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演劇評論「新・こころ」 我々の知っている伝統とは?

夏目漱石原作の「こころ」を現代の視点で解釈して演劇にした作品。新宿3丁目でflying Stageという男性のみの役者により上演。以前、紀伊国屋でも同じ作品の劇を見たことがある。あくまで原作を忠実に劇にした作品でそれをきっかけに原作の本を買い読みもした。それについては、この記事を読んでいただきたい。

誰もが感じたのは、この小説は明治時代のゲイ文学ではないかということ。劇でも触れていたが、文中には「同性愛」ということが堂々と書かれている。現に、明治時代までの日本では同性愛は異端なものではなかったのだ。当時は、男色と呼ばれていた。それは、現代のゲイというのと違い、食べ物の好みといった程度で、性的指向がアイデンティティとなっていたものではない。

劇中では、明治初期に出版された男色文学について語る場面があり、異性愛と同様に一種のロマンスとして捉えられている。男色は硬派。女性としか付き合わないのは軟派といわれていた。

しかし、それも日本の近代化の中で廃れていってしまう。「こころ」は、それを憂いた作品ではないかと思わせてくれる。

この劇で重要なメッセージは、同性愛を含め、現代の日本人が伝統として考えている「伝統」は実をいうと、近代化を始めた時代に西洋から受け継がれた部分が案外多いということだ。


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by masagata2004 | 2016-04-04 10:01 | 演劇評論

1本250万円のワインで考えさせられること

お正月、知り合いの招待で、ホテル・ニューオータニにある超高級フランス料理店ツール・ダルジャンでディナーを食した。正装でというのでお正月らしく着物で来た。ダイニングルームの前の待合室でワン・ショット。
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待合室は写真の通り豪華で、また広い。その広さだけで一つのレストランがすっぽり入るようなところ。そして、メインのダイニングルームはもっとすごい。鏡天井にシャンデリア、各テーブルにキャンドル。窓には豪華なカーテン。贅を尽くしたインテリアの数々。そこでは、黒いモーニングを着たギャルソン(給仕)が、テーブルと同じ数だけ所狭しと歩いている。それは、映画「華麗なるギャツビー」に出てきたディナーの場面を思い出す。

もちろん、ディナーコースは格別。食前酒にシャンパン、フォアグラ、メインディッシュは鴨のロース。でもって、鴨にはそれぞれ番号がつけられ、食したお客に番号のついたカードが渡される。
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食事中、ワインはどうかとソムリエに勧められ、あっさりとした風味の赤ワインを勧められた。その時、その店で一番高いワインはどんなものかと訊いたら、ロマネコンティで1本250万円だといわれた。

1本250万円のワイン。グラスでは提供されず、欲しければボトルごとで注文しなければいけないのだとか。もちろん、そんなもの手が出ないのだが、実際に時々、注文する人もいるのだとか。

250万円あれば、何ができるだろうか。

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by masagata2004 | 2014-01-05 16:10 | マサガタな日々

遠藤周作作「沈黙」 クリスマスに考えるべきこと

クリスマスが近いということで、たまたまブックオフで105円で売られていたこの本を買った。なんでも、ハリウッドでの映画化も予定されているとか聞いた。

ストーリーは、キリスト教に禁制の令が出て、キリシタン狩りが猛威を振るう江戸時代の日本が舞台。師として尊敬するある司祭が拷問され棄教したという報告を受けたポルトガル人の司祭二人が密航船に乗り込み、長崎の地に入る。そこで隠れキリシタンたちに対し信仰を施す。だが、彼らの存在が権力側に明らかとなり過酷な運命にさらされることに。

実に巧妙に書き込まれているのが驚き。遠藤周作はキリスト教をテーマにした作品が多いというから、まさにその集大成ともいえる内容であった。この作品は実在の人物がモデルだというのだからさらに驚き。

キリシタン狩りといえば踏み絵だが、踏み絵だけではごまかされると唾を吐くことまでされる場面を読み、当時の幕府がいかにキリスト教を排除しようとしていたかが刻銘に表されている。

江戸幕府のキリスト教弾圧は、鎖国と同様に西洋帝国支配から逃れるためであったとされる。植民地支配は宣教師を使い、現地人を洗脳させ、抵抗意欲を失わせるのが方策だ。それを当時の幕府は恐れていたのである。

題名の「沈黙」とは、過酷な運命にさらされている人々にどんなに祈りを捧げても、何の救いもないことから言い表された言葉。

さて、ネタバレをすると、



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by masagata2004 | 2013-12-23 20:44 | 書籍評論

選挙を考えるストーリー: 10人の有権者と3人の立候補者

参院選まであと1週間となりました。そこで、私が10年前に書いた選挙に関する考察をシミュレーション・ストーリーとして仕立てた文章を提供します。その時はブログなどなかったので、自分で書いて、お蔵入りにしていました。10年前の状況なので、ちょっと今ではピンとが外れているところがあるかもしれません。

題して「10人の有権者と3人の立候補者」

ある選挙区に、10人の有権者がいて、それに対し、3人が立候補しました。選ばれるのは、1人だけです。

立候補者は、以下の通り。

1.利権党のJ氏
2.市民党のK氏
3.泡沫党のD氏

それに対する10人の有権者は、

1.泡沫党員で護憲・戦争反対などの理想主義に燃えている人。
2.インテリな人。(弁護士、ジャーナリスト、学者のような仕事)
3.軟派な大学生。
4.土建会社の社長。
5.土建会社で働く作業員。
6.サラリーマンA
7.主婦
8.若いOL
9.年老いた農夫。
10.サラリーマンB

さて、有権者の選択はいかがなるものか、選挙が始まります。

1.政権与党である利権党のJ氏は、建設、農業などの業者をバックに、かなりの献金と支援を受け、組織票、業界票、物量作戦による選挙運動を展開しています。
2.市民党のK氏は、政策を武器に、しがらみのない選挙を戦っています。だが、資金力、組織力に弱い選挙運動です。利権党の政治では、いけないと思い、政権交代を目指しています。
3.泡沫党のD氏は、選挙で自分の理想を訴えることに意義を感じており、勝つことなどは望んでいません。党は、比例でいくつか議席を確保して、野党として与党の批判をすることを目指しています。資金は、機関紙などの売り上げがあり、利権党ほどではありませんが、豊富です。

さて、10人の有権者それぞれの特徴です。

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by masagata2004 | 2013-07-07 21:37 | 時事トピック

「バック・トゥー・ザ・フューチャー2」 1980年代風21世紀 

いわずと知れたタイムトラベルものの代表作シリーズの第2弾。たまたまテレビで見た。1985年のティーンエージャーが1955年が両親がティーンエージャーだった時代にタイムスリップ、一家の歴史を変えたが、その後、未来の自分の子供がティーンエージャーとなった時代、2015年にタイムスリップする。

ここで面白いのは、この映画が上映された1980年代の人々が予想した2015年、今から2年後の世界というのが、現状とどう違いがあるかという点。

映画に登場した空飛ぶ自動車、景色が変わる窓、小さなピザが大きくなるインスタント食品、指紋で開けるノブのないドア、キャスターのない宙に浮くスケートボード、乾燥機付きのジャケット。そういうものはない。

逆に、当時なかった今の時代を象徴する最新テクノロジーであるインターネットとスマホがなかった。

やはり未来を予想するというのは難しいということなのか。

だが、タイムスリップものというのは面白い。時空の旅で世界が広がる。常識が覆される感覚を味わえる。

そういう小生も、ブログ上でタイムスリップ3部作を発表している。以下がその説明。

1.インペリアル・ホテル

明治村の旧帝国ホテル玄関ホールから大正時代、関東大震災直前の新館開業時の帝国ホテルへ

2.私をスキーに連れてっての時代に連れてって

不景気な現代からバブル時代の志賀高原スキー場へ

3.ヨーソロ 三笠

横須賀の記念艦三笠に乗って日露戦争時の日本海へ

娯楽でありながら、それなりの教訓も盛り込ませている。

近々、タイムスリップ3部作として出版予定。

時空の旅、みんなもしてみない?

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by masagata2004 | 2013-05-30 22:49 | 映画ドラマ評論

KIMONOを着よう! 第3章 貝の口

日本の民族衣装、着物を通して学ぶ、伝統と文化の重さ。

まずは第1章第2章をお読み下さい。

さてその日の朝、その着物を着てみた。包み紙の中には、折り畳んだ羽織と羽織の左右を衿でつなぐ羽織結びと長着と帯が入っていた。
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着たのは、その中の長着だ、羽織を着なければいけないほど、まだ寒くはない。浴衣を着るのと同じように下着姿の上に長着を身につけた。さて、そうなるとベルトの役割を果たす帯を腰に巻かなければいけないのだが、それがかなり長いものであることに気付いた。旅館やホテルで着る浴衣だと短く、巻いてさっと側面で固結びをすればいいのだが、これはどうも、そんなに簡単にいかないらしい。何度もくるくると腰に巻いて、最終的に残ったところで、固結びをするようにしてみた。だが、浴衣の帯と違い、この帯は太く結びにくい。はて、どうやって結ぶのか。何度か試してみる。やっとかっとして、手を離しても腰から落ちないように巻き込めた。だが、どうも不安定な感じがする。きっと正しいやり方ではないのだろうが、とにかく結べたのだから、これで行こうということにした。
気付いたことがあった。財布や携帯電話、鍵を入れるポケットがない。だが、すぐにどこに入れればいいか気付いた。袖口だ。着物の袖の幅は広い。袖口にそっとものが入れられ、袖そのものが袋のようになっている。よく「袖の下を通す」を入れるという慣用句があるが、その由来はこういうことなのかと思った。
着物だから、履くものは靴ではなく、夏によく履くサンダルにした。たまたま持っていたサンダルが草履風だったので丁度いいと思い、素足にサンダルを履いた。

歩いて外に出てみると、実に歩きにくいことに気付いた。まるでスカートを履いているようだ。特に、階段を上がるときは、こけそうになってしまう。昔の人は、こんなものを日常的に着ていたのかと思うと信じられない気分だ。そして、電車に乗る。周囲の視線が気になる。周りの人で特に気にして見ている人はいないようだが、普段着ない服だ。どう見られているのかおのずと気になる。

約束の時間になり、柴又の駅に着いた。そこを出てから、真っ直ぐのところに柴又帝釈天がある。待ち合わせは駅前の広場だ。
すると、外国人らしき人が数人ほど待っていた。
「ハロー、皆さん、フリーウォーキングツアーに参加の方ですか。私が今日のガイドのイチローです」と声をかけると、初老の女性がにっこりとして「こんにちは。まあ、素敵なキモノね」とさっそく着物姿に反応してくれた。
「はい、是非とも、日本の伝統の衣装をお見せしたくて」と応えると、他のゲストも「ナイス・キモノ」「グッド・スーツ」「グレイト・ファッション」といういい反応が続けざまに返ってきて、皆珍しそうに見つめる。
そうか、外国の人にとっては、エキゾチックな衣装であり、また、ファッションとして受け止めるものなのかと思った。我々にとっては、どうも辛気くさく、保守的なイメージが強い。だからこそ、着る人は少ないのが現代なのだろう。
「ハロー」と声をかける女性の声が、清美さんだ。黄色いワンピースを着て、相変わらずきれいだ。
「ああ、清美さん」と一郎がにっこりとして挨拶。
「あら、着物を着てきたの」と清美が目を大きくして見る。
「はい、祖父の形見で、せっかくだから着てみようと。外国の方たちをもてなすのには丁度いいかと」と応えるが清美の反応はなぜかしっくりしない。そして、外国人の方々を見て「さあ、皆さん、これから柴又帝釈天に行きます。私は、彼と一緒にガイドを務めるキヨミです」とガイドを始めた。
駅から帝釈天までの間は、お土産屋さんが軒を並べる。この光景はとても風情がある。ところどころで立ち止まり、これは何?とか、質問をされた。単なる風車や竹とんぼなどの和細工がとても珍しがられた。
数百メートルほど歩いたところで、帝釈天の入り口に到着。
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一郎は、そこで帯が緩んでいるのに気付いた。すぐにまた固く結ぶ。そして、帝釈天の解説をした。
「ここは、17世紀の初めに建てられた仏教の寺です。タイシャクテンというのは仏教の守護神の名前です」
中に入り、本堂を案内するが、ここの醍醐味は、本堂の裏手にある彫刻ギャラリーだ。仏教の説話10話を木彫りで描いた壁面が続く。木彫りなのだが、実に細かく巧みに描かれているのに感動する。まさに芸術品だ。一郎と清美は交代で、各木彫り画の説明をした。
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次に、邃渓園というところへ向かった。
庭園を囲むように和館と屋根付きの廊下が続く。さっそく入り口に入ったところで、清美がゲストに対し、「皆さん、少しここで待っていてくださいますか。数分ほど」と声をかける。ゲストは、OKという反応だ。入り口付近からも美しい庭が眺められるので、この辺でゆっくりしていると言ってくれた。
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一郎はどうしたのだろうかと思ったが、清美が一郎の手を取り「ねえ、ちょっと来て。二人だけになれるところで」と言う。えっと思った。いったい何のつもりで。不思議とわくわくとした気持ちになった。
ついていくと、廊下の奥の人目のつかないところ。消化器などが置いてある和館の隅だ。どうして、こんなところに、それも二人だけで、おまけにこんな美人と、一郎は変な気分になった。清美は言った。
「この帯をほどいて」

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by masagata2004 | 2013-03-25 09:00 | ライフ・スタイル

原発問題を考える小説 記憶 最終章 かの時代の記憶

原発に関する深刻な問題を問いかける。軽小説スタイルで。

まずは第1章からお読みください。


白い布は衣類のようだ。それも頭から足先までをすっぽり覆う服のようだ。なので、宇宙服にみえるのだろう。こんな古い時代から今まで白い布は色褪せてなく、形も整っていて丈夫な繊維でつくられていたのがうかがえる。そこからも失われた文明の高度さがみてとれる。

「なぜ、宇宙服と言い切れるんだ」とリヒャルトは突っ込んだ。リヒャルトにはそう思えなかった。
「壁の絵に星マークと共に宇宙服を着た人間が描かれていただろう。まさに、この宇宙服を着て宇宙へ旅立ったものがいたということさ。もしかして、ここはロケットの発射台だったのかもな」
「しかし、ならばなぜ、こんな地中深くにあるんだ」
「そ、そうか、それもそうだな。だけど、ここで、宇宙まで行けたことを証明する文明の遺物を、ここに保存したかったからだろう」
「何も、こんな地中深くまで持って行かなくてもよかったんでは」
「何を言っているんだ! エジプトのツタンカーメンの墓や、他の王の墓でもそうだろう。地中深くに埋めておかなければ、盗賊などに大事な財宝を奪われてしまう。それを防ぐためにも、地下の保管場所というのは必要なんだ」とインディは悠々しく語る。
「地下の保管場所」という言葉にリヒャルトは、びびっときた。まさか?
「おい、また、扉があったぞ。大きく頑丈そうな扉だ」とクルーが、そこに照明を当てる。頑丈な金属製の扉があり、扉の上に、絵が描かれている。これは、最初にみた壁画と同じく怖い顔をした道化師が、同じく手招きをしているジェスチャー。
「ウエルカムされている。やっと財宝のありかにありついたねと」とインディ、自信ありげに言う。
リヒャルトは、床を見下ろした。白い布の衣類以外に、何か落ちていないかを探った。すると、ある錆び付いた機械を見つけ拾い上げた。片手で持てる大きさと重さだ。よく見ると、計器のようだ。ぼやけているが、針と目盛りのようなものが入っている。何だろうと思いながら、はっと、思いついた。自分の持ってきた計器類の中に類似品があるからだ。
「インディ、本当に、この先は財宝があるのか」と不安げな表情のリヒャルト。
「ああ、間違いない」と対称的に明るく爽快な表情のインディ。
扉は頑丈で、どうやら厚みも大きい。そして、素材が鉛に近い金属であることが判明した。扉の施錠が幾重に打ち付けられており、その厳重さがうかがい知れる。
「変じゃないか。それほど、厳重に警護されているところに、まるで僕たちを誘い込むなんて。盗賊に大事な財宝を奪われたくないとしたら、こんなにたくさんの痕跡を周囲に残していること自体、変だ」とリヒャルト。
「何言ってやがる。見ろ。このピエロは、俺たちを手招きしているじゃないか。ここまでこれておめでとうと言っているんだ」
「でも、彼の表情は怒っているようだ。なんだか矛盾しないか」
「罠にはめてやるってことか」と冗談っぽく言うインディ。
「罠にはめるなら、ここまで到達する前に、とっくにはめて、近付けなくさせていると思う。むしろ、これは、ある種の警告を促しているのではないか」
「警告? では、なぜ手招きをしている?」
「手招きとは限らないだろう? これは逆に来るなと制止しているサインかもしれない」
「制止?」
「数年前、僕たちが中東に行ったことを覚えているだろう。そこでは、僕たちのジェスチャーがことごとく、相手には違った解釈をされた。来い、来いとジェスチャーをしたつもりが、相手には来るな、来るなと捉えられて、慌てて引き戻したことがあったよな。古代の人間も、俺たちとは違うジェスチャーを使っていたとすると、制止のサインとみる解釈もあり得る」
「考え過ぎだよ」
「何が考えすぎだ。君が考古学者なら、むしろ常識と考えるべきじゃないのか。そもそも、壁画の文字も解読できなかった。僕たちの知っている歴史にはない人々の持つ文明だ。君は、さっきから自分に都合のいい解釈をし過ぎているんじゃないか。写真のようなレリーフが、火山爆発だとか、奇形児の剥製が、単なる墓だとか。そして、散乱している白い服が宇宙服だとか。どう考えても、府に落ちないだろう。何か別の意味があるんだよ」
「じゃあ、どういう意味があるというんだ? ここは何だというんだ? おまえは、ここが何の施設かと分かっているのか」
「ほんの数日前までいた場所を思い起こさせる。何となく似ている」

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by masagata2004 | 2012-04-22 16:19 | 環境問題を考える

児童搾取ドキュメンタリー「未来を写したこどもたち」

アメリカ人女性が、インド・カルカッタの貧民街で生きる子供たちにカメラを渡し撮影を学ばせ、それにより喜びと希望を与え、そして、苦境にある彼らを救う活動をする。

とってもいいドキュメンタリーのように思えるが、観てみると、欧米人による第3国の子供たちを見せ物として使い製作したよからぬ意図が感じられる映画だ。インドの新聞では批判的な意見が書かれたという。ある意味、同じ境遇の子供を主人公にした娯楽映画「スラムドッグ・ミリオネア」と似通っている。

つまりのところ、肌の黒い不気味な外見で、不気味な生活をしている子供たちに同情の目を向けながら、先進国で白人であるという優越感を沸き立たせ、新興国インドに対して持つ脅威に対抗しようという意図だ。

見せ物にされた子供たちは何も分かってなく、カメラを渡してくれた女性に感謝して親しみを覚える。彼らは、その女性の施しにより学校に通えることになるが、事情があり続けられない子供も出てくる。もっとも、そんなこと分かりきっていたくせに、必死で救っている振りをして、結局のところ、一時的に希望を与え、そして何も知らなければ味わうこともない落胆を経験させるという残酷な仕打ちをしてしまったのではないか。

そんなドキュメンタリーを観ながら、こんな映画か小説の案を思いついた。

全盛期を過ぎ売れなくなった女優が、人気を盛り返そうと、ドキュメンタリー作家と組み、第3国の貧民街に住む子供たちを救う活動をする。その様子を映像に収め、ドキュメンタリー映画を製作して、慈善活動への援助を広報すると同時に自らの売名行為もちゃっかりとする手はず。なぜか、その映画制作に有力財界組織がバックアップ。

子供たちと遊んだり、苦境を知って涙を流すシーンを撮らせ、最高のドキュメンタリー映画が出来上がり、上映され大ヒット。多額の寄付金も集まる。目論見は大成功。結果的に、映像に映し出された子供たちは学校に通えたりして貧民街を抜け出せるものの、それは、全世界で同じ境遇にある子供たちの中のほんの一握りであるという実状を、彼女は活動を通して知ってしまい、罪悪感を感じてしまう。

ある上映会で撮影場所となった第3国の大使から、子供たちを見せ物にして自らのプロモーションに使ったのだろうと揶揄される。女優は、その大使に対して「じゃあ、なぜあなたの国は、あの子供たちを救おうとしないの? 他の国から、施しを受け見せ物にされて恥ずかしくないの?」と言い返し、両者は大口論。それを見ていた、彼女に対しかねてから批判的であった真面目な子供の救済NGO運営者は、彼女に声をかけ、財界組織がドキュメンタリー映画製作に資金援助をしたのは、国内の貧困層に、より苦しい境遇にある人々を見せることで、不満の目をそらすキャンペーンを打つ目的だったからだと伝える。彼女は自らも利用されていたことを知りショックを受ける。NGO運営者は、彼女に対し様々なアドバイスを与える。

そして、彼女は一心発起して、あることを企てる。自らの立場を利用して国際経済フォーラムのような各国の政界・財界の要人が集まる場所に登場。そこで、自らが売名行為の意図でドキュメンタリーの製作に関わり、財界組織も悪しき意図で製作の後押しをしていたという衝撃的な事実をメディアでの生中継の中、大公表する。

だが、活動の結果として本心で困っている世界の人々を救いたくなったと訴える。そのためには、一部の人々に富が集中する経済の分配システムを変えるべきであり、ちょっとした慈善活動では、ほんの一握りしか救えないのだから、そんなシステム全体を変革して、より多くの困っている人々を救い、誰もが住みやすい世界の構築に向け、知恵を出しあうべきだと主張する。

こんなものでどうかな。

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by masagata2004 | 2011-12-30 16:56 | 映画ドラマ評論

アレルギー小説「日本男児をやめられない」 最終章 海渡りと潮抜き

高温多湿の日本に来てゴム・アレルギーにかかったカナダ人が体験する日本の伝統文化とは。

まずは第1章から第5章までお読み下さい。

次の週、祭りの日が来た。神社を中心に町の人々、隣町の人々、それに今年は20年ぶりに海渡りでの褌着用が復活ということが話題になり、より遠くからも見物客がやってきた。

そして、ジャックにとっては思わぬ訪問客と対面した。それは妹のアンヌだ。驚きの知らせを受けた。アンヌは、数年前にアメリカ人と結婚してニューヨークに住んでいたのだが、夫がゲイであることが発覚。その上、最近、州で合法化された同性婚で新しいパートナーと結婚するつもりで、そのため、アンヌに離婚を申し出てきたというのだ。もちろんのこと、離婚したのだが、結果、心に深い傷を負ってしまった。何とか気分を変えようと兄のジャックがいる日本まで飛んできたというのだ。ジャックは、気分転換に祭り見物を勧めた。アンヌのため浴衣も繕った。

祭りの日、晴天で町は大盛況であった。神社から海岸までの通りはごった返した状態だ。商店街がいつになく賑わい、そして、神社は露店が軒を連ね、そこも大賑わいであった。

朝から町のどこかしこから笛太鼓が鳴る。アンヌは百合子に連れられ、いろいろなところを案内された。しかし、こんな賑わっている中でも、アンヌの表情は浮かない。必死で雰囲気に合わせて笑おうとしているのだが、それ以上に心の傷が深いようだ。

お昼が過ぎた。ついに目玉イベントの御輿担ぎと海渡りが行われる。特に海渡りは、腹巻きと褌の男衆によるものなので注目の的だ。神社で、お清めの儀式が執り行われ、御輿を担ぐ町民が一同に境内に集まり静かで厳かな儀式が執り行われた。神社の宮司が現れ、祈祷をするなどの儀式だ。ジャックは、仲間と一緒に境内に立って、その儀式をじっと見つめていた。初めて見る光景だ。その荘厳さに強い衝撃を受けた。

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清め儀式が終わった。さあ、始まる。まずは御輿担ぎだ。ジャックや男衆一同は、腹巻きと六尺褌、鉢巻き、地下足袋をした格好になっているが、海岸までは、その上に法被を着ている。なので、褌が見える状態ではない。というのは、まずは、男衆だけでなく、老若男女を交えた町民が境内から海岸近くまで御輿を交代で担ぐのだ。それは同じ法被を着ていれば、男女関係ない。お祭りの和気あいあいのイベントとして執り行うものだからだ。御輿に触ることは縁起のいいことだとされるので、誰もが飛び入りで交代で担ぐ。

その周りでは笛太鼓の音がなる。御輿を担ぐ者達は「ワッショイ、ワッショイ」と揃えて掛け声を出す。

百合子も、それに混じって1分ほど担いだ。ジャックと泰蔵は、先頭で担いだり、離れて見守り指揮を取る。御輿、英語で訳すと、portable shrineと呼ぶらしい。つまり、持ち運べる神社。それを体に接して担ぐので、神と自らを接触させる感覚を味わえる。肩にかかる重みは神からの御達しのように感じられる。

ついに、海岸近くにやってきた。御輿は一旦、用意された台に置かれる。さっそく男衆の出番だ。それまで法被を着て一緒に担いでいた者、または、離れて見守っていた者、などが、一斉に法被を脱ぎ、白の鉢巻き、腹巻き、褌、地下足袋だけの姿になる。男衆数十人が御輿のそばで生尻を見せつけずらりと並んだ。若い者から年老いた者、痩せた者、太った者と尻の形は様々だ。壮観な眺めである。ジャックと泰蔵が担ぎ棒の先頭に来た。周囲の目は、彼らに釘付けだ。カメラのシャッター音も聞こえる。

特にジャックは祭り初の外人の担ぎ手で、おまけに祭りの幹事。背が高くがっしりとした体格。胸毛もあるのでさらに注目の的。もう褌が恥ずかしいなどといっている場合ではない。

男衆には、強い日差しも照りつけ輝いている。気温は三十度を超えている。なので、海に入るのは丁度いいぐらいだ。泰蔵は、ひとまず御輿から離れた。どうやら、海へ御輿を誘導する係りを担うつもりだ。一緒に昨年の幹事役である源がいる。太めの源の褌姿は相撲取りのようであった。
源は泰蔵に言った。
「泰蔵さん、二十年ぶりだな。褌で海に入るのは。いい気分だぜ」
「おう」と元気いっぱいの泰蔵。

ジャックは先頭で、同じく先頭の太郎と一緒に御輿の担ぎ棒を肩にしょっていた。その姿を百合子が見つめている。その百合子の隣にアンヌがいる。
ジャックは、掛け声をかけた。
「いくぞ! ワッショイ」
泰蔵と源が、手振りで皆を海へと誘導する。一同は、どんどん浜辺の方へ進んでいく。そして、砂浜に。

その後、波打ち際に来る。ここからが慎重だ。数百キロの御輿を担ぎながら、波打つ水の中に入っていくのだ。浅瀬が終わる三百メートルぐらいまで。丁度、小さな岩礁が見えるところまで担いでいくのだ。

ジャックも、数日前、下見として同コースに入ってみた。一番深いところはジャックの胸元まである。他の者だと肩ぐらいまではある深さだ。水の中なので、足元もふらつきやすい、そういう中を少しずつ進んでいくのだ。そして、岩礁の辺りまできたら、くるりと回って海岸へ引き返す。

周囲で笛太鼓が鳴り、一同は「ワッショイ、ワッショイ」と掛け声を上げる。地下足袋の中に水が入ってくる深さにまでなった。いよいよだ。そして、股の辺りまで。褌が、ぎりぎり見えるほどの深さになった。その深さで約百メートルだ。海岸で見物する人々が遠く小さく見えてしまう。自分たちが海の中に取り残されたような気分だ。
「よーし、深くなるぞ」と泰蔵が言う。
そして、沖の方を見ると数十メートル先に岩礁が。水がどんどん上がっていく。大事なことは御輿を海に沈ませないことだ。一同は団結した。
「ワッショイ、ワッショイ」と同時に掛け声をかけ、海岸の見物客にも聞こえるほどの大声を出した。海水に腰まで浸かる。腹巻きまでびっしょり濡れる。ジャックの胸元まで水位が上がった。一番深いところだ。岩礁が数メートル先にあるのが見えた。
「ようし、引き返すぞ」と泰蔵。泰蔵は首まで浸かっているが、足を地につけず、泳いでいる感覚だ。そして、引き返すように御輿のコース変更を誘導した。

続き
by masagata2004 | 2011-10-30 17:43 | ライフ・スタイル

社会教訓小説2: ふれあい商店街 第2章 昭和商店街

失われた地域コミュニティが問いかけるものとは。

まずは第1章をお読み下さい。

その日、牧野部長が、落胆した表情で真知子に大失態のことを知らせた。会議室で二人きりで話してくれたが、部内では、すでに話題になっていることだ。先月、真知子が企画デザインしたウォーリーバリューの豆腐が一丁99円という価格設定になっていたのだ。実際は、一丁98円にしなければいけなかった。数年前から売り出していたもので、真知子が主任になって引き継いだのだが、パッケージ・デザインのちょっとした変更と商品の価格を示すバーコードを更新する作業だけだったので、簡単に済ませ、真知子が最終チェックをして商品は製造、出荷されたのだが、そのバーコードの番号の打ち間違いで価格が99円となってしまっていた。

どの過程でそんなミスが生じたか分からないが、チーム・リーダーとして真知子が失敗の責任を負うことになる。特にバーコードのチェックは必須だけに、それを怠ったことは重大な過失だ。スーパーとしては、棚に商品を置く時に、バーコードと違う値札を棚に貼り付けられない。たかが99円と98円の違い、むしろ1円得するのではと思われがちだが、わずかでも価格の設定は商品の売り上げを大きく左右する。特に「98」という数字は、消費者の割安感を誘うので、売上全体を大きく左右する。一丁98円の豆腐として固定化したこの商品の値段を突然変えることはできない。なので、商品は全て回収、当然、パッケージと中身はどちらも廃棄される運びとなった。損害額は2千万円に及ぶ。

このようなミスは年に何回か起こる。それによる担当者への処分は、始末書を書かされるか、降格や配置換え、損害がひどい場合は、依願退職してしまったケースもある。真知子も、主任になる前、何度かそんな処分を受けた人達を目にしたことがある。

この業界は、その意味でプレッシャーが実に大きい。些細なミスでも、膨大な損失が生じてしまうのだ。一つ一つの過程を慎重にしなければいけない。

牧野部長は、とりあえず始末書を書くように伝えた。処分は、それから決めると、さすがに退職までは迫るつもりはないが、主任のままでいられるかは分からないと、これから検討するとか言った。

とりあえず、最終的な処分が決定するまでは、主任として今任せれている仕事をきちんとこなすこと、これ以上、絶対にミスがないように。というので、仕事に専念することになったが、部内の自分を見る目は厳しかった。特に自分のチームのメンバー、つまりは自分の部下、特に年上の男性社員たちの目は、ひときわぎすぎすしていた。普段から真知子と話す時の表情は快いものではなかったが、この事件を機会に、さらに不快になっていた。もっとも真知子がいないところでは「そらみたことか」と愉快になっているかもしれない。実際のところ、それが社内の雰囲気でもある。

その日、仕事が終わり、真知子は、いつになく疲れ切っていた。普段は電車に乗って30分ほどの自分のアパートに帰って自炊するか、アパートの近くのレストランで食事をするのが常だが、仕事が終わると、耐えきれなくなるほど空腹であった。

なので、すぐにでも近くで食事を取ろうと思った。この町の新オフィスに来てから、この辺りで外食をしたことがない。昼食はいつも自家製の弁当で、社内で取っている。

まあ、せっかくの新天地に来たのだから、近々、新店舗も開店となるこの町を探るのもいいかもしれない。歩いていくと、「昭和商店街」という看板のアーケードの門を見つけた。真知子は、そこに入っていった。通りの街頭に大きな黄色い旗が並べて掲げられ、何か大きな文字が書かれ、風にはためいている。祭りか何かあるのだろうか、と思ったが、旗に何が書かれているかまで読まなかった。真知子は下を向いて歩いていたからだ。

10歩ほど歩いたところに、「昭和街食堂」という看板の店を見つけた。ここで食事ができると思い、中に入った。中は、何とも殺風景で、テーブルと椅子が10人分ほど並べられていた。何とも雑多な感じがする。真知子が外食するファミリーレストランや中心街のお洒落な喫茶やレストランとは全然、雰囲気が違う。いかにも、個人で経営している店という感じがする。
 

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by masagata2004 | 2010-11-17 22:35 | ライフ・スタイル


人生は常に進歩していかなければならない


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