孤児院で育ったジャン・バティストは、類い希な香りを見分ける才能が生まれつきあった。その才能を買われ香水職人として大成功を収めるが、彼にはどうしてもやり遂げたい仕事があった。

その仕事をやり遂げようとパリを離れ、香水製造の町に移るが、そこで次から次へと女性を誘拐しては殺し、彼女たちの体臭を抽出していく。

ここからはネタバレになるので、まだ見てなくてこれから観たい人はご注意。


最後には、ジャンは連続誘拐殺人犯として逮捕されてしまう。そして、死刑判決を受けるのだが、彼には生き延びる秘策があった。それは、女性達の体臭から抽出した香りの調合で作った魔法の香水であった。

それは、死刑執行人をとりこにし、教会の司祭、裁判官、死刑を眺める大衆をも魅了させた。彼らが普段抑えていた欲情をはなたち、ジャンは、天使として扱われ無罪になり死刑を逃れる。

まあ、そんなことあり得ないのだろうが、ただ、過去の歴史を見れば、香水の香りではなくても、大衆を上手い具合に扇動して犯罪的行為をのうのうと成し遂げてきた事例はある。いい例がナチスドイツである。面白いことに総統だったヒットラーは、政治家になる以前は画家を目指していた。

ヒットラーがあれだけの大衆扇動をやり遂げたのには、彼の芸術家としての才能が影響したと考えられる。最近でいえば、小泉前首相の異常高支持率人気。あの人、オペラ好きだったね。

芸術といえば、ただ芸術としてだけ存在し、日常には関連しないと考えがちだが、実をいうと、恐ろしいまでに我々の日常に影響を与えている。時に、その芸術のために、非常に危険な行為に人間は及んでしまう可能性があるという教訓かもしれない。

究極の芸術を求めることとは、ある意味、究極の犯罪行為なのかもしれない。特にこの映画では、18世紀のフランスという、人命がとても軽んじられていた世相をモチーフにしていたため、主人公が残虐に見えない描写となっている。

芸術家には世間知らずが多いというよね。私個人としては、そんなにまでなって芸術を極めたいとは思わないよ。現実主義者だし、現実主義が好きだから。

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by masagata2004 | 2007-09-08 15:38 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(0)


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