小林由美著「超・格差社会 アメリカの真実」 アメリカは本当に自由?
とあるインターネット番組で有名な社会学者が、国会議員との討論で「アメリカには格差があるけど同時にチャンスも保証されているから問題にはならない」と発言した。それに対し、このような記事をその番組のHPにTBした。すると、その後、この本の著者を呼んで、アメリカの驚くべき格差社会の実態について語る番組を放送した。そこで、社会学者は自らの見識のなさにたじろんでいたのが印象的だった。
著者は、アメリカでビジネス・コンサルタントをしているキャリア・ウーマン。長年のアメリカでの生活経験から、メディアのこれまで発してきたイメージとは違う驚くべきアメリカ社会の実態を分析して提言をした書物である。
アメリカは、驚くべき格差社会。というか、それを通り越して、封建的な階級社会だという。階級は主に4つに別れる。石油成金に代表される特権階級、ビジネスで成功したプロフェッショナル階級、不安定で安い給与所得で暮らす貧困層、そして、不法移民など何のスキルもない落ちこぼれ。そして、この階級間は、移動が自由ではない。貧しい階層に生まれるとなかなか上昇することができない。中世のヨーロッパ並みの封建制だ。特権階級の上位5%は、総資産の60%を占めている。
その原因は主に二つあるといわれる。一つは、そもそも、人類の歴史を見ると偏在した資産分布が流動することはほとんどあり得ないことなのだ。日本のような戦争を経験した国でない限り、平穏な時代が続くと、一度大きな資産が手にした家系が、それを失うことはほとんどなく世代を通して引き継がれそれは、固定化されていく。戦後の50年代、60年代に幅広い中間層がいて、国民全体が裕福に見えた時代は、たまたまアメリカに富が集中して、そう見えただけだと。そんな時代が終わると、本来の姿に戻る。
第2に、教育機会の問題だ。教育には金がかかる。だからおのずと高い水準の教育を受けられるのは裕福な階層の子弟に限られ、その結果、貧乏な家の子は、結局、まともな教育が受けられず高収入な仕事につくための教養やスキルを持てないため貧困層に落ち着くのである。
だが、それでも国民一般に不満はない。多くの人々は、こんな実態をよく知らないし、誰でもがんばりさえすれば成功できるという「アメリカン・ドリーム」を信じているからだ。
全体を通してアメリカをけなしているのか誉めているのかよく分からない内容だった。だが、エコノミストとしての細かな分析力には感心する。小難しい説明が随所にありついていけない面もあったが。つまりは、自由であるということは、平等であると言うことにはつながらないということなのだ。むしろ自由すぎると平等は損なわれるものだと考えなければいけない。
とはいえ、アメリカの優位は今後、続くのは間違いない。そして、こんな不平等なシステムは、そう簡単に変わらない。そんなアメリカという国と、日本を含めた世界は付き合っていかなければならないのだ。
「自由」っていうのは何なんだろうと考えさせられる。アメリカなどより束縛のある日本の方が、実をいうと自由で暮らしやすい社会だと思えることがある。それは、私がアメリカに留学していた経験からもいえる。留学していた日本人の友人も「アメリカって理想の社会じゃない」と言っていたことを覚えている。
それでも、私は、アメリカで暮らした経験から、アメリカは好きだし、いい国だと思う。「自由である」とかいうことよりも、この本の著者が書いているように、ある種の「心地よさ」があるからだ。それは、画一化されていない社会の多様性と、それを糧にエネルギッシュに稼働させるシステムが備わっているからだろう。少なくとも、学力を備え能力があり、やる気のある人にとっては、アメリカン・ドリームを実現できる最高の場なのだ。だから、世界中から実力者が集まる。
ま、日本には日本の良さがあると思うし、それはそれで良くて、そのいい面を大いに活かせばいいんじゃないかなと思うけど。
著者は、アメリカでビジネス・コンサルタントをしているキャリア・ウーマン。長年のアメリカでの生活経験から、メディアのこれまで発してきたイメージとは違う驚くべきアメリカ社会の実態を分析して提言をした書物である。
アメリカは、驚くべき格差社会。というか、それを通り越して、封建的な階級社会だという。階級は主に4つに別れる。石油成金に代表される特権階級、ビジネスで成功したプロフェッショナル階級、不安定で安い給与所得で暮らす貧困層、そして、不法移民など何のスキルもない落ちこぼれ。そして、この階級間は、移動が自由ではない。貧しい階層に生まれるとなかなか上昇することができない。中世のヨーロッパ並みの封建制だ。特権階級の上位5%は、総資産の60%を占めている。
その原因は主に二つあるといわれる。一つは、そもそも、人類の歴史を見ると偏在した資産分布が流動することはほとんどあり得ないことなのだ。日本のような戦争を経験した国でない限り、平穏な時代が続くと、一度大きな資産が手にした家系が、それを失うことはほとんどなく世代を通して引き継がれそれは、固定化されていく。戦後の50年代、60年代に幅広い中間層がいて、国民全体が裕福に見えた時代は、たまたまアメリカに富が集中して、そう見えただけだと。そんな時代が終わると、本来の姿に戻る。
第2に、教育機会の問題だ。教育には金がかかる。だからおのずと高い水準の教育を受けられるのは裕福な階層の子弟に限られ、その結果、貧乏な家の子は、結局、まともな教育が受けられず高収入な仕事につくための教養やスキルを持てないため貧困層に落ち着くのである。
だが、それでも国民一般に不満はない。多くの人々は、こんな実態をよく知らないし、誰でもがんばりさえすれば成功できるという「アメリカン・ドリーム」を信じているからだ。
全体を通してアメリカをけなしているのか誉めているのかよく分からない内容だった。だが、エコノミストとしての細かな分析力には感心する。小難しい説明が随所にありついていけない面もあったが。つまりは、自由であるということは、平等であると言うことにはつながらないということなのだ。むしろ自由すぎると平等は損なわれるものだと考えなければいけない。
とはいえ、アメリカの優位は今後、続くのは間違いない。そして、こんな不平等なシステムは、そう簡単に変わらない。そんなアメリカという国と、日本を含めた世界は付き合っていかなければならないのだ。
「自由」っていうのは何なんだろうと考えさせられる。アメリカなどより束縛のある日本の方が、実をいうと自由で暮らしやすい社会だと思えることがある。それは、私がアメリカに留学していた経験からもいえる。留学していた日本人の友人も「アメリカって理想の社会じゃない」と言っていたことを覚えている。
それでも、私は、アメリカで暮らした経験から、アメリカは好きだし、いい国だと思う。「自由である」とかいうことよりも、この本の著者が書いているように、ある種の「心地よさ」があるからだ。それは、画一化されていない社会の多様性と、それを糧にエネルギッシュに稼働させるシステムが備わっているからだろう。少なくとも、学力を備え能力があり、やる気のある人にとっては、アメリカン・ドリームを実現できる最高の場なのだ。だから、世界中から実力者が集まる。
ま、日本には日本の良さがあると思うし、それはそれで良くて、そのいい面を大いに活かせばいいんじゃないかなと思うけど。
by masagata2004
| 2007-12-22 00:22
| 書籍評論
|
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Tracked
from にほん民族解放戦線^o^
at 2008-04-25 23:04
タイトル : 格差社会で繰り返される「アメリカンドリーム」による洗脳…..
今じゃぁすっかり「格差社会」と騒がれるようになった日本でもよく知られているが、アメリカは日本なんか目じゃないくらい強烈な格差社会である。 ニューオーリンズの復興が一向にすすまない(「暗いニュースリンク」)というのも、ホームレスが74万人もいる(asahi.com)のも、所得によって行く学校が振り分けられる(https://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/35281/)のも、その格差のひどさを間接的に証明しているが、もっとも象徴的な事例は、今まさにイラクへと送られようとし...... more
今じゃぁすっかり「格差社会」と騒がれるようになった日本でもよく知られているが、アメリカは日本なんか目じゃないくらい強烈な格差社会である。 ニューオーリンズの復興が一向にすすまない(「暗いニュースリンク」)というのも、ホームレスが74万人もいる(asahi.com)のも、所得によって行く学校が振り分けられる(https://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/35281/)のも、その格差のひどさを間接的に証明しているが、もっとも象徴的な事例は、今まさにイラクへと送られようとし...... more
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