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映画「ヒトラー 最期の十二日間」

レンタルで借りたドイツ映画。

2時間以上もの歴史長編である。私は、以前、ヒットラーが軍人からドイツの首相になるまでの過程を追った米CBS制作のミニシリーズ・ドラマ「ヒットラー」のDVDを購入して見た。また、ヒットラーの時代、ナチス打倒を呼びかけるビラを撒いたことで死刑に処された若き女性活動家、ゾフィー・ショルの最期の5日間を描いた映画「白バラの祈り」を映画館で見た。どちらも、この「映画ドラマ評論」のカテゴリの中に評論を残しているので、読んでいただきたい。

映画の感想をいうと、お見事の一言であった。パソコンの画面で吹き替えで見たが、それなりの臨場感が味わえた。ベルリンがソ連軍により陥落するまでの官邸の地下の様子をドラマ化したものである。ヒットラーの秘書をしていた女性の手記を元にした映画である。

哀れな最期を遂げた独裁者、愛人エヴァ・ブラウン、宣伝の達人ゲッペルス、その家族、最期まで総統に忠誠を誓った士官達。妄想の果ては、こんなものなのかということを如実に表している。

最期に秘書だった女性ユンゲが、老齢期となり、その当時を振り返る場面がある。若さ故に何も知らなかったと語り、でも責任は逃れられないと。ホロコーストの被害にあった人や遺族の方々が見るとどう思うだろうと考えた。

ヒットラーは、最期は国民をも見捨てたということだが、見捨てられた国民に責任があったのも確かだ。ナチスは民主主義の体制で生まれた政権だったのだから。だが、当初支持していた人々も、ここまでひどい状況になることは予想し得なかったのだろう。だからこそ、政治には冷静に状況を見抜く知恵が必要とされるのだ。

日本も人事ではない。戦前を振り返ると似たような現象があり、指導者達も最期は似たような結末を迎えた。日中戦争当時の近衛氏は服毒自殺、真珠湾攻撃の東条氏は自殺未遂、結局A級戦犯となり処刑される。

この映画で許せないなと思ったのは、ゲッペルス夫人が、自分の子供に毒を飲ませて心中させたシーンだ。子供には罪はない。仮に自分の汚名を背負うことになっても、生き続ける権利はあったはずだ。

意外だなと思ったのは、ヒットラーとかなり近い立場にあった人々が最近まで生き延びていたことだ。自殺したり処刑にされた者もいたが、手記を語った元秘書のユンゲを含め、戦後も生き続け老齢期を迎え亡くなった人々もいる。どういう気分で生き続けたのだろうかと思った。

ベルリンの中心街では「我々が忘れてはならない恐ろしい場所」と頭に書かれアウシュビッツやダッハなどの元収容所の名前をリストアップさせた看板があり、市内の歩道にはつまづきの石と呼ばれる犠牲者の墓標があるという。議事堂の近くには「石の波」と呼ばれるホロコースト記念碑が建てられているという。ドイツが、戦後辿った道を象徴するかのようだ。結局のところ、それが功を奏し、今やEUを主導する立場になるまで信用を回復している。

日本はA級戦犯を祀った神社に総理大臣が参拝し、周辺国との関係は悪化するばかりで過去の呪縛から断ち切れないまま。こんな映画を作れる状況でもないのだ。

歴史をしっかり見つめ直し克服することは平和な未来を築くための人類共通の課題なんだろうとつくづく思う。

映画「ヒトラー 最期の十二日間」_b0017892_17222291.jpg

by masagata2004 | 2006-04-16 17:18 | 映画ドラマ評論 | Trackback | Comments(1)
Commented at 2007-08-07 21:10
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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